『魔導書』に転生した俺と、君との日々。

風城国子智

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第六章 西からの風

6.5 状況の確認と食糧調達

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 次の日。

 明るくなってから、あらためて、一人と一冊が置かれている状況を把握するために洞窟の外に出る。

[うーん]

 見えるのは、昨夕よりは穏やかに打ち寄せる波と、昨日と同じ黒い砂浜。砂浜を真ん中に置いた海の反対側にあるのは、朝の光でもやはり「登れそうにない」と判断するしかない垂直で高い崖。崖の上には緑色が見えるが、あの植物は、現時点でも利用不能。

 砂浜の端から脱出することは可能だろうか? 首を大きく回して見えた、砂浜の両端で波に洗われている岩の列の鋭い影に唇を横に引き結ぶ。あの岩を伝い行くことも、不可能。岩の横、水面に隠れている部分も、波が荒くて見通すことができない。秋分祭の頃だから、波の間にクラゲが潜んでいる可能性もある。サシャは北都で泳ぐ練習をしたが、それは、穏やかな湖でのこと。波に揺れる海を泳いで渡ることは、サシャには不可能。どう考えても、この場所から出る術を考えつくことができない。途方に暮れたトールの耳に、サシャの深い溜め息が響いた。

「海、に、魚、いるかな?」

 黒い砂を洗う波に、サシャが首を傾げる。

 幸いなことに、真水は、ある。崖の上から落ちて砂浜に吸い込まれている細い水の線に、ゆっくりと微笑む。南苑なんえんでサシャが常に肩にかけていた鞄は、これも幸いなことにサシャの側に落ちていた。鞄の中身も、全て無事に入っていたが、食料は、サシャとメイネ教授二人分の昼食と夕食にする予定だった大きめのパンとチーズのみ。ここを脱出するまで、その食料を保たせなければ。

「釣り竿、作れば、魚、捕れるよね」

 だが。サシャの言葉に、小さく唸る。幼い頃、祖父や従兄弟達に連れられて、瀬戸内の海に何度か釣りに行った。だが、トールの竿には魚が掛かった覚えがない。祖父は、無造作な動作で簡単に魚を釣ってみせていたのに。思い出を、トールは慌てて心の奥底に仕舞った。こんな自分がいるのに、魚が釣れるのか。いや、やってみないと分からない。細めの流木を手にしたサシャに、トールは大きく頷いてみせた。

 鞄の中に入っていた、サシャの出身地である北辺ほくへんよりも更に北にある『冬の国ふゆのくに』の商人タトゥからもらった短刀で流木を削り、鞄の中の携帯裁縫箱から取り出した糸と、曲げた針で、即席の釣り竿を作る。掘った砂から飛び出してきた貝を餌にすると、サシャは波の間に釣り針を投げ入れた。

「……うーん」

 やはり、と言うべきか。幾ら待っても、魚が釣れる気配は無い。

[貝を、蒸して食べた方が良いかも]

 砂浜に座り込み、膝を抱えてしまったサシャに、トールは慰めの代わりに代案を背表紙に並べた。

 その時。
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