4 / 6
4.
しおりを挟む
翌朝と言っても、4時だが、いつもの通り目が覚める。昨夜、遅くまで国王陛下と第1王子様と話し込んでいたので、礼拝堂の場所を聞くことを失念していた。
それでまだ暗いが、お城の一番高いところまで、ひたすら階段を上る。屋上?部分のバルコニーには、衛兵が立っていたので、その者に朝日が上がってくるのはどちらかと聞く。
衛兵は朝日を今まで見たことがないという言葉に驚くが、それなら東はどちらかと聞けば、答えてくれた。
そして、東に向かって、一心不乱にお祈りを捧げる。5歳の時から身に着いた習慣だから、こればっかりはどうしようもない。
さっき東側を教えてくれた衛兵は、ビックリしたような顔をしてジェニファーを見つめている。
祈りをささげたのち、竹ぼうきを持ち、辺りを掃除し始める。それが終われば、雑巾を手に持ち、階段の手すりを拭き始める。
一通り祈りと掃除が終わったのは、午前6時になったところ。ようやくお城の女官が起き出す時刻には、すべて祈りと掃除が出来上がっている。
ジェニファーは、誰よりも人一倍働き国を守ってきた。
それをバルサン国の民衆は、知らずに税金ドロボーの汚名を着せた。天の神からすれば、嘘つきルフィを殺したぐらいでは、怒りが収まらない。
ジェニファーは、怒りというより悲しみの方が大きかった。だから、言われるがままに捨てられたのだ。抵抗せずに、「どうなっても知らないわよ」と言い残した。
聖女様の地位に甘んじないで、女官以上に、神官以上に働いたというのに、亡き国王陛下だけがジェニファーのことを正当に評価してくださっていた。だからコックローチと婚約させたのだ。それなのに、浮気されて、偽物扱いされて、悲しくて堪らなかった。
今はアースレッド国の皆さんは、この非日常をありがたいと思ってくださっていても、時が過ぎれば、この非日常が日常となり、ジェニファーの存在が、いらないものとなるのだろう。
そうなれば、ジェニファーはまたゴミ同然の扱いを受けることになるのだろうか。バルマン国で聖女として、12年。アースレッド国で同じだけ暮らせば、29歳になってしまう。
29歳になってから、また捨てられ追い出されるのはイヤだなぁとぼんやり考える。
いっそのこと、聖女であることを隠して生きて行こうかとも思う。でも、他に生きていく術がない。できることと言えば、祈りと掃除だけ。掃除婦として、どこかのお貴族様の下女として、雇ってもらえないだろうか?
バルマン国では顔を知られているので、あの国では無理だろう。
確か、スチュアート殿下は、アースレッドは超がつくほどの貧乏国だとおっしゃっていたので、この国では就職先は見つけられないかもしれない。
しばらく様子を見て、脱出できそうなら、脱出してみようかな?と思い巡らす。
殿下が起きてこられるまで、悶々と自室として与えられた部屋で、掃除をしながら考え事をする。
そのうち扉をノックする音が聞こえてきたので、立ち上がり扉を開ける。
「聖女様、もう起きていらっしゃいましたか?ただいま洗顔のお水をお持ち致しました」
今朝4時起きだっつうの!とは言わない。
「ありがとう。早くに目が覚めてしまい、お祈りをしていました」
「それは、失礼いたしました。では御髪のお手入れを致しましてから、お食事の準備をさせていただきます」
え!?また、ご飯を頂けるの?ジェニファーは一宿一飯の恩義は返したつもりで、今朝祈りをささげたのだ。いつまで、ここに置いてもらえるのかしら?昨夜、殿下は逗留というお言葉を使われたので、あくまでもジェニファーは旅行者の扱いとなっているはず。いつまで、いてもいいのかわからない。
ジェニファーの個人としての荷物は何もない。着の身着のままたたき出されてしまったので、元々私物などないも同然だったから、不自由を感じたことはない。
でも、この国を出たら飲み水にも事欠くのだろうか?水魔法で水は出せるけど、飲んでもいいのかわからない。
5歳の頃より、籠の中の鳥としての生活を強いられてきたので、とても世間知らずなわけで、これから一人でどうやって生きていけばいいのかさえもわからない。
「聖女様は、とてもきれいな御髪ですわ」
「ありがとう」
「今朝は久しぶりにいいお天気で、生まれてこの方、お日様を見たのがたぶん今日で2度目だったように思います」
「……」
今朝、東に向かって、お祈りを捧げたからなのか!?まさかね。
髪を綺麗にセットしてもらい、昨日とは別のドレスに着替えさせられる。これもシンプルで動きやすい。
食堂へ入ると、陛下も昨日のお召し物と違うものを着ていらっしゃった。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
「はい。ぐっすりと」
「もう少し、朝寝をされてもかまいませんよ。聖女様は朝早くから城のてっぺんでお祈りを捧げ、その後お掃除をされたと聞き及んでおります。聖女様はお客人として、こちらに逗留されておられるのですから、そのようなことはされなくても大丈夫です」
「ありがとう存じます。ですが、毎日の習慣ですので、どうかお気になさらないでくださいませ」
