夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀

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 ティアラベルローゼは、自分たちの馬車列が通れる幅だけの瘴気を晴らしていく。浄化魔法でもいいのだが、こういう場合は、出し惜しみせず、手っ取り早く聖魔法を駆使していく。この10日間でずいぶん魔法も上達したものだと感心する。

 もっと早く聖女様であると気づけば、あの時、命を落とさなくても対処できたのにということだけが、わずかばかりの心残りと言えるだろう。

 ティアラベルローゼは、馬車には乗らず、馬でティファニーを追いかけることにした。輿入れの際に同行した侍女たちもすべて乗馬ができる。
 馬車は荷物があるため、御者だけが馬車を操ってついてくる格好となった。

 食料やティファニーの荷物さえなければ、もっと早く移動できたと、後悔もあるが、アプリコットの王城から出立するのに、乗馬だけでの移動はあまりにも体裁が悪い。

 もし、来世、逃げ出すことがあれば、今度は乗馬だけで逃げようと心に誓う。

 そうこうしているうちに、目の前にロバートの姿が見えてきて、エレモアの姿も確認できた。

 あっという間に国境線までたどり着いたティアラベルローゼ一行は、国境線にはティアラベルローゼの両親が迎えに来てくれていた。

 両親との再会を喜ぶのもつかの間、ティアラベルローゼは手紙にも書いていたが、アプリコットの王都のはずれの貧民街に置き去りにされてから、今までのことを一気に両親に告げる。

「あの野郎……よくも!」

 怒った父の顔がおかしくて、つい吹き出してしまったけど、今頃、アンドリューは冷や汗タラタラものでしょうね。

「お父様、お母様、ティファニーのこと、何卒よろしくお願いします。もう、わたくしに時間は残されておりません。神様との約束を果たすため、できたら綺麗にアンドリューと離縁したいですが、……どうしても無理なら、ティファニーだけは、アプリコットに取られないようにしてくださいませ」
「わかっているよ。ティファニーは大事な孫娘だ。我が国の後継者となるべく育て上げるつもりだよ」
「ありがとうございます」

 ふと隣を見ると、エレモアとロバートは熱い抱擁をしていて、深い接吻までしていた。見ているこっちが恥ずかしくなるぐらいに、二人の世界にどっぷりと嵌っている。

 うらやましいような?アンドリューとの関係も、ああいう時期があったような?なかったような?思えば愛されていたという記憶が結婚式までさかのぼっても、そうそう思い出すことができないでいることに気づいた。

 寂しい。

 でも来世は絶対、もっとよくなり幸せになると念じて、両親と別れ、国境線の中ほどまで来た。

 黄泉の国へ戻るまで、あと5分足らず、もしアンドリューが追いかけてこなければ、両親の傍で消滅するまで一緒にいるつもりだったが、最後に、アンドリューがいかに非情なことをしたかわからせるため、敢えてアンドリューの目前で消えることを選択したのだ。

 アンドリューとの距離は、10メートルほどにまで縮まった。

「アンドリューあなたを決して許さないわ。一生恨んだまま、この世から消え去ることにしたのよ」
「消え去るって、何?どういうことだよ?」
「今にわかるわ」

 残り1分
 さすがに、エレモアはロバートの肩を軽く押し、自分と距離を取らせた。

「さとうなら、ロバート。さようなら、みんな」

 そして、ついに、その時がやってきてしまっや。

「さとうなら、みんな」

 光の粒がエレモアとティアラベルローゼの姿を浮き彫りにしていく。
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