「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント

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第50話 モデルをする王子様

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「ソールーナあああああああ!!!!」

 リュクレスの叫び声が聞こえ、寝室のドアが音を立てて蹴破られたその時も。ソールーナはヌードモデルに集中し続けていた。

 そう、王子がヌードモデルだ。

 最初は普通に応接室でデッサンしていたのだが……、いつの間にやらこうなっていたのである。場所も何故か夫婦の寝室に移っていた。何故なのか、ソールーナはよく覚えていない。
 絵を描くため集中しはじめると周りが見えなくなるのだ。

「くっ、やはりな……っ!」

 リュクレスは腰だめに剣を構え、横凪に剣を振り抜く!

 鋭い剣風が薙ぎ、寝そべった(大事なところはシーツで隠している)ユミリオの首に当たりそうになり――ユミリオは手に持っていたトランプをさっと手放し手首を振った。

「!」

 くわえた薔薇の花もそのままに、手のひらに光が収斂し、銀の杖が現れる。

 それを膝立ちで構えつつ、ユミリオは金色の瞳でリュクレスを見据えた。

「くひをねりゃうのひゃへへもらへまふはね」

「は? なに言ってるのか分からんぞ!」

「……」

 ユミリオは薔薇の花を口から取ると、言い直した。

「首を狙うのやめてもらえますかね? と言ったんですよ。あやうく死ぬところだったじゃないですか」

「慈悲だ。お前が素直に首を差し出せば一撃で仕留めてやる」

「いや、だからなんで僕の命を狙うんですか」

「その格好でそんなことを言うか? この間男が!!!!」

 剣風で下半身を隠していたシーツが飛び去り、すでにオールヌードのモデルになっている。

 だが大事なところを改めて隠す余裕はユミリオにはなかった。
 ユミリオは魔方陣を上下左右に展開して備えつつ、ちらりとソールーナに視線をやる。

「……ソールーナさん? あなたのご主人は明かな誤解をしていますよ。あなたから誤解だと説明してくれませんか?」

「………………」

「ソールーナさん?」

「………………」

 ソールーナはシャッシャッとスケッチに夢中である。

「ソー――」

「問答無用!」

 斬りかかるリュクレス! しかしユミリオを包み込んだ魔方陣によって剣は弾かれる。

「くっ、こしゃくな真似を……! 間男の分際で!!」

「だからこれはただのヌードモデルですってば。大富豪の勝負で決まったんです」

「なに?」

「僕、ソールーナさんに大富豪のルールを教えたでしょう? だから実践ということで二人用ルールで戦ってみたんですよ。何かを掛けた方が面白いからということで、勝者の言うことをなんでもきく、という他愛もない景品を作ってみたんです」

「そんな危険なことを……!」

「それでソールーナさんが勝った。ソールーナさんの願いは僕がヌードモデルになることでした。ただそれだけです」

「……ま、まぁソールーナのことだからヌードモデルに関してはあり得る話だ。だが大富豪初心者のソールーナが勝つか? 貴様、自分の裸を見せたくてわざと負けたのではあるまいな?」

「僕にだって叶えたい願いくらいありますよ。本気で勝負しました。でもソールーナさんが勝った。大富豪はカード運に左右されるゲームですからたまたまソールーナさんにいいカードが行ってたんです。ビギナーズラックというやつですね」

「ちなみに、お前の願いはなんだったんだ?」

「…………………………」

 押し黙ってしまったユミリオの顔が、みるみる赤くなっていく。



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