あの日々に戻りたくない!自称聖女の義妹に夫と娘を奪われた妃は、死に戻り聖女の力で復讐を果たす

青の雀

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 スカーレット・ジェミニは、前世の死の記憶を持っている。

 あれは忘れもしない王国歴888年8月8日のこと。スカーレットが28歳の誕生日を迎えた日に夫であるロベルト・ジェミニから手渡された毒入りワインを飲んで、死んだのだ。

 スカーレットの実家は、ジェミニ王国の公爵家ロッテンマイヤー。元王族の家柄。

 なぜ毒殺されてしまったのかというと、スカーレットには7歳年下の義妹リリアーヌがいて、自称聖女様とのたまわっているが、教会は認めていない。

 ロベルトとリリアーヌは、浮気している間柄、それならば公爵家の庶子であろうとも、側室として召し上げたらよいところを、リリアーヌは将来の王妃になりたいと欲を出してしまった。

 ロベルトとスカーレットとの間には、王女が一人いて、名前は、アンジェリカ7歳。リリアーヌは、すっかりアンジェリカに取り入り、アンジェリカと仲良しになってしまい、アンジェリカもリリアーヌが母親になることを望んでいるような発言をしていた。

「リリアーヌ叔母様がお母様になってくれたら、嬉しいのに」
「そんなこと言えば、お義姉様が悲しむわ」
「だって、お母様は、ちっとも帰ってこないんだもん」

 スカーレットが結婚式を挙げたのは、20歳の時で、5歳の頃より政略で決められたものだった。

 アンジェリカが生まれてすぐ、それまでお妃教育で培った流ちょうな外国語のお陰で、外交官としての仕事を任され、世界中、跳び歩いていた。

 それでもアンジェリカが5歳になる頃まで、頻繁に戻ってきて、絵本の読み聞かせをしていた。

 ここ2年間は、世界情勢が激動の時代になり、忙しくしていたもののアンジェリカの誕生日には必ず帰国して、祝っていたのだが、寂しかったみたい。

 だからと言って、毒殺なんて、あまりにも酷い。アンジェリカには乳母だって、傍にいるのに。それなら誰か他の人に外交官の仕事をやらせ、スカーレットには、常に内務の仕事を任せればよかったのではないかと思う。

 残念なことに、ジェミニ王国ではスカーレット以外誰も外国語が流ちょうに話せるものはいない。

 お妃教育の時は、当時の高齢の外務大臣が一人で辞書を片手に教えていてくれた。ご成婚の前日に他界してしまい、後を継げるものがスカーレットしかいないという有様だった。

 スカーレットが毒殺された後、まんまと後妻の座を手にしたリリアーヌだったが、ロベルトとの間に子供が生まれた途端、アンジェリカを邪険にし始め、王女でありながら使用人や奴隷のような扱いを受けることになり、アンジェリカの心は次第に壊れていく。

「どうして!?前は、あんなに優しかったのに!」
「フン。お前なんぞ、あのスカーレットが産んだ娘ではないか。当然、スカーレットが憎ければ、アンタも憎いってことぐらいはわかるよね?」
「だからって、……きゃあぁっ」

 バシンという音とともに、アンジェリカはぶっ倒れてしまった。
 スカーレットから鞭で打たれ、襟元を掴まれて引きずられ独房に入れられた。

「しばらく、この中で反省してな!それともアンタの母親のところへ行くかい?」

「え……お母様を殺したの!」
「私じゃないよ。親父に聞いてみな!」
「そんなぁ……」
「自分だって、スカーレットのことを邪険にしていたのではなかったのか?今更、被害者ぶるのはよせよ。お前も同罪だってこと、忘れるな」

 リリアーヌは捨て台詞を残し、そのままコツコツと足音を響かせながら独房の前から去っていく。

 アンジェリカはカラダが痛いのと、母を殺したのが父と自分のせいだということに苦しみ始める。

 まだ8歳の幼子は、罪の大きさと深さに耐えきれなくなり、その日から一切の食事を口にせず、衰弱して餓死の選択をするのだ。

 アンジェリカの死を知ったロベルトは嘆き悲しみ、のたうち回って、苦しむ。

 今となってみれば、今までリリアーヌの一体どこに惚れこんで、妻と娘を失うことになったのかを改めて考える。

 特段、美人というわけでもなく、気立てが良いというわけでもない。さりとて、スカーレットのように優秀ではない。お妃教育を経ずして、図々しくも妃に転がり込んだ女なのだ。

 リリアーヌは、自分で聖女様を気取っているが、正式に教会に認められたわけでもない。

 よくよく考えてみれば、スカーレットの方が聖女様に相応しかったとさえ思う。

 いくらロッテンマイヤー家が異能の家だったとしても、リリアーヌは婚外子であり聖女様に相応しくない。

 それに最近、相次いで第2王子とその妃までもが、不審死を遂げている。まさかとは思うが、リリアーヌが関係していることはないのか?

 それに父である国王陛下の体調も思わしくない様子に、城内では不穏な噂話が漂い始めた。

 今更気づいたところで、もう取り返しがつかない。


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