それでまだ暗いが、お城の一番高いところまで、ひたすら階段を上る。屋上?部分のバルコニーには、衛兵が立っていたので、その者に朝日が上がってくるのはどちらかと聞く。
衛兵は朝日を今まで見たことがないという言葉に驚くが、それなら東はどちらかと聞けば、答えてくれた。
そして、東に向かって、一心不乱にお祈りを捧げる。5歳の時から身に着いた習慣だから、こればっかりはどうしようもない。
さっき東側を教えてくれた衛兵は、ビックリしたような顔をしてジェニファーを見つめている。
祈りをささげたのち、竹ぼうきを持ち、辺りを掃除し始める。それが終われば、雑巾を手に持ち、階段の手すりを拭き始める。
一通り祈りと掃除が終わったのは、午前6時になったところ。ようやくお城の女官が起き出す時刻には、すべて祈りと掃除が出来上がっている。
ジェニファーは、誰よりも人一倍働き国を守ってきた。
それをバルサン国の民衆は、知らずに税金ドロボーの汚名を着せた。天の神からすれば、嘘つきルフィを殺したぐらいでは、怒りが収まらない。
ジェニファーは、怒りというより悲しみの方が大きかった。だから、言われるがままに捨てられたのだ。抵抗せずに、「どうなっても知らないわよ」と言い残した。
聖女様の地位に甘んじないで、女官以上に、神官以上に働いたというのに、亡き国王陛下だけがジェニファーのことを正当に評価してくださっていた。だからコックローチと婚約させたのだ。それなのに、浮気されて、偽物扱いされて、悲しくて堪らなかった。
今はアースレッド国の皆さんは、この非日常をありがたいと思ってくださっていても、時が過ぎれば、この非日常が日常となり、ジェニファーの存在が、いらないものとなるのだろう。
そうなれば、ジェニファーはまたゴミ同然の扱いを受けることになるのだろうか。バルマン国で聖女として、12年。アースレッド国で同じだけ暮らせば、29歳になってしまう。
29歳になってから、また捨てられ追い出されるのはイヤだなぁとぼんやり考える。
いっそのこと、聖女であることを隠して生きて行こうかとも思う。でも、他に生きていく術がない。できることと言えば、祈りと掃除だけ。掃除婦として、どこかのお貴族様の下女として、雇ってもらえないだろうか?
バルマン国では顔を知られているので、あの国では無理だろう。
確か、スチュアート殿下は、アースレッドは超がつくほどの貧乏国だとおっしゃっていたので、この国では就職先は見つけられないかもしれない。
しばらく様子を見て、脱出できそうなら、脱出してみようかな?と思い巡らす。
殿下が起きてこられるまで、悶々と自室として与えられた部屋で、掃除をしながら考え事をする。
そのうち扉をノックする音が聞こえてきたので、立ち上がり扉を開ける。
「聖女様、もう起きていらっしゃいましたか?ただいま洗顔のお水をお持ち致しました」
今朝4時起きだっつうの!とは言わない。
「ありがとう。早くに目が覚めてしまい、お祈りをしていました」
「それは、失礼いたしました。では御髪のお手入れを致しましてから、お食事の準備をさせていただきます」
え!?また、ご飯を頂けるの?ジェニファーは一宿一飯の恩義は返したつもりで、今朝祈りをささげたのだ。いつまで、ここに置いてもらえるのかしら?昨夜、殿下は逗留というお言葉を使われたので、あくまでもジェニファーは旅行者の扱いとなっているはず。いつまで、いてもいいのかわからない。
ジェニファーの個人としての荷物は何もない。着の身着のままたたき出されてしまったので、元々私物などないも同然だったから、不自由を感じたことはない。
でも、この国を出たら飲み水にも事欠くのだろうか?水魔法で水は出せるけど、飲んでもいいのかわからない。
5歳の頃より、籠の中の鳥としての生活を強いられてきたので、とても世間知らずなわけで、これから一人でどうやって生きていけばいいのかさえもわからない。
「聖女様は、とてもきれいな御髪ですわ」
「ありがとう」
「今朝は久しぶりにいいお天気で、生まれてこの方、お日様を見たのがたぶん今日で2度目だったように思います」
「……」
今朝、東に向かって、お祈りを捧げたからなのか!?まさかね。
髪を綺麗にセットしてもらい、昨日とは別のドレスに着替えさせられる。これもシンプルで動きやすい。
食堂へ入ると、陛下も昨日のお召し物と違うものを着ていらっしゃった。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
「はい。ぐっすりと」
「もう少し、朝寝をされてもかまいませんよ。聖女様は朝早くから城のてっぺんでお祈りを捧げ、その後お掃除をされたと聞き及んでおります。聖女様はお客人として、こちらに逗留されておられるのですから、そのようなことはされなくても大丈夫です」
「ありがとう存じます。ですが、毎日の習慣ですので、どうかお気になさらないでくださいませ」
105
あなたにおすすめの小説
婚約破棄?から大公様に見初められて~誤解だと今更いっても知りません!~
琴葉悠
恋愛
ストーリャ国の王子エピカ・ストーリャの婚約者ペルラ・ジェンマは彼が大嫌いだった。
自由が欲しい、妃教育はもううんざり、笑顔を取り繕うのも嫌!
