転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀

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現世:新たなる旅立ち

38.夢

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 ナンパされたからか、なんだか寝覚めが悪い。それに変な夢を見た。ものすごく長い夢のようだったが、内容はほとんど覚えていない。リアリティがあるような夢のようで、その実、何も思い出せないという気持ちの悪さ。

 懸命に夢の続きを考えるも、ああ、ダメだ。やっぱり何も思い出せない。とりあえず、顔を洗って、店の表を掃除しようとしたら、もうジェニファーが掃除を始めている。

「おはよう。ジェニファー早いわね」

「ええ。女将代行ですからね。さっき、妙な男が、昨日の娘がどうしたとか?と聞きに来ていましたよ。あれがナンパ男というものですか?」

「そうよ。それでどうしたの?」

「私がこの店の女将です。と言ったら、逃げるように去って行ったわ」

「ふふふ。ありがとう。助かったわ。これからもよろしくお願いします」

「どういたしまして」

 二人で掃除を始めたら、あっという間に終わる。それで厨房に入り、賄の朝ごはんの支度をし始めると、デイジーたちが起きてきた。

 かまどに火入れをして、今朝の賄メニューは、焼き鮭となめこのみそ汁、香の物に炊き込みご飯と和食メニューにしてみた。今朝の夢がまだ尾を引いていて、気持ち悪くて仕方がない。

「どうしたんですか?オーナー、顔色が良くありませんよ」

「なんかね、いやな夢見ちゃったみたいなんだけど、内容を覚えていなくて、でも嫌な夢だったことは確かよ」

「どんな夢でしたか?」

「長い、長い夢よ。誰かに殺されてしまう夢」

「それは、ここと似たような世界ですか?それとも黒髪の世界ですか?」

「え……とね、わたくしが王女殿下になった夢を見て、留学して、それから……ああ、ダメだ。思い出せない」

「誰かと愛し合った夢でしょうか?」

「うーん。そんなこともあったのかも?イヤダ。夢の話にデイジーが付き合ってくれるなんて……デイジーも変な夢でも見た?」

「私は、いつも変な夢ばかりですよ」

「そういえば、夢の中で、シンリーとかなんとか、呼んでいたような気がする」

「オーナーそれって、アレですよ」

「アレって?」

「つまり欲求不満じゃないですかね?」

「ヤダ!嫁入り前なのに、なんてことを言うのよ!」

「シンリーだなんて、シンイーならわかるけど……?ひょっとして、シンイーのことが気になり過ぎて、夢の中で、少し名前違いで現れてきたってとこですか?」

「や、やめてよ」

 アイリーンは、急に恥ずかしくなってくる。知らず知らずのうちにシンイーのことを意識していたなんて……あり得なくもない?いやいや、食事中なのに、大きくかぶりを振ってしまう。お行儀が悪いことをした自覚に、呆然としてしまい、残りのご飯をかっ込んだ。

 それをサファイアとデイジーが、アイコンタクトを取って、頷きあっていることなど、知る由もない。

 ああ、ヤダやだ。嫌な夢を見たばかりか、デイジーに揶揄われてしまって気分が悪い。

 それにあんなこと言われた後では、シンイーの顔をまともに見られないことに気づいてしまう。

 人は生まれてから死ぬまでの間に、次の世代に命を繋いでいくという絶対的な使命があるはずなのに、それを忘れてしまえるほど、何か困難なことでもあったのだろうか?

 誰かに殺される夢と言うのは、つまりそういうことよね?その使命を果たせないまま、殺されてしまうということ。

 よほど、罪深いことをしてきたのかしら?と首をひねる。

 でも、深層心理で言えば、まったくお門違いの見解である。人に殺される夢は吉夢で、後味感は悪いが、その多くはお金が入ってくる前兆であったり、何か新しいことをする前触れである場合が多い。

 死とは、再生を意味するから、決して悪い夢ではないが、どうしても、この手の夢を見ると不吉を思い浮かべてしまいがちになる。
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