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第7話 双子の王女と王子
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「私、エルミリオ・アルステラ様が大好きなんです!」
「エルミリオ様……?」
「はい! エルミリオ・アルステラ様こそ、私が理想とする男性なのです!!」
「……ええと、ごめんなさい。それはどなたかしら」
首を傾げるフィメリアに向かって、ソールーナはここぞとばかりに早口で説明し始めた。
「『姉騎士と僕の微妙な関係』の主人公のエルミリオ様です! 格好いいし突然現れた女性騎士がお姉さんだと知ってドキドキするみたいな年相応の可愛いところもあってすごっくチャーミングなんです! 騒動を巻き起こすお姉さんの尻拭いでいつも貧乏くじを引くんだけどそのたびに健気に立ち向かっていく姿がいじらしくてもうキュンとしちゃうんですよ~! あぁ、私もあの物語のように助けたり助けられたりしたい! ていうか美人な騎士のお姉さん欲し~!」
キラキラした瞳で一気に喋り通したソールーナである。
ソールーナの勢いに押されながら、フィメリアは曖昧な笑みを浮かべた。
「そ、そうなの……。つまり恋愛小説の主人公に恋している、ということかしら?」
「はい! マジ恋ラブです! 乙女心です! エルミリオ様って最高なんですよ~! それで挿絵もこれまたよくってですね……」
「ソールーナさんストップ」
と、突然男性の声がソールーナを制した。
見ると、そこにはフィメリアとそっくりな顔をした男性の姿があった。違うのは目の色くらいで、フィメリアが青い瞳なのに対し、この男性は金色の瞳をしている。
彼はユミリオ・アントセルモ。17歳の王子様で、フィメリアの双子の弟である。
ユミリオはその金の双眼を細めてソールーナに苦笑を向けた。
「あなたがその小説のことが大好きだというのは分かりましたが、ほら……姉上をよく見てください。困ってますよ?」
「え?」
だがフィメリアは一点の曇もないにっこり笑顔で弟を見上げたのだった。
「そんなことないわよ、ユミリオ。ソールーナがそこまでいう物語ですもの、私も読んでみたいな、なんて思いながらお話を伺っていましたのよ」
その言葉にぱあっと輝く笑顔を向けるソールーナである。
「ほんとですか!? じゃあこんど本をお貸ししますねっ!」
「んんっ……、それより姉上」
ユミリオが焦ったように咳払いした。
「これは少々まずいことになりましたね」
「あら、そうかしら? ソールーナさんは見事に私の代わりをしてくれたわ。これ以上の適任はいないわよ」
「ソールーナさんは……、誓いのキスをしていません」
「まさか。結婚したのよ? さすがに誓いのキスくらいしたわよね。……そうよね、ソールーナ?」
「うっ。なんでそのこと知ってるんですか、ユミリオ様……」
「僕にも情報網というのがありますのでね」
「えっ、ちょっと……本当なのソールーナ!?」
「いえ、一応しましたけれども……」
ソールーナの笑顔が固まり、それを引き継ぐ形でユミリオが首を振った。
「仮面越しのキスなど誓いのキスにはなりませんよ」
「……え? まさか、そんなことあるはずが……仮面くらい取るでしょう? 神様の御前なのよ?」
ソールーナは真剣な顔でフィメリアを見つめる。
「……私はリュクレス様の素顔を見たことがありません。それが答えです」
「うそ……」
「そういうことです。確かに書類上の婚姻は結ばれましたが、誓いのキスはしていません。『神が見届けていない結婚は無効だ』と言い張られる危険性がある、ということです」
「……」
ユミリオの言葉に黙るフィメリア。
「……い、いえ、でもそれはさすがに。書類上はきちんとした夫婦なのですから……」
カタチだけとはいえ、双方納得ずくの夫婦なのである。
だがユミリオは指で×を作った。
「法的根拠のことを言っているのではないのですよ。リュクレスが言い逃れる隙があるかないか、というのが問題なんです。相手は姉上に求婚してきたような常識をわきまえない男ですからね。ですからやはり、誓いのキスは直にしていいただきたいんです」
「……そうね……」
はぁ、とため息をつくフィメリア。
一方ソールーナは、ん? と首を傾げた。ユミリオの言葉に気になる文言が入り込んでいたのに気づいたのだ。
「すみません、ユミリオ様」
「なんですか?」
「関係ない話かもしれませんが、リュクレス様が姫様に求婚したってどういうことなんですか? その、リュクレス様は私の夫のはずですが……書類上は、ですが」
「……え?」
「ソールーナさん、きみは……」
