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ポセイドンを誰も鎮圧できるものがいないため、プライベートビーチは、壊滅的な瓦礫の山となり、多数の死者が出たばかりか、ポセイドンは陸に上がり、怒り狂うかのようにますます攻撃的になってくる。
せっかくのリゾート地もこれでは形無し。それなのに、リリアーヌ聖女はどこ吹く風の贅沢三昧。さすがのギルバートもこれ以上、滞在すると見捨てたという誹りを受けかねない。
腐っていても、まだ王子という矜持は持ち合わせている。内陸の安全なところまで、逃げるつもりで、馬車を用意させる。
山間の道が細くなったところへ来たら、今度は落盤事故があり、通行止めになっているという。
それでもリリアーヌ聖女は自ら動くことなく、侍女に爪磨きをさせている始末で、さすがにギルバートは苦言を呈する。
「リリアーヌ、ポセイドンの時と同じように知らぬ存ぜぬでは、済まされないよ。外へ出てけが人の治療に当たってくれ」
「えぇー!イヤよ」
「聖女様は、魔物を退治し、けが人の救出をする役目があるだろ?」
「そんなこと、知らないわよ」
「は?何、言っているのだ?リリアーヌは聖女様だろっ!?」
「違うわよ」
「へ?だって、俺に聖女様だと言ったではないか?」
「殿下が勝手に私を聖女様と決めつけたから、訂正しなかっただけよ」
「な、何だとぉ!それで、リリアーヌと結婚するために俺は、パトリシアと婚約破棄して、父上からは廃嫡されてしまったのだぞ!どう、責任を取ってくれるのだ!」
「だからぁ、知らないって。ギルバートがもう王子様でなくなったんなら、これでさよならよ」
「信じられん!俺は、こんな阿婆擦れに引っかかって、何もかも失ってしまったのか!?」
ギルバートは馬車の外に出て、騎士にけが人の治療と救出を命じ、リリアーヌを聖女ではなく魔女だったと訴え、馬車から引きずり下ろすように命じる。
リリアーヌは、荷物用の馬車に乗り換えさせられ、両手首だけを幌の端の紐に結わえられた。もし、走行中、馬車から滑り落ちたら、引きずられるか、それが嫌なら自力で走ってついて来いという意味。
さすがにこの待遇はキツイ。リリアーヌは、怒ってギルバートに抗議するも馬の耳に念仏で、聞く耳をもたない。
仕方なく、振り落とされないように必死の形相で荷馬車の隅っこで、しがみついている。
「ちょっとぉ、何なのよぉ!人をこんなところまで連れて来やがって、さんざんいやらしい目で私を弄んでおきながら、最後はコレかよ!くそったれが!」
騎士も呆れてしまうような汚い言葉遣いに、ギルバートは完全に正気を取り戻したが、もはや手遅れ。
今更、婚約破棄の破棄もできず、廃嫡もすでに決定事項である以上、どうしようもない。
騎士団が手際よくけが人の救出を行ったせいで、思いがけずに早く復旧する見通しとなった。
ホッと、一安心と思っていたところ、深海にいるはずのポセイドンが、なぜかこの内陸にまでやってきた。川の水を補給源として、遡ってきた。力をより一層つけてきたのだ。
ここに来るまでの道のりのすべてを蹂躙し尽くしてきたかのような勢いに圧倒されるが、騎士団は懸命に火を放ち、魔獣の進行を阻止しようとしている。
ここは、まだ他国の領土であるが。他国の騎士がそこまでする義理はない。
ギルバートは撤退を勧告するも、すぐそこまで進行している魔物に背中は見せられない。後ずさる形で、より内陸に進むも、道路は寸断されたまま。まさに前門の龍に後門のトラと言ったところ。
これがリリアーヌが本物の聖女様であったら、武勇伝になるところなのだが、偽物だとわかった今、頼りになるのは自分だけ、自らを灯として進まなければ何もできない。
「ギルバート殿下、ここは我々が食い止めますから、どうぞ避難してください!」
さすが、王国の騎士団は言うことが違う。でも、あの魔物相手なら全滅することは確実なのだ。
「ならぬ!逃げるときは、全員でだ!退路を確保することを優先せよ」
指揮を取っていたギルバートは、脚を滑らせ崖下に転落してしまう。
王子が落ちたことにより、一時的に指揮が乱れたことで、続いて馬車ごと、王子の上に降ってくることになったのだ。
ギルバートは、意識はあるものの。下半身が馬車の下敷きになって、身動きが取れなくなってしまう。
ポセイドンの魔物は、半魚人が基本形だが、陸に上がってからは、下半身は人間ポイ脚というより、タコの足のように何本も生えていて、それで攻撃もしてくるから厄介なのだ。
毒のある墨をまき散らし、普通の人間ならば、まともに被るとそこから溶けてくる。
ギルバートは、馬車もろとも、がけ下に堕ちたから、ポセイドンの視界から消えた格好になり、命拾いはしたが、リリアーヌは、荷馬車の上でギャーギャー騒いでいたから、タコの足に薙ぎ払われて絶命する。
