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第七章 東の理
7.8 目的地に、辿り着く
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あっという間に、街の中心から少し南に離れた場所に建っているずんぐりとした塔のすぐ側まで辿り着く。
この辺りは、帝都にあったグスタフ教授の屋敷の周りに少しだけ似ている。トールがそんなことを考えている間に、『団長』と呼ばれていた黒鎧が操る馬は細い裏道に入り込み、おそらく馬車が出入りするためのものであろう幅のある入り口から質素な中庭へと入っていった。
「グスタフ、いるか?」
馬を下りた黒鎧がサシャの無事を確かめる前に、中庭に面した小さな回廊から見知った堅牢な影が現れる。サシャが帝都でお世話になった、ヴィリバルトの従祖父でもあるグスタフ教授。
突然の来訪者に対し、グスタフ教授はさすがに落ち着いていた。
「何の用だ」
普段通りの声で、それでもその蒼い瞳で鋭く黒鎧を見つめるグスタフに、黒鎧は腕の中で眠るサシャを示し、そしてサシャを受け取ろうとするグスタフを無視して回廊の端にある階段へと向かう。どうやら、理由はよく分からないが、『団長』と呼ばれていた黒鎧は、サシャが落ち着く先をしっかりと確かめておかないと気が済まないようだ。
しぶしぶ、という態度が端々に見えるグスタフに案内されたサシャの部屋は、屋敷の二階にある小さな一人部屋。大きなベッドと大きな机が部屋の大部分を占領している、細長い硝子窓が付いている部屋に、トールはほっと息を吐いた。この部屋なら、サシャの勉学も捗るだろう。
「後で、セルジュに湯を持って来させよう」
黒鎧によって丁寧にベッドに寝かせられたところで目を覚ましたサシャの白い髪を、グスタフ教授が優しく撫でる。
「で、貴様はいつまでここにいるつもりだ?」
だが。いつまでも居座りそうな黒鎧の方へと向き直ったグスタフは、確かに、静かな怒りに満ちていた。
「さっさと東都へ戻って、為政者としての責務を果たしたらどうだ?」
グスタフが放った言葉に、黒鎧が肩を竦める。
「責務なら、王配殿下と叔父上が何とかしてるさ」
「リーン!」
皮肉が籠もった、しかしそれでも落ち着いた黒鎧の口調は、しかし次のグスタフの言葉で豹変した。
「その名前で俺を呼ぶなっ!」
グスタフの一言で、黒鎧の顔が真っ赤に染まる。
グスタフに手を上げかけた黒鎧は、しかしすぐにくるりとグスタフに背を向け、疾風のようにサシャの部屋を去って行った。
「待て! まだ話は終わっていない!」
その後を、グスタフが追う。
後に残ったのは、話に付いていけない呆然とした一人と一冊。
この辺りは、帝都にあったグスタフ教授の屋敷の周りに少しだけ似ている。トールがそんなことを考えている間に、『団長』と呼ばれていた黒鎧が操る馬は細い裏道に入り込み、おそらく馬車が出入りするためのものであろう幅のある入り口から質素な中庭へと入っていった。
「グスタフ、いるか?」
馬を下りた黒鎧がサシャの無事を確かめる前に、中庭に面した小さな回廊から見知った堅牢な影が現れる。サシャが帝都でお世話になった、ヴィリバルトの従祖父でもあるグスタフ教授。
突然の来訪者に対し、グスタフ教授はさすがに落ち着いていた。
「何の用だ」
普段通りの声で、それでもその蒼い瞳で鋭く黒鎧を見つめるグスタフに、黒鎧は腕の中で眠るサシャを示し、そしてサシャを受け取ろうとするグスタフを無視して回廊の端にある階段へと向かう。どうやら、理由はよく分からないが、『団長』と呼ばれていた黒鎧は、サシャが落ち着く先をしっかりと確かめておかないと気が済まないようだ。
しぶしぶ、という態度が端々に見えるグスタフに案内されたサシャの部屋は、屋敷の二階にある小さな一人部屋。大きなベッドと大きな机が部屋の大部分を占領している、細長い硝子窓が付いている部屋に、トールはほっと息を吐いた。この部屋なら、サシャの勉学も捗るだろう。
「後で、セルジュに湯を持って来させよう」
黒鎧によって丁寧にベッドに寝かせられたところで目を覚ましたサシャの白い髪を、グスタフ教授が優しく撫でる。
「で、貴様はいつまでここにいるつもりだ?」
だが。いつまでも居座りそうな黒鎧の方へと向き直ったグスタフは、確かに、静かな怒りに満ちていた。
「さっさと東都へ戻って、為政者としての責務を果たしたらどうだ?」
グスタフが放った言葉に、黒鎧が肩を竦める。
「責務なら、王配殿下と叔父上が何とかしてるさ」
「リーン!」
皮肉が籠もった、しかしそれでも落ち着いた黒鎧の口調は、しかし次のグスタフの言葉で豹変した。
「その名前で俺を呼ぶなっ!」
グスタフの一言で、黒鎧の顔が真っ赤に染まる。
グスタフに手を上げかけた黒鎧は、しかしすぐにくるりとグスタフに背を向け、疾風のようにサシャの部屋を去って行った。
「待て! まだ話は終わっていない!」
その後を、グスタフが追う。
後に残ったのは、話に付いていけない呆然とした一人と一冊。
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