神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀

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7.王城へ

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「待って。ここではイヤ」

 言いながら、転移魔法を使って、王都の公爵邸の自分の部屋に移動する。もちろんハワード様と一緒に。

 領地の応接間では、いつ誰が開けるかわからない。それならまだ王都の自室の方がマシだと思ったから。

 マリアンローゼがまだ家にいる可能性もあるけど、あのまま応接室で純潔を散らされるよりは、幾分気分的に楽というもの。

 自室のソファの上に着地したものの。やはりマリアンローゼの所在が気になる。アーノルドと浮気するぐらいだから、閨のことはマリアンローゼの方が先輩だから、彼女に声を聴かれることは気まずくて仕方がない。

 念のため、転移した部屋に防音魔法をかける。ふと窓の外を見るとマリアンローゼが寝間着姿のままで庭の木にぶら下がっているところを目撃してしまい、思わず身を乗り出して様子をうかがう。

 きっと、部屋の窓から一番近い枝に飛び移って、そこから脱出を企てている最中だと推測する。

 まるで猿のような動きに感心して眺めていると、ハワード様が近くに来て、

「あれが偽の義妹か!?野生児そのものだな」

「ねえ。面白そうだから、あの娘の後を追いかけてみない?どうせアーノルドのところへ行くに決まっているって言うものだけど、あの娘がアーノルドのところへ行って、アーノルドがどんな応対をするのか見てみたいわ」

「それは面白いね!でも今、お城に行けば、義兄を喜ばすだけかもしれないよ?」

「姿を消していけば、誰にもわからないわ。それに陛下やアーノルドの本音が聞けるかもしれないし」

 バレンシアは自分の分とハワード様にと、隠ぺい魔法をかける。

「お!バレンシア嬢が薄く透き通って見える!」

「これでもう安心よ」

 そのまま二人は、公爵邸を後にして、ゆっくりとつかず離れずの距離でマリアンローゼの後を尾けていく。

 マリアンローゼは時折、部屋のスリッパでは歩きにくいらしく、少しずつしか前へ進めないでいるようだ。

 その間中、ずっとハワード様は、バレンシアの腰を抱きよせるような姿勢で歩かれ、正直、疲れる。

 その姿を他の誰にも見られていないということだけが、救いなわけである。

 そして時間はかかったが、王城の通用口のところまで行き、門番にアーノルド殿下を呼び出しのお願いをしている。

 普段から、アーノルドの側近が来て、マリアンローゼのいでたちに怪訝な顔をしているが、「しばらくお待ちを」と言い残し、お城の中に消えていく。

 その背中を追いかけるバレンシアとハワード様は、王の間に入っていく。

「マリアンローゼが寝間着姿のまま……、どうやらセレナーデ家に置き去りにされた模様で……」

「なにぃっ!?ならば、その女を牢獄に入れろっ!聖女様もついに業腹に据えかねたとみられる」

 国王がマリアンローゼを拘束したことを聖女バレンシアのご機嫌取りのためにやったと聞き、不快感を覚える。

 そこへ王の間の扉がノックされ、近衛騎士団長がしずしずと入ってくる。

「弟君の殿下がセレナーデ領へ向かわれたご様子でございます」

「何っ!?それはいつのことか?」

「3日前のことでございます」

「チッ!先を越されたか。3日前というと、婚約破棄した直後のことだな。アーノルド、これは次第によっては戦になるかもしれぬ。用意いたせ」

 ふーん。陛下は戦争をなさるつもりなのか!

 その後、アーノルドとの間でブサイク論争をされた後、騎士団長と内密にアーノルドの廃嫡で命乞いをしようと思っておられるみたい。

 戦わずして、降伏するなど、それでも王族の端くれか!?と問いただしたい。でも、それほどバレンシアがハワード様の側につくことをおそれていらっしゃるのか!?真偽はわからないが、間違いなく陛下はバレンシアが敵側につくことを恐れていらっしゃる様子に困惑を隠せない。

 そんなVIPなら、どうしてアーノルドを野放しにしてきたか、理解できない。

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