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家政婦
5.崎島浩二視点
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沙也加の夫、崎島浩二は、大学時代の友人で警視庁に勤務するキャリアから依頼されるまで、信じられないという思いの方が強かった。
でも実際、花園かおりに出会ってみて、友人の話を信じるしかなかった。
その友人の話によると、女性は、結婚を機会に忽然と姿を消し、花園家に監禁されていたらしいという。
彼女の両親は、彼女が小さいとき、交通事故で相次いで亡くなり、両親には多額の生命保険が掛けられていたが親戚はその存在に気づかないまま、彼女の養育を拒否し、彼女は施設で育てられることになったのだ。
彼女は優秀で、本人が希望さえすれば、大学にも行ける実力があったのだが、施設に迷惑はかけられないと、高校卒業と同時に施設を出て、就職の道を選んだ。
彼女の両親が残した多額の保険金は、施設に残したままで、施設も使い込むわけにもいかないので、彼女名義の定期預金にして通帳印鑑は施設で、ずっと保管していた。
結果としては、死亡保険金を施設で保管していたことが幸いしたのだが、彼女が25歳の時、結婚すると言って、施設を訪ねてきたときに、渡すつもりが彼女から
「もし、私と同じように困っている子がいれば、その子のために用立ててください。」
通帳を受け取らずに、帰っていく。
「欲のないいい娘だったなぁ。」と施設の院長がしみじみ語ったことを思い出される。
それから、かおりとは一切の連絡ができなくなり、花園家にも何度か電話しても取り次いでもらうことは、もとより『確かに長男は、嫁をもらいましたが、そんな名前の嫁はいません』と言われてしまったから、取りつく島もなかったんだ。それで当時、捜索願を警察に出したのだが、捜査をしてもらえなかった。それを今更、何ですか?殺人事件になったからですか?」
「それが彼女が妊娠しているという連絡が、彼女が通院している産婦人科医からあり、産後の肥立ちという観点から婚家では、任せられないという内容で、その時は嬉しかった。なんにせよ、彼女が無事に生きているということがたまらなく嬉しかったのだよ。それがだよ。一向に帰ってこなくて、やきもきしているうちに事故だと?そんな話誰が信じられるか!」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
沙也加と知り合ったのは、勤務先の合コンでのこと。いつも明るくケラケラ笑っているところが気に入って、結婚したのだけど、両家顔合わせにも、結婚式にも兄嫁さんが呼ばれていないことは不思議で、それとなく聞いてみても、沙也加から返ってくる言葉は信じがたいものだったのだ。
きっと、冗談で言われていると思い込むようにしていたのだが、まさかそれが本当のことだったとは夢にも思わないことだった。
花園家は休暇かもしれないが、舅の稼ぎや義兄の稼ぎを考えても、家政婦を雇える余裕などないはず。
家政婦の相場は、月50万円で、週休2日と習い事の月謝も持たなければならない。夜間や時間外なら別途手当てが発生し、家政婦の多くは月100万円前後の稼ぎがある。いわゆる高級官僚よりも高給取りなのだ。
話は変わるが、寝たきり老人のところなどへ訪問する看護師の給料も、それぐらいが相場で、要するに人が嫌がるようなキツイ仕事は、女性でも高額な給料を出さないとなかなか来てがないということ。
その日の夕方、沙也加は思いっきりふくれっ面をしている。
「今日、来たばっかりなのに、もう帰るってどういうつもり?」
「ちょっと急用ができて、どうしても東京に帰らなくなってしまってね。君は久しぶりの実家だから、ゆっくりしていくといいよ。」
「うん。そうするつもり。でも、ここにきてすぐ、トイレの前で、ウチの家政婦とナニを話していたの?」
「家政婦って?兄嫁さんだろ?義姉になるわけだから、沙也加の夫です。と挨拶していただけだよ。」
「あの女にいちいち丁寧なあいさつなんていらないよ。あの女はみなしごだから。」
「みなしごって、天涯孤独ってこと?」
「そうだよ。施設で育ち、高卒の底辺の人間なんだ。しかもブス。そんな女、誰とも結婚できないでしょ?だから兄がお情けで、結婚してやったんだよ。だから、あの女にここに置いてやる代わりに家政婦として使っているんだ。」
「まさか、無給の家政婦なのか?」
「当然でしょ?家事ぐらいしか能がないのだから。子供ができても満足に産めなかったのよ。それで3か月ぐらい家事をサボりやがったのよ。あの女。名前なんて、とうに忘れちゃったわ。」
「家政婦は、家族じゃないから、あの扱いってわけよ。」
「そうか。それなら、俺たちも離婚しよう。」
「え?待って。どういうこと?あの女を家政婦にしていたことと関係ないじゃん?」
