後追いした先の異世界で、溺愛されているのですが。2

雪 いつき

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制服デート3

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 暖人はるとは話題を変えようとして、突然ある事を思い出す。

「そうだ。俺、大富豪になったんだ」
「大富豪?」

 そうなった経緯を、涼佑りょうすけに一通り説明した。
 すると。

「はるの頑張りには、額が少ないくらいだね」
「多いと思う」
「少ないよ。はるの功績の対価にしては。他にはなかったの?」
「城と領地と爵位と、テオ様の妃と養子はお断りしたよ」
「そっか、まぁ、それならそこそこかな」

 そこそこ。暖人はきゅっと唇を引き結ぶ。そうだ、涼佑はウィリアムとオスカーより過保護だった。


「僕も内戦の功績で同じようなの贈られそうになったけど、爵位と領地は困るよね」
「やっぱり涼佑にも」
「うん。でも、あっちにいない間に、僕名義の屋敷と金貨がたっぷり詰まった金庫がすでに用意されてて」
「や……屋敷と金貨……」
「いらないって言ってたんだけど、やっぱり受け取ろうかなって。はるがリグリッドに来た時の別荘に使えるし。城だと落ち着かないでしょ?」
「そうだね……」

 城は勿論だが、屋敷というのもどうだろう。

「本当ははるがリグリッドに来る時まで黙っておこうと思ってたんだけど……」

 何だか嬉しくなって話してしまった。涼佑は少し恥ずかしそうに笑う。

「庭も内装も、はるが好きそうな感じに頼んで来たよ」
「えっ」
「本当は上に乗れる竜とドラゴンのオブジェを建てたかったんだけど、はるが落ちたら大変だって言われてやめたんだ」
「そ、そうだね。高いとちょっと怖いかな……?」

 本物の竜やドラゴンは好きだが、涼佑の事だ。きっと実物そっくりにして、それに合わせた格好良い草花を植えるつもりだったのだろう。

(ラスボスの居城になっちゃうとこだった……)

 暖人はそっと胸を撫で下ろした。

「俺も涼佑も、異世界小説みたいなことになったよね」
「だね。まさか本当に異世界に来る事になるなんて」
「だよね。……本当に、異世界なんだよね」

 何度も思い、何度も感動してしまう。
 異世界。ここが、自分たちに優しい世界で良かった。


 つい感慨に浸ってしまい、ふう、と一つ息を吐いた。

「そうだ。俺、涼佑と行きたい店があるんだ」

 次に会えたら絶対に一緒に行こうと決めていた場所。

「これを買った店なんだけど」

 そう言って、身に着けているネックレスを見せた。ウィリアムとオスカーと、お揃いのそれ。

「これを選びに行った時に見つけて、涼佑に再会したら渡したいって思ったのがあって……」

 そこでハッとする。二人と同じ店は嫌だろうか。

「別に嫌じゃないよ?」
「えっ、声に出てた?」
「顔に出てた」

 くすりと笑うと、暖人はパッと両手で頬を押さえた。

「はるが気に入った店なら、僕もそこのが欲しいな」

 可愛い、と見つめながら、涼佑は立ち上がる。そしてまるで乙女ゲームのイベントスチルのように手を差し伸べた。

(涼佑がメイン攻略対象キャラに……)

 周囲でも静かに黄色い声が上がり、やはりどの世界でもモテるんだよなあと涼佑を見上げる。

「ごめんなさい、この人、俺の恋人です」

 元の世界では声に出せなかった事を、誰にともなく言い、涼佑の手を取った。
 照れる事なく言葉にした暖人に驚きながらも、涼佑はそっと目を細め、立ち上がった暖人の頬に流れるようにキスをする。
 そのままするりと指と指を絡め、じわじわと赤くなる暖人の手を引き、見せつけるように広場を歩き出した。





 暖人に案内されたのは、見るからに高級ブランド店が立ち並ぶ通り。
 確かに公爵家のあの二人に贈る物ならそうなるよね、と思いながらついて行く。

「ねぇ、はる。制服でこういうところ歩くの、ドキドキしない?」

 クイクイと手を引き、涼佑が指さした先。ショーウィンドウに映る、制服を着た二人の姿があった。

「わ、ほんとだ。学校帰りに迷い込んだみたい」
「ね。大人の世界にうっかり入っちゃったみたいだよね」

 くすくすと笑い合っていると、背後から「仲良しだね、かわいい~」「プレゼントかな? いいな~」などと聞こえてくる。
 ショーウィンドウ越しに自分たちに視線が向いている事がしっかり見えて、二人はまた嬉しそうに笑った。

「俺たち、デートしてる」
「デートしてるね」
「嬉しいな」
「嬉しいね」

 何度も感動しながら、また歩き出す。
 ここでは誰も制服とは思わず、年齢で学生に見えても場違いだという視線もない。
 暖人は時々子供に見られてしまうが、涼佑が一緒だと大人のカップルとして見られるようだ。

(今も一個しか違わないのに……)

 ちらりと涼佑を見ると、背景の高級ブランド店が良く似合う。これはまあ仕方ない、とあっさりと納得するしかなかった。

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