しかし周囲が婚約破棄を許してくれない中、ペルラは、エピカが見知らぬ女性と一緒に夜会の別室に入るのを見かけた。
「婚約破棄」の文字が浮かび、別室に飛び込み、エピカをただせば言葉を濁す。
ペルラは思いの丈をぶちまけ、夜会から飛び出すとそこで運命の出会いをする──
虐げられたアンネマリーは逆転勝利する ~ 罪には罰を
柚屋志宇
恋愛
侯爵令嬢だったアンネマリーは、母の死後、後妻の命令で屋根裏部屋に押し込められ使用人より酷い生活をすることになった。
みすぼらしくなったアンネマリーは頼りにしていた婚約者クリストフに婚約破棄を宣言され、義妹イルザに婚約者までも奪われて絶望する。
虐げられ何もかも奪われたアンネマリーだが屋敷を脱出して立場を逆転させる。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
機械仕掛けの夜想曲
柊
恋愛
名ピアニストである伯爵令嬢フローリア・ベルクレイン。素晴らしい演奏技術を持つ彼女だが、完璧すぎる旋律故に「機械仕掛けの演奏」と陰口を叩かれていた。さらにそのことで婚約解消をされ、妹に乗り換えられてしまう。妹にもそれをなじられ、心が折れてしまったフローリアは「少し休みたい」とピアノを弾くことをやめてしまう。
そして、ある夜、アルベルト・シュタインヴァルトが突如来訪。「人命を救うために、フローリア嬢のピアノの演奏技術が必要だ」と告げる。それにフローリアがとった行動は……。
※他のサイトにも重複投稿してます。
【完結】ずっとやっていれば良いわ。※暗い復讐、注意。
BBやっこ
恋愛
幼い頃は、誰かに守られたかった。
後妻の連れ子。家も食事も教育も与えられたけど。
新しい兄は最悪だった。
事あるごとにちょっかいをかけ、物を壊し嫌がらせ。
それくらい社交界でよくあるとは、家であって良い事なのか?
本当に嫌。だけどもう我慢しなくて良い
魔女の祝福
あきづきみなと
恋愛
王子は婚約式に臨んで高揚していた。
長く婚約を結んでいた、鼻持ちならない公爵令嬢を婚約破棄で追い出して迎えた、可憐で愛らしい新しい婚約者を披露する、その喜びに満ち、輝ける将来を確信して。
予約投稿で5/12完結します
エデルガルトの幸せ
よーこ
恋愛
よくある婚約破棄もの。
学院の昼休みに幼い頃からの婚約者に呼び出され、婚約破棄を突きつけられたエデルガルト。
彼女が長年の婚約者から離れ、新しい恋をして幸せになるまでのお話。
全5話。
【完結】義妹に全て奪われた私。だけど公爵様と幸せを掴みます!
朝日みらい
恋愛
リリアナは美貌の義妹イザベラにすべてを奪われて育ち、公爵アルノーとの婚約さえも破棄される。
役立たずとされて嫁がされたのは、冷徹と噂される公爵アルノー。
アルノーは没落した家を立て直し、成功を収めた強者。
新しい生活で孤立を感じたリリアナだが、アルノーの態度に振り回されつつも、少しずつ彼の支えを感じ始め――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる