2 / 8
2.
しおりを挟む
アントニウス様は、パトリシアとギルバートの関係を知っていながら、父の陛下にパトリシアとの婚約を願い出たという。
母の王妃様の後押しもあり、陛下は、次の婚約者をギルバートからアントニウスへ変更したいと考えられた。
パトリシアは、5歳の頃より10年間お妃教育をしてきて、終了している。諸外国の政治経済的な事情や姻戚関係、外国語のマスター、諸外国のマナーなど徹底的に仕込まれている。
他に同等の教育を受けているのは、王妃様ぐらいしかいない。だから、ギルバートと婚約解消した後、他の誰かとすぐ婚約者になることは事実上の不可能なことに近い。
それは一朝一夕では、到底身につかないレベルのものである。
アントニウスにとっても、これほど好条件の相手はいない。
それにアントニウスは昔から、パトリシアに恋焦がれていたのだ。アントニウスの気持ちを両親は知っていた。だからこそ、息子の初恋の相手を婚約者にしたいという心情もわからなくはない。
さりとて、ミュンヘン家側からすれば、失意のどん底にある娘を、またしても王家に嫁がせるような婚約をして、果たして幸せになれるだろうかという懸念がある。
また時が過ぎれば、弄ばれるだけ、弄ばれて捨てられるという可能性がないわけではない。
今すぐ結婚というわけにはいかないのだ。ギルバートとのためのウエディングドレスはもう出来上がっているが、身ごもっている可能性もあるから、それがハッキリするまで、身動きが取れない状態にいる。
白い婚約者のままなら、今すぐ結婚や修道院という可能性もなくはない。だが、ギルバートによってキズモノにされた我が身を考えれば、今はジッとしているしか他はない。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
その頃、ギルバートは聖女様との旅行に浮かれているが、パトリシアの味を知っているギルバートは少々物足りなさを感じていることも事実。
やっぱり、パトリシアが最高にイイ。帰ったら、パトリシアを召し出そうと考えていると、そこに陛下からの通告書が届く。
「……」
突然の王位継承権はく奪と廃嫡に目を剥くが、ここは遠く異国の地。今から急いで戻っても1か月はかかる。
何か誤解があるとは思うが、ここまで父が激怒されるのも珍しいこと。ひょっとすれば、リリアーヌが偽聖女様だというのか!?
いや、待て。確かにリリアーヌは、ブカブカだが、仮にも聖女様なのだから、何かあれば必ずダーウィンのためになってくれるだろうと信じている。
その時になれば、父もきっとわかってくれる筈。だから、今は甘んじて受け入れて、その時に吠え面をかかせてやろうと思い直す。
ギルバートは、自分は聖女様と結婚した賢王になれると信じて疑わない。
王家からの書状が来て、1週間。のんきにバカンスを楽しんでいるギルバートとリリアーヌに、土地の領主から依頼状が届く。
沿岸部のプライベートビーチに深海の魔物「ポセイドン」が現れたので、退治してくれというものだった。
土地の領主は、ダーウィンから来られた聖女様御一行が逗留されているという噂を聞きつけ、藁にもすがる思いで書状を認めたのだ。
ギルバートは、内心、こんなにも早く賢王としての実績を証明できる機会が来るとは思っていなかったので、ほくそ笑む。
これをうまく処理すれば、父上もきっと、わかってくれ、王位継承権をもとに戻してくださることになろう。
リリアーヌは、エステサロンで全身オイルマッサージをしている最中だから、終わったら、ちょこちょこっと聖魔法を駆使してもらい、ポセイドン退治に一役買ってもらえれば幸甚である。
よしんば、退治できなくても、浅瀬から追い払ってくれればそれでもいい。
ギルバートはリリアーヌのエステが終わるのを待ち、領主からの依頼内容を聞かせた。
リリアーヌの返答は、意外にも「NO」で、ギルバートは訝しがるが、その理由が「せっかくバカンスに来たのに、お仕事なんて、するのイヤ」というものだったために、渋々、それを認め、断わりの手紙を認める。
母の王妃様の後押しもあり、陛下は、次の婚約者をギルバートからアントニウスへ変更したいと考えられた。
パトリシアは、5歳の頃より10年間お妃教育をしてきて、終了している。諸外国の政治経済的な事情や姻戚関係、外国語のマスター、諸外国のマナーなど徹底的に仕込まれている。
他に同等の教育を受けているのは、王妃様ぐらいしかいない。だから、ギルバートと婚約解消した後、他の誰かとすぐ婚約者になることは事実上の不可能なことに近い。
それは一朝一夕では、到底身につかないレベルのものである。
アントニウスにとっても、これほど好条件の相手はいない。
それにアントニウスは昔から、パトリシアに恋焦がれていたのだ。アントニウスの気持ちを両親は知っていた。だからこそ、息子の初恋の相手を婚約者にしたいという心情もわからなくはない。
さりとて、ミュンヘン家側からすれば、失意のどん底にある娘を、またしても王家に嫁がせるような婚約をして、果たして幸せになれるだろうかという懸念がある。