せっかくのリゾート地もこれでは形無し。それなのに、リリアーヌ聖女はどこ吹く風の贅沢三昧。さすがのギルバートもこれ以上、滞在すると見捨てたという誹りを受けかねない。
腐っていても、まだ王子という矜持は持ち合わせている。内陸の安全なところまで、逃げるつもりで、馬車を用意させる。
山間の道が細くなったところへ来たら、今度は落盤事故があり、通行止めになっているという。
それでもリリアーヌ聖女は自ら動くことなく、侍女に爪磨きをさせている始末で、さすがにギルバートは苦言を呈する。
「リリアーヌ、ポセイドンの時と同じように知らぬ存ぜぬでは、済まされないよ。外へ出てけが人の治療に当たってくれ」
「えぇー!イヤよ」
「聖女様は、魔物を退治し、けが人の救出をする役目があるだろ?」
「そんなこと、知らないわよ」
「は?何、言っているのだ?リリアーヌは聖女様だろっ!?」
「違うわよ」
「へ?だって、俺に聖女様だと言ったではないか?」
「殿下が勝手に私を聖女様と決めつけたから、訂正しなかっただけよ」
「な、何だとぉ!それで、リリアーヌと結婚するために俺は、パトリシアと婚約破棄して、父上からは廃嫡されてしまったのだぞ!どう、責任を取ってくれるのだ!」
「だからぁ、知らないって。ギルバートがもう王子様でなくなったんなら、これでさよならよ」
「信じられん!俺は、こんな阿婆擦れに引っかかって、何もかも失ってしまったのか!?」
ギルバートは馬車の外に出て、騎士にけが人の治療と救出を命じ、リリアーヌを聖女ではなく魔女だったと訴え、馬車から引きずり下ろすように命じる。
リリアーヌは、荷物用の馬車に乗り換えさせられ、両手首だけを幌の端の紐に結わえられた。もし、走行中、馬車から滑り落ちたら、引きずられるか、それが嫌なら自力で走ってついて来いという意味。
さすがにこの待遇はキツイ。リリアーヌは、怒ってギルバートに抗議するも馬の耳に念仏で、聞く耳をもたない。
仕方なく、振り落とされないように必死の形相で荷馬車の隅っこで、しがみついている。
「ちょっとぉ、何なのよぉ!人をこんなところまで連れて来やがって、さんざんいやらしい目で私を弄んでおきながら、最後はコレかよ!くそったれが!」
騎士も呆れてしまうような汚い言葉遣いに、ギルバートは完全に正気を取り戻したが、もはや手遅れ。
今更、婚約破棄の破棄もできず、廃嫡もすでに決定事項である以上、どうしようもない。
騎士団が手際よくけが人の救出を行ったせいで、思いがけずに早く復旧する見通しとなった。
ホッと、一安心と思っていたところ、深海にいるはずのポセイドンが、なぜかこの内陸にまでやってきた。川の水を補給源として、遡ってきた。力をより一層つけてきたのだ。
ここに来るまでの道のりのすべてを蹂躙し尽くしてきたかのような勢いに圧倒されるが、騎士団は懸命に火を放ち、魔獣の進行を阻止しようとしている。
ここは、まだ他国の領土であるが。他国の騎士がそこまでする義理はない。
ギルバートは撤退を勧告するも、すぐそこまで進行している魔物に背中は見せられない。後ずさる形で、より内陸に進むも、道路は寸断されたまま。まさに前門の龍に後門のトラと言ったところ。
これがリリアーヌが本物の聖女様であったら、武勇伝になるところなのだが、偽物だとわかった今、頼りになるのは自分だけ、自らを灯として進まなければ何もできない。
「ギルバート殿下、ここは我々が食い止めますから、どうぞ避難してください!」
さすが、王国の騎士団は言うことが違う。でも、あの魔物相手なら全滅することは確実なのだ。
「ならぬ!逃げるときは、全員でだ!退路を確保することを優先せよ」
指揮を取っていたギルバートは、脚を滑らせ崖下に転落してしまう。
王子が落ちたことにより、一時的に指揮が乱れたことで、続いて馬車ごと、王子の上に降ってくることになったのだ。
ギルバートは、意識はあるものの。下半身が馬車の下敷きになって、身動きが取れなくなってしまう。
ポセイドンの魔物は、半魚人が基本形だが、陸に上がってからは、下半身は人間ポイ脚というより、タコの足のように何本も生えていて、それで攻撃もしてくるから厄介なのだ。
毒のある墨をまき散らし、普通の人間ならば、まともに被るとそこから溶けてくる。
ギルバートは、馬車もろとも、がけ下に堕ちたから、ポセイドンの視界から消えた格好になり、命拾いはしたが、リリアーヌは、荷馬車の上でギャーギャー騒いでいたから、タコの足に薙ぎ払われて絶命する。
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