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5. テスト結果
しおりを挟むあっという間に一ヶ月半が過ぎた。
まだ五月下旬だというのに、日中の屋外では長袖のシャツだと暑く感じる。放課後になればニットベストがいるかな? という微妙な季節だ。
念のため持参していたベストを着て下校した俺は、毎週訪れている理央のマンションで今、頭を悩ませている。
「うーん……俺が卒業するまでに、なんとかしないとな……」
目の前のテーブルと俺の手元には、今日返ってきたらしいテスト用紙が。正面には、ラグの上で居心地悪そうにしている理央がいた。
「昔の言葉とか、勉強する意味が分からない」
ツンとして言う通り、古文はかなりの赤点だ。でも、現代文もあまり良くない。
「数学はいいのになぁ」
地理歴史、公民が四十点前後の中、数学だけは九十五点も取れている。
「数学は答えが書いてあるから」
「答え?」
「式を分解すればいいだけでしょ?」
「あー……根っからの理系頭なのか」
理央には数式がどう見えているのか、地道に計算している俺には分からない。
「暗記物が苦手なのかな。こればっかりは繰り返し覚えるしかないけど、西洋の歴史は映画を参考にすると頭に入りやすいかもな」
「……ごめん。俺、かっこ悪いよね」
理央は、しゅんと肩を落とす。
「誰にでも苦手なことはあるだろ? 入学したばかりだし、今から頑張ればいいんだよ」
中学の頃は荒れていたと言っていた。でも今の高校に入るために受験勉強を頑張ったんだろうし、理央はやれば出来る子だと思う。
「むしろ、なんでも飄々とこなしそうな理央が勉強苦手なのはちょっと可愛い……って、気分悪くしたらごめんな」
「凰ちゃんに可愛いって言って貰えるなら、勉強出来なくてもいいかな」
理央はやけににっこりと笑って、そっと教科書をテーブルの下に隠した。
「それとこれとは別だからな? まずはこの間違えたところを一つずつ考えていこうか」
教科書をテーブルの上に戻し、国語の教科書から該当するページを探す。
「凰ちゃんって、国語の先生似合いそうだよね」
「それ、岡本にも言われたよ」
「先越されて悔しい……」
ムッとする理央って本当に可愛いな。思わず頭を撫でてしまう。
「凰ちゃんは、あの人みたいな陽キャっぽい人が好き?」
「陽キャって。いや、岡本は間違いなく陽か」
陰の部分が存在しないくらい明るい。それで言うと俺は陰多めかな。
「俺みたいなテンション低いのは嫌い?」
「低くないだろ? 理央のその緩い感じも落ち着くし好きだよ」
「……俺も、凰ちゃんのこと好き」
「ありがとうな。じゃあ、勉強しようか」
目の前に教科書を置くと、理央は不服そうな顔をした。
会話の流れを無理矢理切った自覚はある。だって……少し照れたような理央の顔に、ドキッとしてしまったから。
再会した初日みたいな甘えた演技をしなくなって、自然体の理央は、本当にかっこいいと思う。
長袖のシャツ一枚の理央を改めて見ると、腕も俺より筋肉があるし、胸板も厚い。五年の月日は長いよな、と改めて思わされた。
「凰ちゃん?」
「っ、あ、えっと、じゃあこの問題から解いていこうか」
顔を覗き込まれて、また動揺してしまう。芸能人みたいに成長したものだから、やっぱり一ヶ月ちょっとじゃ見慣れない表情があるんだよなぁ。
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