置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀

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 派遣した事務官は、急ぎ帰国した。その報告を聞き、アレキサンドラは青ざめてしまう。レオンハルトの不能の原因が、最初はやはりアレキサンドラを拒否したためだということがわかった。

 それにバレンシア嬢はご落胤を産んでいたということも掴んだ。

 レオンハルトは帰国前、マドリード国の片田舎まで帰ってきており、その宿に2年間の宿泊代金を支払っていた。

 その後、バレンシア嬢は、綺麗な金髪金眼の男児を出産している。出産当時、セレナーデ公爵夫人が、何人かの侍女を連れて、その宿に向かったことも船舶記録から知れている。

 出産後、パンなどを作り売りして、生計を立てていたようだが、1年前にマドリード王家の専属パティシエに引き抜かれ、今では料理長を務めていると聞き及んだ。

 なお、ご落胤の存在にマドリード王家も関与しているらしく、迂闊に手を出せないとの報告があった。

 なんでも、半年間の留学中にマドリードの王族と同級生の間柄で、その王族の紹介で料理長におさまったらしいと聞く。

「ふん。どこまでも運がいい小娘ね!」

 アレキサンドラは、自分と年齢がさほど変わらないバレンシアのことを小娘と言い切るあたり、まだ自分が置かれている状況がわかっていないようだった。

 マドリードにアレキサンドラが略奪婚をしてしまったこと、レオンハルトとの間に、一生子が生せぬことを知らしめたばかりか、白い結婚だということも知れてしまったことにまだ気づいていない。

 バルセロナ国に、一人の王から一人の王しか生せないという伝説じみた呪いがあることは、世界中の王家では公然の秘密となっていることをアレキサンドラは知らなかったのだ。

 レオンハルトに一目ぼれをしてしまい、その感情に盲執してしまい、他のことは一切聞き入れなかったことが原因なのだ。

 結婚前に、アレキサンドラの父王から

「レオンハルト殿に、他に想い人がいたなら結婚を諦め、さっさと戻ってくるがよかろう」

 今になって、思えば父の言葉が甦る。でも、その意味はいまだわかっていない現状がある。

 バルセロナ王が特殊な絶倫だけであり、代々の王は一穴主義を貫いていたのだ。

 もがけばもがくほど恥の上塗りになることを気づいていないアレキサンドラは、レオナルドを手に入れるため、あれこれと画策する。

 まだレオナルドさえ、手に入れば、国母としてやっていけると信じているようだった。

 アレキサンドラは騎士団に命じて、バレンシア嬢の殺害とできればレオナルドを奪還するように命じる。

 騎士団の動きを訝しんだレオンハルトは、アレキサンドラが出した命令の内容に愕然とすることは言うまでもないこと。

「なんだって……!バレンシアが王子を産んでいたとは……!今すぐに、バレンシアに会いに行く。殺害など、とんでもないことだ。もう王太子妃とは離婚する」

 バレンシアが、王子を産んでいたことは国中に公布され、国民は喜びで沸き立つ。

 アレキサンドラは、ぎりぎりと歯ぎしりをするが、軍を動かしたことにより、レオンハルトの耳に入ったからには、どうすることもできない。

 自分で自分の首を絞めてしまったのだ。

 あっという間に、王太子妃の位をはく奪され、母国に送り帰されることになる。でも、白い結婚だったということは周知の事実だから、他に貰い手もあるというものなのが、まだ救いだったのであるが……。ヤケになったアレキサンドラは、あの媚薬を最後の晩餐時にぶちまける。

 せめてレオンハルトに一夜のお情けを……のはずが、それを絶倫王が食したため、新しい慰み者として、絶倫王の手にかかってしまったのだ。

 もう、こうなれば帰国しても白い結婚という称号はなくなり、修道院へ行かされることになってしまった。

 息子の嫁に手を出してしまった絶倫王は、廃位を迫られ、渋々応じるが、最後の一言でアレキサンドラは、さらに窮地に追い込まれてしまう。

「処女だか何だか知らないが、ブカブカで味は良くなかったぞ。アレならブタとやった方がまだマシだ」


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