セカンドバージンな聖女様

青の雀

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 ギシッ。ギシッ。ギシッ。ギシッ。はぁ。はぁ。はぁ。はぁ。

「今日もなかなか美味だったぞ」

 コトが終わって、さっさと着替えをされているのは、この国ダーウィンの第1王子であらせられるギルバート殿下。

 そのギルバート殿下と5歳の頃より婚約している公爵令嬢パトリシア・ミュンヘンは、母からの言葉を忠実に守っている。

「もし、殿下から求められるようなことがあれば、決して拒んだり、嫌がったりしてはなりません。パトリシアは将来の国母となるのですから、殿下にすべてをお任せしなさい」

 それなのに……。ある日、またギルバート殿下からお呼び出しを受け、慌てて入浴した後、お城に参上すると見知らぬ少女がギルバート殿下の腕にぶら下がっている。

「パトリシア・ミュンヘン公爵令嬢、本日来てもらったのは、他でもない。貴様との婚約を破棄する」

「へ!?なぜでございますか?」

 昨日も言われるがままカラダを差し出したというのに。

「ここにおられるリリアーヌ聖女様と結婚するため、貴様が邪魔になった。俺は聖女様と結婚したい。貴様のように簡単にカラダを開く女など興味がない。だが、貴様はなかなかいいカラダをしているから、望むのであれば、側妃としてもいいとも思っている」

「それは、つまり……?」

「そうだ。表向きの華やかな行事は、聖女様に行ってもらい、貴様は政務と夜伽と裏方としてやるべき仕事のすべてだ。まあ、いわば第2夫人と言ったところだが、貴様はお妃教育のすべてが終わっているだろ?だから十分やっていけるというものばかりだ」

 冗談じゃない!どうして、公爵令嬢のわたくしが平民女の尻ぬぐいをしなければいけないなんて、考えられないことをいわれ、すぐさま失意のどん底に落とされた。

「わかりました殿下。謹んで婚約破棄の件、承ります」

「うむ。それで側妃になるという件は、どうするのだ?」

「それは、お断りさせていただきます。殿下にはリリアーヌ様と言うご立派な聖女様がいらっしゃるのに、わたくしが夜伽など務められる筈はございません。今後の身の振り方は修道院にでも行くか、父とも相談して、身の処し方を考えとうございます」

「ああ。ミュンヘンによしなに伝えてくれ」

 ギルバート殿下と聖女様は、明日から南の島に婚前旅行に出かけられるという。だから、その前にパトリシアと婚約破棄したかったのだろう。でないと、不倫旅行になってしまうから。

 婚約者のいる王子が、聖女様と不倫旅行をするなど、自分から王位継承権を辞退すると言っているのと、同じことになる。

 ギルバートの部屋を辞し、城の廊下を歩いていると、向こう側から第2王子のアントニウス殿下がやってこられたので、廊下の端に寄り、頭を下げて通り過ぎられるのを待つ。

「パトリシア嬢、この度は愚兄のことで、ご迷惑をおかけいたしました。私にとっては、義姉上がフリーになってくれたことは喜ばしいことですが、王家として、きちんとさせますから、どうか、ご安心なさってください」

「お心遣い感謝します」

 アントニウス殿下は、ギルバート殿下と同い年であるが、腹違いの弟で1か月遅く生まれた正妃と国王陛下との嫡男である。

 生まれた順番で、ギルバートが第1王子となっているだけで後ろ盾は何もない。側妃だったギルバートの母が不憫に思い、我がミュンヘン家に婚約者の打診をしてこられた縁だったのだ。

 だからギルバートが、パトリシアに側妃という地位を与えようとしたことにも、自分の母と同じになることを望んでいたからなのだろう。

 ミュンヘン家の威光をそのまま享受したいという潜在意識が、させたことかもしれない。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 帰宅して、父に婚約破棄のことを言うと、烈火のごとく怒り、明日にでも国王陛下に抗議の上、損害賠償させると息巻いている。

 明日には、ギルバート殿下と聖女様が婚前旅行に出られるので、ちょうど留守の間に弾劾ができ、陛下にとっても都合がいいだろうという。

 陛下は予想通り、婚約違約金の他に、多額の賠償金を支払ってくれることになったのだが、婚約破棄ではなく婚約の白紙撤回という形で、パトリシアにキズが付かないように配慮してくれたのだが、パトリシアはすでに純潔を散らされている身。

 そのことに触れると、陛下は、青ざめられ、頭を深々とお下げになられた後、ギルバートを廃嫡することに決められた。

「聖女と結婚したければ、するがよい。ただし、王位継承権ははく奪する」

 公女様を弄んで、捨てるなどあってはならないことを犯した罪で、ということらしかった。

 その後、さらに陛下から提案があり、その内容に父のミュンヘン公爵とパトリシアも困惑してしまう。

 それは陛下と正妃の嫡男アントニウス殿下と、婚約を打診されてしまったのだ。

 即答できず、しばらく考えさせてくださいと言い残し、お城を辞した。

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