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第七章 東の理
7.40 アラン教授の詰問②
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「サシャは、こちらで引き取る」
「断ります、アラン」
リーンハルトの身体から一歩離れたアラン教授に、リーンハルトが不敵に笑う。
「……」
そのリーンハルトを見つめたアランは、サシャの方を向き、笑ったままのリーンハルトを鋭く睨んだ。
「ユドークス教授に引き取られて、『象牙の塔』で自由七科を修めていたときに、図書館にあった古代帝国の魔法に関する本は少しだけ読んだ」
リーンハルトを睨んだままのアラン教授の言葉に、「まさか」という思いが募る。一人と一冊が『象牙の塔』で読んだ、リーン推薦の『魔法』の本には、他人の身体を乗っ取る術も書かれていた。その『魔法』を使い、リーンは、リーンハルトに首を刎ねられるその刹那、リーンハルトの身体に乗り移った。粒熱で死にかけた時に、粒熱が軽く済んでいたリーンハルトの双子の弟の身体を乗っ取ったように。その結果が、現在のリーンハルト。
「自分で実験して何も起こらなかったから、『魔法』は古代帝国と共に滅んだと思っていたが」
「甘いですね、アラン」
推測に震えるトールの耳に、普段の口調とは異なるリーンハルトの声が響く。
「使える者は、もう、南苑の王族内にもいませんが」
「サシャに契りを強要した理由は、何だ?」
話の向きを変えたアランに、リーンハルトは再び哄笑を浮かべた。
「他人の身体を乗っ取る魔法は、身体と魂との相性が良くても長続きはしないのですよ」
息子であるディートハルトの身体は、もうそろそろ限界。先王の弟と契りを結んで子供を得る作戦も、相手に断られて挫折した。同じ南苑の王族からリーンハルトの配偶者に選ばれたトーンとの契りには成功したが、二人の行動を見咎めたユリアンの所為で、リーンハルトはリーンの子を宿していたトーンを一刀で斬り捨てた。
「この子を初めて見た時から、この子との子供が欲しかった。それだけですよ」
「貴様の思惑は、成就しない、リーン」
顔に貼り付いたような笑みを浮かべながらサシャの方へと近づいたリーンハルトの手を、アランが叩き落とす。
「契りを強要された者に子供は宿らない。……貴様にも」
祈祷書の記述を忘れたのか。そこまで口にしたアランの前で、リーンハルトの身体は再びあらぬ方向に傾いだ。
「……アラン」
傾いたまま椅子の上に落ちたリーンハルトが、虚ろな瞳でアランを見上げる。
「リーンハルト」
元に、戻った? 息をのむトールの前で、リーンハルトはこの騒ぎにも微動だにしないサシャを見つめ、そして再びアランの方へと視線を戻した。
「サシャは、明日、渡す」
唐突なリーンハルトの申し出に、アラン教授の唇が横に伸びる。
「……分かった」
「済まない」
サシャの額に手を置いたアランは、躊躇いを見せながら、リーンハルトの部屋を去って行った。
静寂が、戻る。
項垂れたままのリーンハルトと、身動きを示さないサシャを交互に見やるトールの視界は、再び不意に、暗くなった。
「断ります、アラン」
リーンハルトの身体から一歩離れたアラン教授に、リーンハルトが不敵に笑う。
「……」
そのリーンハルトを見つめたアランは、サシャの方を向き、笑ったままのリーンハルトを鋭く睨んだ。
「ユドークス教授に引き取られて、『象牙の塔』で自由七科を修めていたときに、図書館にあった古代帝国の魔法に関する本は少しだけ読んだ」
リーンハルトを睨んだままのアラン教授の言葉に、「まさか」という思いが募る。一人と一冊が『象牙の塔』で読んだ、リーン推薦の『魔法』の本には、他人の身体を乗っ取る術も書かれていた。その『魔法』を使い、リーンは、リーンハルトに首を刎ねられるその刹那、リーンハルトの身体に乗り移った。粒熱で死にかけた時に、粒熱が軽く済んでいたリーンハルトの双子の弟の身体を乗っ取ったように。その結果が、現在のリーンハルト。
「自分で実験して何も起こらなかったから、『魔法』は古代帝国と共に滅んだと思っていたが」
「甘いですね、アラン」
推測に震えるトールの耳に、普段の口調とは異なるリーンハルトの声が響く。
「使える者は、もう、南苑の王族内にもいませんが」
「サシャに契りを強要した理由は、何だ?」
話の向きを変えたアランに、リーンハルトは再び哄笑を浮かべた。
「他人の身体を乗っ取る魔法は、身体と魂との相性が良くても長続きはしないのですよ」
息子であるディートハルトの身体は、もうそろそろ限界。先王の弟と契りを結んで子供を得る作戦も、相手に断られて挫折した。同じ南苑の王族からリーンハルトの配偶者に選ばれたトーンとの契りには成功したが、二人の行動を見咎めたユリアンの所為で、リーンハルトはリーンの子を宿していたトーンを一刀で斬り捨てた。
「この子を初めて見た時から、この子との子供が欲しかった。それだけですよ」
「貴様の思惑は、成就しない、リーン」
顔に貼り付いたような笑みを浮かべながらサシャの方へと近づいたリーンハルトの手を、アランが叩き落とす。
「契りを強要された者に子供は宿らない。……貴様にも」
祈祷書の記述を忘れたのか。そこまで口にしたアランの前で、リーンハルトの身体は再びあらぬ方向に傾いだ。
「……アラン」
傾いたまま椅子の上に落ちたリーンハルトが、虚ろな瞳でアランを見上げる。
「リーンハルト」
元に、戻った? 息をのむトールの前で、リーンハルトはこの騒ぎにも微動だにしないサシャを見つめ、そして再びアランの方へと視線を戻した。
「サシャは、明日、渡す」
唐突なリーンハルトの申し出に、アラン教授の唇が横に伸びる。
「……分かった」
「済まない」
サシャの額に手を置いたアランは、躊躇いを見せながら、リーンハルトの部屋を去って行った。
静寂が、戻る。
項垂れたままのリーンハルトと、身動きを示さないサシャを交互に見やるトールの視界は、再び不意に、暗くなった。
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