離婚から玉の輿婚~クズ男は熨斗を付けて差し上げます

青の雀

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介護

2.

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 後からよくよく考えても、この時、康夫と出会ったことは、運命のいたずらか麻由里と康夫にハメられたものかの判断はできない。

 とにかく、その合コンへ行ったがために美桜の人生は大きく変わろうとしていたのは確かである。

 出席者のメンバーは、20歳から23歳までの若手の看護師ばかり、その中で突出して27歳の美桜が人数合わせで参加している者だから、悪目立ち?しているのか、やたら声をかけまくられるハメになったのだ。

 当然、同期とはいえ、若い看護師に、とりわけ今日の幹事役の看護師にキっと睨みつけられ、立場がない。

 「オバサンは、早々に帰ります。」というと、男性陣からは、

 「君が有名な大卒看護師の美桜さんなんだね?」

 「はぁ、そうです。一応、幹事さんと同期です。」

 「どうして、看護師の道を選んだの?」

 「同級生は、上場会社でバリバリのキャリアウーマンしているでしょ?」

 美桜は、男性陣全員から、好奇?な目で見られ、質問攻めにあう。というのも、医療ジャーナルで、新人の頃、取材を受けたことがあったのだ。もう、あれから3年も経つので誰も覚えていないだろうとタカをくくっていたことが間違いのもと。

 青年実業家という人種であることをすっかり失念していた。青年実業家は、自分たちもしょっちゅう取材対象となるため、他の業種の業界紙にも結構目を通している人が多いということを、すっかり忘れていたのだ。

 「困っている誰かを助けたくて、この仕事に進みました。人の役に立つ仕事がしたい。」

 「すごい!しっかりしているね。」

 「なんて、高尚な理由だ。」

 「今日は、お会いできて光栄です。早く帰るなんて、言わないで、最後までお付き合いお願いします。幹事さんも、それで構いませんよね?」

 仕方なく幹事役の子は頷いている。

 他の子たちも、ここで早く帰れ光線でも出そうものなら男性陣から嫌われてしまうので、作り笑顔を張り付けている。

 「良かったら、美桜さんの話をもっと知りたいな。もちろん、個人情報保護法の範囲内でかまわないんだけど。」

 クスっと笑いかけてきた男性が、将来の夫となる康夫との出会いだ。康夫は見た目だけは、さわやかな好青年といった風で、その頃の美桜はおぼこかったので、コロッと騙されてしまったのだ。

 それからは和やかな雰囲気に戻り、他の若い看護婦たちも満足できるコンパになっていく。

 これなら、明日出勤しても、イヤミは言われないだろう。

 美桜以外の人は全員、二次会に行ったけど、美桜は帰ることにした。明日、早番だし、そろそろ帰って寝ないと遅刻してしまうから。

 幹事の子も美桜のローテーションを知っているから、何も言わない。

 「お疲れさま。また、明日ね。」

 手を振り、みんなが二次会へ行くのを見送り、駅へと向かう。

 鞄から、定期券を取り出し、改札にかざそうとしているとき、後ろから誰かが走ってくる足音が聞こえる。コワっ!さっさと改札に入ろうか、それとも人が多い券売機の方へ行くべきか?

 迷っている間に追い付かれ……、それは康夫だった。

 「ごめん、美桜さん、LIMEの交換するの忘れて、慌てて追いかけてきたんだよ。歩くの早いね。」

 当然でしょ?看護師よ。モタモタしていたら患者さんの容態に間に合わないでしょーが!

 「ごめんなさい。LIMEしてないの。それでは、おやすみなさい。」

 「あ、それならせめて、連絡先の交換とか……?もダメですか?」

 「職業柄、相手に会わせて、電話ができないから、それもね。」

 「じゃあ、お宅まで送ります。それなら大丈夫でしょ。」

 何なのよ?このしつこさは?白衣の天使は、病院の中だけの話で、白衣を脱げば、一般人と同じだということをたいていの男は忘れ、甘えてくる。だから看護師をしていることを公表したくないのに、どこからか聞きつけて、言い寄ってくる今日この頃にうんざりしている。

 でも、家に帰れば、あの頑固親父がいるから家に連れ帰って、ギャフンと言ってもらおうと思って、康夫が送ってくれることを快諾する。

 今から思えば、すべてが間違いの始まりだったのだけど、そのことは、知る由もない。
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