捨てられた聖女様

青の雀

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 翌朝と言っても、4時だが、いつもの通り目が覚める。昨夜、遅くまで国王陛下と第1王子様と話し込んでいたので、礼拝堂の場所を聞くことを失念していた。

 それでまだ暗いが、お城の一番高いところまで、ひたすら階段を上る。屋上?部分のバルコニーには、衛兵が立っていたので、その者に朝日が上がってくるのはどちらかと聞く。

 衛兵は朝日を今まで見たことがないという言葉に驚くが、それなら東はどちらかと聞けば、答えてくれた。

 そして、東に向かって、一心不乱にお祈りを捧げる。5歳の時から身に着いた習慣だから、こればっかりはどうしようもない。

 さっき東側を教えてくれた衛兵は、ビックリしたような顔をしてジェニファーを見つめている。

 祈りをささげたのち、竹ぼうきを持ち、辺りを掃除し始める。それが終われば、雑巾を手に持ち、階段の手すりを拭き始める。

 一通り祈りと掃除が終わったのは、午前6時になったところ。ようやくお城の女官が起き出す時刻には、すべて祈りと掃除が出来上がっている。

 ジェニファーは、誰よりも人一倍働き国を守ってきた。

 それをバルサン国の民衆は、知らずに税金ドロボーの汚名を着せた。天の神からすれば、嘘つきルフィを殺したぐらいでは、怒りが収まらない。

 ジェニファーは、怒りというより悲しみの方が大きかった。だから、言われるがままに捨てられたのだ。抵抗せずに、「どうなっても知らないわよ」と言い残した。

 聖女様の地位に甘んじないで、女官以上に、神官以上に働いたというのに、亡き国王陛下だけがジェニファーのことを正当に評価してくださっていた。だからコックローチと婚約させたのだ。それなのに、浮気されて、偽物扱いされて、悲しくて堪らなかった。

 今はアースレッド国の皆さんは、この非日常をありがたいと思ってくださっていても、時が過ぎれば、この非日常が日常となり、ジェニファーの存在が、いらないものとなるのだろう。

 そうなれば、ジェニファーはまたゴミ同然の扱いを受けることになるのだろうか。バルマン国で聖女として、12年。アースレッド国で同じだけ暮らせば、29歳になってしまう。

 29歳になってから、また捨てられ追い出されるのはイヤだなぁとぼんやり考える。

 いっそのこと、聖女であることを隠して生きて行こうかとも思う。でも、他に生きていく術がない。できることと言えば、祈りと掃除だけ。掃除婦として、どこかのお貴族様の下女として、雇ってもらえないだろうか?

 バルマン国では顔を知られているので、あの国では無理だろう。

 確か、スチュアート殿下は、アースレッドは超がつくほどの貧乏国だとおっしゃっていたので、この国では就職先は見つけられないかもしれない。

 しばらく様子を見て、脱出できそうなら、脱出してみようかな?と思い巡らす。

 殿下が起きてこられるまで、悶々と自室として与えられた部屋で、掃除をしながら考え事をする。

 そのうち扉をノックする音が聞こえてきたので、立ち上がり扉を開ける。

「聖女様、もう起きていらっしゃいましたか?ただいま洗顔のお水をお持ち致しました」

 今朝4時起きだっつうの!とは言わない。

「ありがとう。早くに目が覚めてしまい、お祈りをしていました」

「それは、失礼いたしました。では御髪のお手入れを致しましてから、お食事の準備をさせていただきます」

 え!?また、ご飯を頂けるの?ジェニファーは一宿一飯の恩義は返したつもりで、今朝祈りをささげたのだ。いつまで、ここに置いてもらえるのかしら?昨夜、殿下は逗留というお言葉を使われたので、あくまでもジェニファーは旅行者の扱いとなっているはず。いつまで、いてもいいのかわからない。

 ジェニファーの個人としての荷物は何もない。着の身着のままたたき出されてしまったので、元々私物などないも同然だったから、不自由を感じたことはない。

 でも、この国を出たら飲み水にも事欠くのだろうか?水魔法で水は出せるけど、飲んでもいいのかわからない。

 5歳の頃より、籠の中の鳥としての生活を強いられてきたので、とても世間知らずなわけで、これから一人でどうやって生きていけばいいのかさえもわからない。

「聖女様は、とてもきれいな御髪ですわ」

「ありがとう」

「今朝は久しぶりにいいお天気で、生まれてこの方、お日様を見たのがたぶん今日で2度目だったように思います」

「……」

 今朝、東に向かって、お祈りを捧げたからなのか!?まさかね。

 髪を綺麗にセットしてもらい、昨日とは別のドレスに着替えさせられる。これもシンプルで動きやすい。

 食堂へ入ると、陛下も昨日のお召し物と違うものを着ていらっしゃった。

「おはようございます。よく眠れましたか?」

「はい。ぐっすりと」

「もう少し、朝寝をされてもかまいませんよ。聖女様は朝早くから城のてっぺんでお祈りを捧げ、その後お掃除をされたと聞き及んでおります。聖女様はお客人として、こちらに逗留されておられるのですから、そのようなことはされなくても大丈夫です」

「ありがとう存じます。ですが、毎日の習慣ですので、どうかお気になさらないでくださいませ」
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