また時が過ぎれば、弄ばれるだけ、弄ばれて捨てられるという可能性がないわけではない。
今すぐ結婚というわけにはいかないのだ。ギルバートとのためのウエディングドレスはもう出来上がっているが、身ごもっている可能性もあるから、それがハッキリするまで、身動きが取れない状態にいる。
白い婚約者のままなら、今すぐ結婚や修道院という可能性もなくはない。だが、ギルバートによってキズモノにされた我が身を考えれば、今はジッとしているしか他はない。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
その頃、ギルバートは聖女様との旅行に浮かれているが、パトリシアの味を知っているギルバートは少々物足りなさを感じていることも事実。
やっぱり、パトリシアが最高にイイ。帰ったら、パトリシアを召し出そうと考えていると、そこに陛下からの通告書が届く。
「……」
突然の王位継承権はく奪と廃嫡に目を剥くが、ここは遠く異国の地。今から急いで戻っても1か月はかかる。
何か誤解があるとは思うが、ここまで父が激怒されるのも珍しいこと。ひょっとすれば、リリアーヌが偽聖女様だというのか!?
いや、待て。確かにリリアーヌは、ブカブカだが、仮にも聖女様なのだから、何かあれば必ずダーウィンのためになってくれるだろうと信じている。
その時になれば、父もきっとわかってくれる筈。だから、今は甘んじて受け入れて、その時に吠え面をかかせてやろうと思い直す。
ギルバートは、自分は聖女様と結婚した賢王になれると信じて疑わない。
王家からの書状が来て、1週間。のんきにバカンスを楽しんでいるギルバートとリリアーヌに、土地の領主から依頼状が届く。
沿岸部のプライベートビーチに深海の魔物「ポセイドン」が現れたので、退治してくれというものだった。
土地の領主は、ダーウィンから来られた聖女様御一行が逗留されているという噂を聞きつけ、藁にもすがる思いで書状を認めたのだ。
ギルバートは、内心、こんなにも早く賢王としての実績を証明できる機会が来るとは思っていなかったので、ほくそ笑む。
これをうまく処理すれば、父上もきっと、わかってくれ、王位継承権をもとに戻してくださることになろう。
リリアーヌは、エステサロンで全身オイルマッサージをしている最中だから、終わったら、ちょこちょこっと聖魔法を駆使してもらい、ポセイドン退治に一役買ってもらえれば幸甚である。
よしんば、退治できなくても、浅瀬から追い払ってくれればそれでもいい。
ギルバートはリリアーヌのエステが終わるのを待ち、領主からの依頼内容を聞かせた。
リリアーヌの返答は、意外にも「NO」で、ギルバートは訝しがるが、その理由が「せっかくバカンスに来たのに、お仕事なんて、するのイヤ」というものだったために、渋々、それを認め、断わりの手紙を認める。
91
あなたにおすすめの小説
結局勝つのは……
mios
恋愛
「結局、最後に勝つのは、実家の権力よ。」
元公爵令嬢で大公夫人のマリアンヌ様はそう仰いました。
結局、最後に勝つのは、実家の力です。私自身の価値など何の役にも立たなくとも実家の、お金の力は何よりも物をいうのです。
笑わない妻を娶りました
mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。
同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。
彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。
見えるものしか見ないから
mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。
第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……
婚約者は一途なので
mios
恋愛
婚約者と私を別れさせる為にある子爵令嬢が現れた。婚約者は公爵家嫡男。私は伯爵令嬢。学園卒業後すぐに婚姻する予定の伯爵令嬢は、焦った女性達から、公爵夫人の座をかけて狙われることになる。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
王子の婚約者の決定が、候補者によるジャンケンの結果であることを王子は知らない
mios
恋愛
第一王子の婚約者は、コリーナ・ザガン伯爵令嬢に決定した。彼女は目にうっすらと涙を浮かべていたが、皆嬉し涙だと思っていた。
だが、他の候補者だったご令嬢は知っている。誰もなりたがらなかった婚約者の地位を候補者達は、厳正なるジャンケンで決めたことを。二連勝の後の五連敗で、彼女はなりたくもない王子の婚約者に決定してしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる