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いざ、馬車に乗り込もうとした時、聖女様の姿が見当たらないことにダニエルは青ざめてしまった。つい、さっきまで確かに、いらっしゃったはずなのに……。
すると、いつの間にか背後から聞き覚えのある声で呼びかけられた。
「此度のことはなんとお礼を申していいか。娘をよく無事に返してくれて礼を申す」
「へ!?」
振り返ると、そこに聖女様とバスティーユ公爵閣下がいらっしゃったのである。
「こ、これは公爵閣下。お早いお着きで」
お父様とダニエル・シュナイザーは、談笑を交えながら和やかなムードでお話しされている。その隙にミカエルは、動物たちに近づいて、
「お父様のお許しが出たから、これより皆でバスティーユの森へ参りましょう!」
その声が聞こえたのか、お父様はハッとされ、慌ててミカエルの傍に来る。
「その方たちが、ミカエルの命の恩人なのだな。改めて礼を申す。狭い森だが、我が家と思い、ゆるりと過ごされよ」
お父様は、動物たちに深々と頭を下げられる。つられて(?)動物たちも一様に頭を下げる。まるで奈良公園の鹿みたいに。
その光景に騎士団や王家の使者、教会関係者も微笑みを湛え、和やかな雰囲気一色となる。
「それでは、儂らは、先に帰るとする。シュナイザー、後の報告などよろしく頼む」
「えっ!?」
驚いて、目を剥いている面々の前で、ミカエルはお父様に抱き着き、小鳥や小動物はお父様とミカエルのカラダに飛びつき、それ以外の動物もミカエルのドレスの裾を口に咥えるなどして、全員が転移魔法の範疇に入ったかと思うと、あっという間に消えてしまった。
「さすが!聖女様だぁ!本物だぁ!」
「すっげぇー!生まれて初めて、本物の聖女様を見たぁー」
残された面々は呆然とするも、たった今、目の前で起こった事実に感激している!
公爵家の馬車は、どうせなら馬車ごと転移魔法をかけてくださればいいものを……とぼやきながら、王都に向け出発しようとしているところに、再び公爵と聖女様が戻ってきた。
「忘れ物をしたので、戻って参った。我が家の馬車を取りに戻ったものでな。シュナイザー殿報告書の方、よろしく頼むぞ。ちなみに妻とは離縁致すことになった」
公爵と聖女様が馬車に乗り込むと今度こそ、最後とばかりに皆に手を振りながら、転移魔法を使って消えた。
「あーあ。行ってしまわれた」
残されたものは、寂しさと虚しさを噛みしめ始め、途方に暮れながらも、王都へ帰る。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
転移魔法でバスティーユの森に動物たちを放すことにしたのだが、留守中、公爵家の使用人たちは、皆で協力し合って、小鳥や小動物のための巣箱づくりに励んでいる。何個か出来上がった巣箱を木に取り付け、後は鹿やクマ、狼などの大型動物のための巣箱も作り始めた。
バスティーユ夫人は、置き去り事件に自分は関与していないと否定するものの、普段からミカエルにつらく当たっていたことから、使用人たちがこぞって夫人に不利な証言を始めたことから、夫人は一転して罪を認め、自分から離縁してほしいと申し出る。
「旦那様がわたくしを女として相手にしてくださらないから……それで若くて美しいミカエルのことを苛めていました」
公爵は夫人の申し出を却下して、夫人を公爵家の地下牢に閉じ込め食事を与えず餓死させるつもりらしい。
もっとも、その前に夫人の実家から身元を引き取りたいという申し出があれば応じるつもりではいたようだが、結局、夫人の実家からはなしのつぶてで、このままでは本当に餓死の道まっしぐらかもしれない。
夫人は、公爵からどちらかを選べと言われ、地下牢行きを承諾したのだ。
公爵が出した選択とは、このまま王国に身柄を引き渡し庭師と不義密通した女として、聖女様を置き去りにした大罪人として公開処刑されるか、公爵邸の地下牢で他人知れず、餓死するかを選べと言われ、後者を選んだ。
すると、いつの間にか背後から聞き覚えのある声で呼びかけられた。
「此度のことはなんとお礼を申していいか。娘をよく無事に返してくれて礼を申す」
「へ!?」
振り返ると、そこに聖女様とバスティーユ公爵閣下がいらっしゃったのである。
「こ、これは公爵閣下。お早いお着きで」
お父様とダニエル・シュナイザーは、談笑を交えながら和やかなムードでお話しされている。その隙にミカエルは、動物たちに近づいて、
「お父様のお許しが出たから、これより皆でバスティーユの森へ参りましょう!」
その声が聞こえたのか、お父様はハッとされ、慌ててミカエルの傍に来る。
「その方たちが、ミカエルの命の恩人なのだな。改めて礼を申す。狭い森だが、我が家と思い、ゆるりと過ごされよ」
お父様は、動物たちに深々と頭を下げられる。つられて(?)動物たちも一様に頭を下げる。まるで奈良公園の鹿みたいに。
その光景に騎士団や王家の使者、教会関係者も微笑みを湛え、和やかな雰囲気一色となる。
「それでは、儂らは、先に帰るとする。シュナイザー、後の報告などよろしく頼む」
「えっ!?」
驚いて、目を剥いている面々の前で、ミカエルはお父様に抱き着き、小鳥や小動物はお父様とミカエルのカラダに飛びつき、それ以外の動物もミカエルのドレスの裾を口に咥えるなどして、全員が転移魔法の範疇に入ったかと思うと、あっという間に消えてしまった。
「さすが!聖女様だぁ!本物だぁ!」
「すっげぇー!生まれて初めて、本物の聖女様を見たぁー」
残された面々は呆然とするも、たった今、目の前で起こった事実に感激している!
公爵家の馬車は、どうせなら馬車ごと転移魔法をかけてくださればいいものを……とぼやきながら、王都に向け出発しようとしているところに、再び公爵と聖女様が戻ってきた。
「忘れ物をしたので、戻って参った。我が家の馬車を取りに戻ったものでな。シュナイザー殿報告書の方、よろしく頼むぞ。ちなみに妻とは離縁致すことになった」
公爵と聖女様が馬車に乗り込むと今度こそ、最後とばかりに皆に手を振りながら、転移魔法を使って消えた。
「あーあ。行ってしまわれた」
残されたものは、寂しさと虚しさを噛みしめ始め、途方に暮れながらも、王都へ帰る。
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転移魔法でバスティーユの森に動物たちを放すことにしたのだが、留守中、公爵家の使用人たちは、皆で協力し合って、小鳥や小動物のための巣箱づくりに励んでいる。何個か出来上がった巣箱を木に取り付け、後は鹿やクマ、狼などの大型動物のための巣箱も作り始めた。
バスティーユ夫人は、置き去り事件に自分は関与していないと否定するものの、普段からミカエルにつらく当たっていたことから、使用人たちがこぞって夫人に不利な証言を始めたことから、夫人は一転して罪を認め、自分から離縁してほしいと申し出る。
「旦那様がわたくしを女として相手にしてくださらないから……それで若くて美しいミカエルのことを苛めていました」
公爵は夫人の申し出を却下して、夫人を公爵家の地下牢に閉じ込め食事を与えず餓死させるつもりらしい。
もっとも、その前に夫人の実家から身元を引き取りたいという申し出があれば応じるつもりではいたようだが、結局、夫人の実家からはなしのつぶてで、このままでは本当に餓死の道まっしぐらかもしれない。
夫人は、公爵からどちらかを選べと言われ、地下牢行きを承諾したのだ。
公爵が出した選択とは、このまま王国に身柄を引き渡し庭師と不義密通した女として、聖女様を置き去りにした大罪人として公開処刑されるか、公爵邸の地下牢で他人知れず、餓死するかを選べと言われ、後者を選んだ。
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