「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント

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第27話 神とのゲーム(リュクレス視点)

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 窓から差し込む朝日を浴びながら、リュクレスは目を覚ました。

 隣ではソールーナがまだ眠っている。

(こうして見ると、やっぱり可愛いな)

 すやすやと寝息をたてて眠る無防備な姿は、まるで無垢な子どものようだった。

 昨日あれだけ騒いでいたのに、こうして穏やかに寝ている姿を見るとやはり美少女である。少女とはいっても人妻だし、年齢は確か19歳だが。リュクレスより一つ年下の妻ということになる。

「……」

 またあの寝言を言わないかな……、とリュクレスは思わず耳を澄ませた。

 だがソールーナはすやすやと寝息を立てるだけで、なにも言わない。

『リュクレス様、大好き』

 彼女に愛されたら……、あの寝言の通りのことを起きている時にも言われたら。

 ……たまらないなぁ、と思う。

(ソールーナは俺の嫁、か)

 仮面の下で微笑むリュクレス。誰にも見られないその微笑みは、照れたような困ったような不思議なもの。

 リュクレスは恋愛関係においては常に受け身だった。仮面をつける前のことになるが、常に誰かが必ず自分に好意を寄せていたから。だから、リュクレスは自分から誰かを好きになったことなどないのだ。

 フィメリア王女のことは――自分でもよく分からない。

 ただ、とにかく奴の愛を得なければならないのは事実だ。

 素顔を見せず女性の愛を得ろ、とは。なんと難易度の高いことだろうか。受け身人生だったリュクレスには、どうしたらいいのか分からない。

 最大の武器が使えず困っていたところ、復活した邪竜がフィメリア王女を襲う場面に遭遇した。

(まぁ、なんにせよ助けられて良かった。あのままだと誰かが死んでいただろうし)

 偶然リュクレスが居合わせたため死人も出なかったが、もしいなかったら犠牲者が出ていたはずだ。……その犠牲がフィメリア王女であった可能性だってあるのだ。

(伝説級の邪竜と戦うことになるとは思わなかったが……、まぁ俺にとってはどうってことない程度の敵だったな)

 神与の英雄力はそれほどまでに凄まじいのである。

 この力をみすみす失うなどしたくない。これは、リュクレスが生きていくための力なのだ。
 さりとて生来のイケメン顔を人々から隠し続けるのももったいない。
 フィメリアの愛を得ればその二つが一挙に手に入るというのに……。

(世の中、うまくはいかないものだ)

 神――つまりは世の中のことわりを司るモノを親とした賭け事ゲームである。
 リュクレスに分が悪いのは当たり前なのかもしれない。

 せっかく邪竜退治をして王女に貸しを作ったというのに、王家側はなんのかんのといってリュクレスを厄介払いしようとしてきたのだ。

 他の令嬢を褒美としてとらせるのでそれでよしとせよ、さもなくば国外へと追放す――とまあ、意訳としてこんな通知をいただいてしまったのである。

 しかも、それを拒否したら暗殺されるような気配すらあった。



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