「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント

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第40話 作られた修羅場

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「別にいいけどさ、あんたらがどれだけ親しかろうが」

 リュクレスが苦々しげな声で言う。

「俺が本当に結婚したいのはフィメリア王女だからな。だから別にそいつがどうなろうと知ったこっちゃないね」

「……っ」

 確かにそうなのだが……。
 ソールーナの胸中に忸怩たる思いが広がる。
 白い結婚、カタチだけの夫婦――その言葉が頭の中で響き渡る。

 リュクレスは女神とのゲームに勝つために、聖女姫フィメリアの愛を獲得しなければならない立場にあるのだ。
 それはリュクレスにとっての最優先事項だし、ソールーナも知っている情報である。

 だが、しかし。

(今、この場で、そんなハッキリ言わなくてもいいのに……)

 何故だか知らないが、胸の奥から悲しみが溢れてくるのだ。

 ……少しは打ち解けられたと、思っていたのに。

「あなたには指一本だって触れさせはしませんよ」

 リュクレスの言葉に、掴んでいた腰を離してユミリオが宣言した。

「もし姉上に触れようというのなら、僕があなたを排除させていただきます。……姉上はご婚約なさっているのですよ、それをわきまえてもらいたいものですね」

「ああ、その話か。あんたこそいいのかよ? 王女様の婚約者って相当な女泣かせだっていうじゃないか。あんたの大事な姉ちゃんがそんな男のモノになって、あんたは満足なのかよ?」

「……それについては僕の方でも考えがありますので、君が首を突っ込むことではありません」

「あんたこそ俺の妻に手ぇ出してるじゃないか。お互い様だろ」

「リュクレス様、あのですね……」

 さすがにこれ以上口喧嘩させるわけにはいかない。
 これはただの演技であり、人工的に作られた修羅場に過ぎないのだから。……なのに王子であるユミリオと、これ以上仲を悪くさせるわけにはいかない。

「分かってるよ」

 リュクレスはあからさまに不機嫌そうにため息をついた。

「……そうだな。お前に迷惑かかるのは本意じゃない。あんたもだろ、王子様。これ以上はやめといたほうがいい」

「なんの話か分かりませんね」

「そいつが嫌がってるの、分からないのか?」

「嫌がる?」

 意外そうに問い返すユミリオに、リュクレスは頷いて見せた。

「思いっきり腰が引けてるし、不安そうな顔してるじゃないか」

「ふむ……」

 ユミリオは超至近距離からソールーナの顔を覗き込んでくる。
 自称ではないイケメン顔の思わぬ接近にドキドキしてしまうソールーナだが……。

「……確かに、顔色があまり優れませんね。こういうのは嫌ですか?」

 ……つまり、こうして嫉妬を煽る作戦は嫌か、と。そう問いたいのだろう。
 ソールーナは少し躊躇したあと、首を縦に振った。

「正直、こういうのは性に合わないです。私はじっくり絵を描いているほうが幸せですから。そういう……、個人プレイが好きです」

「なるほど」

 とユミリオは頷くと、いいことを聞いたとばかりにっこり微笑んではないか。

「では僕の部屋に行きましょう、ソールーナさん」

「へ?」

 今度はなにをするつもりなのだろうか……。



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