泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話。

雪 いつき

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6. 坂口家

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理央りお君、大きくなったわねぇ~」

 数日後の放課後。理央を俺の家に連れて行くと、母さんが心底驚いた顔をした。理央は照れくさそうに微笑んでお辞儀をする。

「ご無沙汰しています」
「あらぁ、すっかり大人になって~」

 母さんは感動しっぱなしだ。俺もすごくその気持ちは分かる。


りんちゃんの旦那さんとどっちが大きいかしら?」

 にこにこしながら理央を見上げる。
 麟ちゃん……麟奈りんなは俺の姉で、一昨年、卒業と同時に結婚をした。相手は同じ大学の留学生だった男性だ。

 今は旦那さんと一緒にニューヨークに住んでいて、姉の招待で母さんは二ヶ月ほど旅行に行っていた。母さんは今日の昼に帰国したばかりだ。

 姉さんは俺の六歳年上だから、理央は一緒に遊んだことはないけど、面識はある。一応、姉さんの近況は理央に話していた。

「お祝いが遅くなってすみません。ご結婚、おめでとうございます」
「ふふ、ありがとう。麟ちゃんも喜ぶわ。そうだわ、たくさんお土産を買って来たの。ちょっと待っててね」

 母さんは上機嫌でお土産を取りに行った。
 ご両親が離婚したことは一応母さんに伝えていたけど、理央に気を遣っている感じじゃなく、普段通りでホッとした。


「……昔と変わらずに迎えてくれて、嬉しい」
「大きくなっても理央は理央だからな。母さんにとっては理央も息子みたいなものだと思うよ」
「そうだったら嬉しいな。……凰ちゃんの家は温かいね。変わってなくて嬉しい」

 理央はリビングを見渡して、懐かしむように目を細める。
 一緒にお絵かきをしたテーブルも、ゲームをしたテレビも、ソファの位置も、五年前と場所は変わっていない。俺も懐かしくなって、理央の視線の先を追った。


 しばらくして、母さんが両手いっぱいにお土産を持って戻って来る。そんなにあるなら手伝ったのに、と慌ててお土産を受け取る。

「理央君が帰ってきたって聞いて、あれもこれもって買って来ちゃったの。これ、あちらのお菓子と保存食。お勉強の合間にちょっと摘まむのにぴったりじゃない?」
「ありがとうございます。助かります」

 理央は一人暮しだから、保存食は助かるみたいだ。一つずつ手に取って嬉しそうにしている。
 でも、「勉強……」と呟いて一瞬嫌な顔をしたのを見逃さなかったぞ。本当に勉強嫌いなんだな。……それも可愛いんだけど。


「それと、これ。凰ちゃんとお揃いのペンとノートとストラップと置物」

 母さんはにこにこしながら俺と理央に渡してくれる。ペンとノートと、国旗の色合いをした布のストラップはかっこいいけど、この光る自由の女神の置物はリビングとか玄関に置いた方が良くないか?

「理央君、凰ちゃんとお揃いだと嬉しそうにしていたでしょう? ……もう大きくなったから、そういうのは嫌かしら……?」
「嫌なんてとんでもないです。昔よりもっと凰ちゃんのことが好きなので、すごく嬉しいです」

 ふっと目を細めて笑う理央に、一瞬ドキッとしてしまった。


「そう言って貰えて私も嬉しいわ。理央君は今も素直なのねぇ。うちにお婿さんに来てくれてもいいのよ?」
「母さん、姉さんは結婚したばっかりなんだから……」
「麟ちゃんじゃなくて、凰ちゃんよ」
「母さん~……」
「ありがとうございます。凰ちゃんが了承してくれたらそうしたいです」
「理央も、母さんの冗談に付き合わないでいいからな?」

 苦笑すると、二人して本気だと言って笑い合う。

「そもそも俺たち男同士だってば」
「あら、凰ちゃんったら。今どきそんなこと気にして」
「凰ちゃんは慎重な性格ですから」
「本当ねぇ。猪突猛進な麟ちゃんを見て育ったからかしら」

 それは……ないこともない。

 失敗したらどうしよう、など考えもしない姉さんの行動力に、いつもこちらがハラハラさせられていた。人の目を気にすることもなく、歴代の彼氏にも堂々と愛の言葉を伝えていた。

 ……その行動力が、本当は、羨ましかったんだ。


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