高貴なる双子は目を点にしてソールーナを見た。
「ソールーナさんこそなんでこのことを知らないんですか?」
「エルミリオ様……?」
「はい! エルミリオ・アルステラ様こそ、私が理想とする男性なのです!!」
「……ええと、ごめんなさい。それはどなたかしら」
首を傾げるフィメリアに向かって、ソールーナはここぞとばかりに早口で説明し始めた。
「『姉騎士と僕の微妙な関係』の主人公のエルミリオ様です! 格好いいし突然現れた女性騎士がお姉さんだと知ってドキドキするみたいな年相応の可愛いところもあってすごっくチャーミングなんです! 騒動を巻き起こすお姉さんの尻拭いでいつも貧乏くじを引くんだけどそのたびに健気に立ち向かっていく姿がいじらしくてもうキュンとしちゃうんですよ~! あぁ、私もあの物語のように助けたり助けられたりしたい! ていうか美人な騎士のお姉さん欲し~!」
キラキラした瞳で一気に喋り通したソールーナである。
ソールーナの勢いに押されながら、フィメリアは曖昧な笑みを浮かべた。
「そ、そうなの……。つまり恋愛小説の主人公に恋している、ということかしら?」
「はい! マジ恋ラブです! 乙女心です! エルミリオ様って最高なんですよ~! それで挿絵もこれまたよくってですね……」
「ソールーナさんストップ」
と、突然男性の声がソールーナを制した。
見ると、そこにはフィメリアとそっくりな顔をした男性の姿があった。違うのは目の色くらいで、フィメリアが青い瞳なのに対し、この男性は金色の瞳をしている。
彼はユミリオ・アントセルモ。17歳の王子様で、フィメリアの双子の弟である。
ユミリオはその金の双眼を細めてソールーナに苦笑を向けた。
「あなたがその小説のことが大好きだというのは分かりましたが、ほら……姉上をよく見てください。困ってますよ?」
「え?」
だがフィメリアは一点の曇もないにっこり笑顔で弟を見上げたのだった。
「そんなことないわよ、ユミリオ。ソールーナがそこまでいう物語ですもの、私も読んでみたいな、なんて思いながらお話を伺っていましたのよ」
その言葉にぱあっと輝く笑顔を向けるソールーナである。
「ほんとですか!? じゃあこんど本をお貸ししますねっ!」
「んんっ……、それより姉上」
ユミリオが焦ったように咳払いした。
「これは少々まずいことになりましたね」
「あら、そうかしら? ソールーナさんは見事に私の代わりをしてくれたわ。これ以上の適任はいないわよ」
「ソールーナさんは……、誓いのキスをしていません」
「まさか。結婚したのよ? さすがに誓いのキスくらいしたわよね。……そうよね、ソールーナ?」
「うっ。なんでそのこと知ってるんですか、ユミリオ様……」
「僕にも情報網というのがありますのでね」
「えっ、ちょっと……本当なのソールーナ!?」
「いえ、一応しましたけれども……」
ソールーナの笑顔が固まり、それを引き継ぐ形でユミリオが首を振った。
「仮面越しのキスなど誓いのキスにはなりませんよ」
「……え? まさか、そんなことあるはずが……仮面くらい取るでしょう? 神様の御前なのよ?」
ソールーナは真剣な顔でフィメリアを見つめる。
「……私はリュクレス様の素顔を見たことがありません。それが答えです」
「うそ……」
「そういうことです。確かに書類上の婚姻は結ばれましたが、誓いのキスはしていません。『神が見届けていない結婚は無効だ』と言い張られる危険性がある、ということです」
「……」
ユミリオの言葉に黙るフィメリア。
「……い、いえ、でもそれはさすがに。書類上はきちんとした夫婦なのですから……」
カタチだけとはいえ、双方納得ずくの夫婦なのである。
だがユミリオは指で×を作った。
「法的根拠のことを言っているのではないのですよ。リュクレスが言い逃れる隙があるかないか、というのが問題なんです。相手は姉上に求婚してきたような常識をわきまえない男ですからね。ですからやはり、誓いのキスは直にしていいただきたいんです」
「……そうね……」
はぁ、とため息をつくフィメリア。
一方ソールーナは、ん? と首を傾げた。ユミリオの言葉に気になる文言が入り込んでいたのに気づいたのだ。
「すみません、ユミリオ様」
「なんですか?」
「関係ない話かもしれませんが、リュクレス様が姫様に求婚したってどういうことなんですか? その、リュクレス様は私の夫のはずですが……書類上は、ですが」
「……え?」
「ソールーナさん、きみは……」
高貴なる双子は目を点にしてソールーナを見た。
「ソールーナさんこそなんでこのことを知らないんですか?」
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