あの日々に戻りたくない!自称聖女の義妹に夫と娘を奪われた妃は、死に戻り聖女の力で復讐を果たす

青の雀

文字の大きさ
12 / 16

12.

しおりを挟む
 噂の真偽はわからないが、まず間違いはないだろうと思うと、父が言っていた。

 別宮で注文の品物を届けに行った際に、それらしき令嬢の下着が落ちていたり、明らかに引き裂かれた下着だったり、下着姿のまま、ぼんやりと佇んでいる令嬢を何度か見かけたり、と中には、父の知り合いの高位貴族の令嬢も見かけたという。

 もし、表ざたになれば、その令嬢は、どこにもお嫁に行けなくなってしまうから深刻な話である。

 王子の中には、年増好きもいるようで、自分の母親と年が変わらないような、他の陛下の側妃を襲って、自分の女にしているケースもあると聞く。

 襲われた妃も、久しぶりの若い男の肉に悦んでいたとか、いないとか?

 ついに、別宮の乱痴気騒ぎの件が、国王陛下の耳に入る。

 陛下は、激怒し、妃を北の塔の幽閉を決められる。元王子の処遇は、犯罪労働者と同じ扱いで、手首と脚に鎖と重りをつけ、鉱山送りの処分にしたのだ。

 そして、囚われていた令嬢たちのほとんどは、自らの死を選択した。中には、生きて、修道院を希望する令嬢もいたが、スカーレットは、彼女たちのために別宮へ赴き、聖女の力で、生娘の令嬢として、何ら恥ずべき姿ではないところまで処置をした。

 そういう令嬢たちとその両親は、泣いて喜び、スカーレットに忠誠を誓ったことは言うまでもない。

 元王子たちは、今まで働いたことがなく、金と美女と美食という贅沢な暮らしに慣れきっていた。カラダに容赦のない鞭が飛ぶ。

 第2王子は、たった数時間働いただけで、熱を出して、その場に倒れ込んでしまう。第3王子は、もっとひ弱で、開始から30分で泡を吹いてしまった。

 次々と新入りの元王子たちが倒れていくのを横目で見ている犯罪労働者たちは、呆れかえって、言葉も出ない。

 その中の一人の男、ジャック・モーガン。眼光は鋭く、油断がならない感じがする。実は、このジャック、某国のスパイとして、3か月前からジェミニに潜入している。

 坑夫としての労役など、いつでも逃げ出そうと思えば、できる。あえてしないのは、犯罪者からの情報は、裏社会の情報であるから、その国の情報は、裏からとる方が正確で役に立つものが多い。

 それにしても、この腐った王子様たちは、なんだ?新入りに聞くと、王様のタネではないのに、今まで威張り腐っていて、貴族令嬢を食い物同然に食い散らかし、挙句継母にまで手を出したと聞いたときは、百戦錬磨のジャックでさえ、驚きを隠せない。

 ジャックの容姿は、背が高くゴツゴツした筋肉質。だが、頬に十文字の刀傷の後がある。若い頃、トチッて、ヘマをしたときについた傷跡がある。

 その傷跡のせいで、まともな仕事を得ることなく、スパイの道に入った。

「この国は、もう腐っているな。クーデターのタネさえ撒いておけば、いずれ自滅するかもしれない」

 独り言を呟いたジャックのその後の姿を見たものは、誰もいない。

 そのままジャックは、本国へ取って返し、主に報告する。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



「おかしいな。ジェミニ国では聖女様が現れ、民度が高くなっているはずだが」

 ジャックは、坑道の中に聖女様を知るものがいなかったことを思い出し、再度、ジェミニ国への諜報活動を願い出ることになったのだ。

 ジャックは、聖女様のことを調べるため、真っ先に向かった先は、教会。だが、教会には聖女様はいなかった。

 ついで孤児院や、医療施設も回ってみたが、聖女様はどこにもいない。

 王都に行って、気づいたことは、みんなニコニコ笑顔でいること。それは、罪人坑夫とは多少、表情が異なってはいても、ここまで満面の笑顔というのも珍しい。

 その理由を探ってみると、まさにそれこそが聖女様の力作だったことがわかる。

 「プリンセス・ケア」というシリーズで売り出された常備薬の数々。薬というより、むしろ聖魔法の塊のような存在に圧倒される。

 試しにジャックは、ひとつ買ってみることにした。説明書きには、「気になる部分にお使いください」とあったので、何気に蓋を取り、顔の十字の傷に塗った。しばらくすると、ポカポカと暖かくなったかと思うと、鏡を見ていないから、よくわからないが、軟膏を塗った指がなんとなく金色に光っているように見える。それにゴツゴツと節くれだっていた指がスラリと美しく?まるで、別人のような指になっていたのだ。

 まさかと思い、鏡を探してみると、長年のコンプレックスだった十字の傷跡がきれいさっぱりなくなっていて、おまけに肌艶が良くなり光沢までしていたからには、驚いたなんてものではない。

 まさに神業だ!今まで外出するときは、必ずフードを目深にかぶり顔がわからないように隠していたのだが、この軟膏を塗るようになってから、フードを取り、堂々と人前に顔をさらけ出すことができた。人々の満面の笑顔の裏には、この軟膏があったとは、思いもしなかったことで、まさに神業としか言いようがない。

 ジャックは今まで自分に自信が持てなかったのだが、この軟膏と出会ってからは、何事も前向きに積極的になっている自分に気づきはじめる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

よかった、わたくしは貴女みたいに美人じゃなくて

碧井 汐桜香
ファンタジー
美しくないが優秀な第一王子妃に嫌味ばかり言う国王。 美しい王妃と王子たちが守るものの、国の最高権力者だから咎めることはできない。 第二王子が美しい妃を嫁に迎えると、国王は第二王子妃を娘のように甘やかし、第二王子妃は第一王子妃を蔑むのだった。

全てがどうでもよくなった私は理想郷へ旅立つ

霜月満月
恋愛
「ああ、やっぱりあなたはまたそうして私を責めるのね‥‥」 ジュリア・タリアヴィーニは公爵令嬢。そして、婚約者は自国の王太子。 でも私が殿下と結婚することはない。だってあなたは他の人を選んだのだもの。『前』と変わらず━━ これはとある能力を持つ一族に産まれた令嬢と自身に掛けられた封印に縛られる王太子の遠回りな物語。 ※なろう様で投稿済みの作品です。 ※画像はジュリアの婚約披露の時のイメージです。

殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし

さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。 だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。 魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。 変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。 二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……

なぜ、虐げてはいけないのですか?

碧井 汐桜香
恋愛
男爵令嬢を虐げた罪で、婚約者である第一王子に投獄された公爵令嬢。 処刑前日の彼女の獄中記。 そして、それぞれ関係者目線のお話

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

処理中です...