「見損なったよ。まさか君がそんな女だったとはね。とにかく俺はここで買える。後のことは、弁護士と話してくれ。」
「ええ=!待ってよ。浩二さん!」
でも実際、花園かおりに出会ってみて、友人の話を信じるしかなかった。
その友人の話によると、女性は、結婚を機会に忽然と姿を消し、花園家に監禁されていたらしいという。
彼女の両親は、彼女が小さいとき、交通事故で相次いで亡くなり、両親には多額の生命保険が掛けられていたが親戚はその存在に気づかないまま、彼女の養育を拒否し、彼女は施設で育てられることになったのだ。
彼女は優秀で、本人が希望さえすれば、大学にも行ける実力があったのだが、施設に迷惑はかけられないと、高校卒業と同時に施設を出て、就職の道を選んだ。
彼女の両親が残した多額の保険金は、施設に残したままで、施設も使い込むわけにもいかないので、彼女名義の定期預金にして通帳印鑑は施設で、ずっと保管していた。
結果としては、死亡保険金を施設で保管していたことが幸いしたのだが、彼女が25歳の時、結婚すると言って、施設を訪ねてきたときに、渡すつもりが彼女から
「もし、私と同じように困っている子がいれば、その子のために用立ててください。」
通帳を受け取らずに、帰っていく。
「欲のないいい娘だったなぁ。」と施設の院長がしみじみ語ったことを思い出される。
それから、かおりとは一切の連絡ができなくなり、花園家にも何度か電話しても取り次いでもらうことは、もとより『確かに長男は、嫁をもらいましたが、そんな名前の嫁はいません』と言われてしまったから、取りつく島もなかったんだ。それで当時、捜索願を警察に出したのだが、捜査をしてもらえなかった。それを今更、何ですか?殺人事件になったからですか?」
「それが彼女が妊娠しているという連絡が、彼女が通院している産婦人科医からあり、産後の肥立ちという観点から婚家では、任せられないという内容で、その時は嬉しかった。なんにせよ、彼女が無事に生きているということがたまらなく嬉しかったのだよ。それがだよ。一向に帰ってこなくて、やきもきしているうちに事故だと?そんな話誰が信じられるか!」
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沙也加と知り合ったのは、勤務先の合コンでのこと。いつも明るくケラケラ笑っているところが気に入って、結婚したのだけど、両家顔合わせにも、結婚式にも兄嫁さんが呼ばれていないことは不思議で、それとなく聞いてみても、沙也加から返ってくる言葉は信じがたいものだったのだ。
きっと、冗談で言われていると思い込むようにしていたのだが、まさかそれが本当のことだったとは夢にも思わないことだった。
花園家は休暇かもしれないが、舅の稼ぎや義兄の稼ぎを考えても、家政婦を雇える余裕などないはず。
家政婦の相場は、月50万円で、週休2日と習い事の月謝も持たなければならない。夜間や時間外なら別途手当てが発生し、家政婦の多くは月100万円前後の稼ぎがある。いわゆる高級官僚よりも高給取りなのだ。
話は変わるが、寝たきり老人のところなどへ訪問する看護師の給料も、それぐらいが相場で、要するに人が嫌がるようなキツイ仕事は、女性でも高額な給料を出さないとなかなか来てがないということ。
その日の夕方、沙也加は思いっきりふくれっ面をしている。
「今日、来たばっかりなのに、もう帰るってどういうつもり?」
「ちょっと急用ができて、どうしても東京に帰らなくなってしまってね。君は久しぶりの実家だから、ゆっくりしていくといいよ。」
「うん。そうするつもり。でも、ここにきてすぐ、トイレの前で、ウチの家政婦とナニを話していたの?」
「家政婦って?兄嫁さんだろ?義姉になるわけだから、沙也加の夫です。と挨拶していただけだよ。」
「あの女にいちいち丁寧なあいさつなんていらないよ。あの女はみなしごだから。」
「みなしごって、天涯孤独ってこと?」
「そうだよ。施設で育ち、高卒の底辺の人間なんだ。しかもブス。そんな女、誰とも結婚できないでしょ?だから兄がお情けで、結婚してやったんだよ。だから、あの女にここに置いてやる代わりに家政婦として使っているんだ。」
「まさか、無給の家政婦なのか?」
「当然でしょ?家事ぐらいしか能がないのだから。子供ができても満足に産めなかったのよ。それで3か月ぐらい家事をサボりやがったのよ。あの女。名前なんて、とうに忘れちゃったわ。」
「家政婦は、家族じゃないから、あの扱いってわけよ。」
「そうか。それなら、俺たちも離婚しよう。」
「え?待って。どういうこと?あの女を家政婦にしていたことと関係ないじゃん?」
「見損なったよ。まさか君がそんな女だったとはね。とにかく俺はここで買える。後のことは、弁護士と話してくれ。」
「ええ=!待ってよ。浩二さん!」
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