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第33話 答えは大富豪で決めたいと思う
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キスした以降の妙な感覚――。
それをリュクレスは感じているという。ソールーナにはまったくそんな感覚はないのだが。
「あの……つまりそれって、私はリュクレス様にとって特別、ということでしょうか?」
「分からん。ただ、俺の英雄力は神が与えたものだ。あの花園でのキスが教会でのキスのやり直しになったのだとしたら、――神に捧げられたキスになったのだとしたら。同じく神に関与するものならば、あのキスで何らかの作用が起こったとしてもおかしくない。だから、俺はこれが加護なんだと思った。俺がお前に加護を与えたのだと。まっ、下世話な言い方をするなら唾をつけたってことだな」
「最っ低」
「ははは、なんとでもいえ。お前はもう俺のもんだ」
思わぬ発言に、ソールーナはまたドキリとしてしまった。
「だっ、誰があなたものなもんですか。キスしたくらいで調子に乗らないでください!」
「いいだろ別に。夫婦なんだから」
「カタチだけの夫婦です!」
「カタチだけじゃなくしてやろうか?」
ごそり、とこちらに近寄ってくるリュクレス。
「なっ……」
ソールーナはその雰囲気に飲まれて、ベッドの上で後ずさりした。
「ちょ、ちょっと待ってくださ……」
「待たねぇよ」
「くっ……」
もしかしたらヤバいのでは? と思う。
いや、いつこういう時が来てもおかしくはなかったのだ。毎日同じベッドで寝ている夫婦なのだから……。
「お前、俺のこと本当はどう思ってるんだ? 俺のこと……」
彼はソールーナの腕を取ると、覆い被さるようにしてソールーナを見つめてくる。
「好きなのか?」
「そっ、そんっ、そんなことは……っ」
「そんなことは、ない?」
囁くような、甘い声でそんなことを聞いてくる。
「………………っ」
心臓はバクバクいってるし、顔は熱いし。
どうしていいのか分からない。
そのときソールーナの頭に閃きが宿った。
「答えは大富豪で決めましょう!」
「は?」
「私、ユミリオ様に大富豪習おうと思ってるんです。それで勝負しましょう!」
「いや……、え?」
きょとんとするリュクレス。
「習う……、大富豪を?」
「はい」
「お前……、とりあえずお前、大富豪できなかったのか」
「悲しいことに、そうなりますね」
「で、ユミリオに習う、と」
「はい。革命返しにご期待ください」
「いや……、大富豪ってそもそも二人でするゲームじゃない……いや二人ルールってのがあるか。いや、そうじゃない、そうじゃない……」
仮面のなかの空色の瞳がぱちくりし、そして……。
「あー……、興がそれた」
どさり、とリュクレスはベッドに寝転がった。
「大富豪ぐらい、俺が教えてやったのに」
「勝負相手に勝負事なんか教わりませんよ」
「………………はぁ」
リュクレスは深くため息をついた。
「お前には早く俺の素顔を見せたいもんだぜ」
「え、あの」
そして、彼は灯りを消して瞳を閉じる。
「おやすみ」
「あ、お休みなさい」
それだけだ。
リュクレスの息づかいは感じるが、ベッドの端と端に寝ているから手も届かない。ソールーナも目を閉じた。
しかし、なかなか寝付けなかった。
今のは何だったのだろう。
リュクレスはなにをしようとして……、いや、つまりは、夫婦の契りを交わそうとしたのだ。
なんだかよく分からないが、撃退してしまったが……。
(もしかしてリュクレス様って、私のこと好きなの……?)
そういえばやたらと素顔を見せようとするのもそういうことなのかもしれない。
素顔を見ればソールーナは自分に惚れる、と彼は信じきっているのだから。
白い結婚、カタチだけの夫婦。
そのはずだった、仮面の騎士。
彼は、いったいソールーナのことをどう思っているのだろうか。
……そのことを、初めて意識した。
(なんにせよっ、私にはエルミリオ様がいるんだし。リュクレス様なんてどうでもいいのよっ)
エルミリオ様の夢が見られるといいなぁ、なんて思いながらソールーナは寝たのだが、夢に見たのはリュクレスだった。
そして夢の中でリュクレスは仮面を取り、その美形な素顔を見せてくれた気がする。
それをリュクレスは感じているという。ソールーナにはまったくそんな感覚はないのだが。
「あの……つまりそれって、私はリュクレス様にとって特別、ということでしょうか?」
「分からん。ただ、俺の英雄力は神が与えたものだ。あの花園でのキスが教会でのキスのやり直しになったのだとしたら、――神に捧げられたキスになったのだとしたら。同じく神に関与するものならば、あのキスで何らかの作用が起こったとしてもおかしくない。だから、俺はこれが加護なんだと思った。俺がお前に加護を与えたのだと。まっ、下世話な言い方をするなら唾をつけたってことだな」
「最っ低」
「ははは、なんとでもいえ。お前はもう俺のもんだ」
思わぬ発言に、ソールーナはまたドキリとしてしまった。
「だっ、誰があなたものなもんですか。キスしたくらいで調子に乗らないでください!」
「いいだろ別に。夫婦なんだから」
「カタチだけの夫婦です!」
「カタチだけじゃなくしてやろうか?」
ごそり、とこちらに近寄ってくるリュクレス。
「なっ……」
ソールーナはその雰囲気に飲まれて、ベッドの上で後ずさりした。
「ちょ、ちょっと待ってくださ……」
「待たねぇよ」
「くっ……」
もしかしたらヤバいのでは? と思う。
いや、いつこういう時が来てもおかしくはなかったのだ。毎日同じベッドで寝ている夫婦なのだから……。
「お前、俺のこと本当はどう思ってるんだ? 俺のこと……」
彼はソールーナの腕を取ると、覆い被さるようにしてソールーナを見つめてくる。
「好きなのか?」
「そっ、そんっ、そんなことは……っ」
「そんなことは、ない?」
囁くような、甘い声でそんなことを聞いてくる。
「………………っ」
心臓はバクバクいってるし、顔は熱いし。
どうしていいのか分からない。
そのときソールーナの頭に閃きが宿った。
「答えは大富豪で決めましょう!」
「は?」
「私、ユミリオ様に大富豪習おうと思ってるんです。それで勝負しましょう!」
「いや……、え?」
きょとんとするリュクレス。
「習う……、大富豪を?」
「はい」
「お前……、とりあえずお前、大富豪できなかったのか」
「悲しいことに、そうなりますね」
「で、ユミリオに習う、と」
「はい。革命返しにご期待ください」
「いや……、大富豪ってそもそも二人でするゲームじゃない……いや二人ルールってのがあるか。いや、そうじゃない、そうじゃない……」
仮面のなかの空色の瞳がぱちくりし、そして……。
「あー……、興がそれた」
どさり、とリュクレスはベッドに寝転がった。
「大富豪ぐらい、俺が教えてやったのに」
「勝負相手に勝負事なんか教わりませんよ」
「………………はぁ」
リュクレスは深くため息をついた。
「お前には早く俺の素顔を見せたいもんだぜ」
「え、あの」
そして、彼は灯りを消して瞳を閉じる。
「おやすみ」
「あ、お休みなさい」
それだけだ。
リュクレスの息づかいは感じるが、ベッドの端と端に寝ているから手も届かない。ソールーナも目を閉じた。
しかし、なかなか寝付けなかった。
今のは何だったのだろう。
リュクレスはなにをしようとして……、いや、つまりは、夫婦の契りを交わそうとしたのだ。
なんだかよく分からないが、撃退してしまったが……。
(もしかしてリュクレス様って、私のこと好きなの……?)
そういえばやたらと素顔を見せようとするのもそういうことなのかもしれない。
素顔を見ればソールーナは自分に惚れる、と彼は信じきっているのだから。
白い結婚、カタチだけの夫婦。
そのはずだった、仮面の騎士。
彼は、いったいソールーナのことをどう思っているのだろうか。
……そのことを、初めて意識した。
(なんにせよっ、私にはエルミリオ様がいるんだし。リュクレス様なんてどうでもいいのよっ)
エルミリオ様の夢が見られるといいなぁ、なんて思いながらソールーナは寝たのだが、夢に見たのはリュクレスだった。
そして夢の中でリュクレスは仮面を取り、その美形な素顔を見せてくれた気がする。
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