求婚されても困ります!~One Night Mistake~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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最終章 面倒、だけどいい

7.待ち伏せ

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「……」

翌朝、ドアノブに手をかけて外の様子をうかがう。
絶対に顔をあわせたくない。
いや、会社に行けば嫌でもあわせなければいけないのはわかっているが。
音も気配もないのを確認し、そーっとドアを開けた。

「麻里恵!」

外が見えると同時に楠木さんと目があい、ドアを閉めようとしたけれど足をねじ込まれる。

「話がしたいんだ!
開けてくれ!」

「やけん、話をすることとかないし!
てか、なに待ち伏せとかしよん!?」

開けようとする彼と閉めようとする私で攻防を続けたが、相手は男。
結局、ドアは開けられ、彼が身体ごと入ってくる。
ベストもネクタイも昨日と替わっていないが、まさかひと晩中待ち伏せしていたとかないと思いたい。

「言いたいことがあるなら、はっきり言え。
黙って怒っていてもなにもわからない」

「……、……」

彼の言うことは正論だけに言い返せない。

「ほら、話せ。
話すまで今日は、ここから出さないからな」

私の腕を掴んだまま、彼がどさりとソファーに座る。
さらに眼鏡の奥からじろりと、私を睨み上げた。
怒っている。
怒らせた自覚はある。
かといって、正直に話せるものでもない。

「なにが不満だ?
友佳子とはもう終わっているから、気にしなくていいと言っただろ?」

平然とそんなことを言う彼に、腹の底でかっと火がつく。

「本当はまだ、未練たらたらっちゃないと?
昨日だって、あんなに仲良しで」

小馬鹿にしながらも、私の声は震えていた。

「あれのどこが、仲がいいんだ?
あいつとは付き合う前も、付き合ってからも、別れてからだって、仲がよかったことなんて一度もない」

だからそれが一周回って仲がいいになるってなんでわからない?
気があう、って自分でも言っていたじゃないか。

「嫌い嫌いも好きのうち、って言うやんか。
いなくなって清々するって、本当は淋しいの隠しとったんやないと?」

「あーもー、だからー、あいつに限ってそんなことはない。
あいつのことを一番知っている僕が言うんだから間違いない」

髪が乱れるなどかまわず、楠木さんはガシガシとあたまを掻いている。

「一番知ってるって、そういうことやないと?」

「わかった!
こういうのは本人がいないところで言うもんじゃないとは思うが、あいつ、同性愛者なんだ!」

「……は?」

膝を叩いて勢いよくあたまを上げ、楠木さんは言い切ったけれど、それはあまりにも苦しい言い訳では?

「あ、間違い。
僕とは寝られたからバイになるのか?」

「……は?」

なんか軽く彼は悩んでいるが、ますますもってわからない。
小長井さんが同性愛者だとかバイだとか。

「別れたとき、『試しに男と付き合ってみたけど、やっぱり可愛い女の子がいいわー』……とか、さっぱりした顔で言われた。
僕は最初からあいつに、弄ばれていたんだ」

苦々しげに楠木さんの顔が歪む。
そのときの屈辱を思いだしているのかもしれない。

「それは……ご愁傷様です」

いまにして思えば昨日、盛んに彼女からアプローチされたような?
いや、彼女の可愛いの基準がまったくわからんが。
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