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第12話 尚一郎と元カノ
4.好きにならなきゃよかった
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「私ひとりの問題じゃないんだ……」
尚一郎との愛を貫いて、自分ひとりが不幸になるのなら自業自得でまだ諦めもつくかもしれない。
それに、尚一郎は何度も、朋香を守ると誓ってくれた。
けれど、達之助の認めない尚一郎との結婚生活を続ければ、明夫の工場がまた倒産の危機に立たされるどころか、家族まで失いかねない。
「結局、尚一郎さんとの結婚は、諸刃の剣だった、ってことだよね……」
尚一郎と結婚することで、工場は守れた上に融資まで受けられた。
しかしこの結婚は達之助の不評を買っている。
「でも、いまさらこんな話をされたって、……引き返せない」
顔をうずめた枕が、こぼれ落ちる涙を吸い取っていく。
万理奈の気持ちが痛いほどわかった。
ずっと、これは契約結婚なんだからと尚一郎なんて好きにならなければよかった。
いまさら、尚一郎と別れるなんてできない。
それほどまでに尚一郎を深く愛していた。
けれど、そうしなければ今度は家族を失うことになる。
もう二度と、事故で和子を失ったときと同じ思いをするのは嫌だ。
身も心もバラバラになってしまいそうで、ひたすら苦しい。
「どうしたらいいのかなんて、わかん、ないっ……」
嗚咽は、枕に消えていく。
ただ、尚一郎と幸せになりたいだけなのに、なんでできないんだろう。
コンコンコン、不意にノックの音が聞こえた気がして、嗚咽が途切れる。
「朋香?
……入ってもいいかい?」
すぐに、おずおずと窺うように尚一郎の声が聞こえてきた。
思いっきり尚一郎に抱きしめてもらいたい。
けれどそんなことをすればますます引き返せなくなれそうで、返事ができない。
「朋香?
入るよ」
迷っているとドアが開いて尚一郎が入ってきた。
顔も上げることができなくて枕にうずめたままじっとしていると、マットがたわんで尚一郎が傍に座った。
「Es tut mir Leid(ごめん)」
そっと髪を撫でられると、ますます涙が出てきそうになる。
顔を見たい。
その胸の飛び込んで泣きたい。
でも、いまは躊躇われる。
「どうして、私と結婚したんですか」
びくり、髪を撫でていた手が震えて止まった。
「朋香はきっと、後悔しているだろうね」
「私は理由を知りたいんです」
枕から顔を上げ起きあがると、レンズ越しに尚一郎の瞳をじっと見つめる。
尚一郎も視線を逸らさずにじっと朋香を見つめていたが、しばらくしてはぁっと小さくため息をついた。
「……僕の、わがままだったんだ」
「わがまま、ですか?」
「そう、わがまま」
困ったように笑うと、尚一郎はどうして朋香と結婚したかったのか、話し出した。
尚一郎との愛を貫いて、自分ひとりが不幸になるのなら自業自得でまだ諦めもつくかもしれない。
それに、尚一郎は何度も、朋香を守ると誓ってくれた。
けれど、達之助の認めない尚一郎との結婚生活を続ければ、明夫の工場がまた倒産の危機に立たされるどころか、家族まで失いかねない。
「結局、尚一郎さんとの結婚は、諸刃の剣だった、ってことだよね……」
尚一郎と結婚することで、工場は守れた上に融資まで受けられた。
しかしこの結婚は達之助の不評を買っている。
「でも、いまさらこんな話をされたって、……引き返せない」
顔をうずめた枕が、こぼれ落ちる涙を吸い取っていく。
万理奈の気持ちが痛いほどわかった。
ずっと、これは契約結婚なんだからと尚一郎なんて好きにならなければよかった。
いまさら、尚一郎と別れるなんてできない。
それほどまでに尚一郎を深く愛していた。
けれど、そうしなければ今度は家族を失うことになる。
もう二度と、事故で和子を失ったときと同じ思いをするのは嫌だ。
身も心もバラバラになってしまいそうで、ひたすら苦しい。
「どうしたらいいのかなんて、わかん、ないっ……」
嗚咽は、枕に消えていく。
ただ、尚一郎と幸せになりたいだけなのに、なんでできないんだろう。
コンコンコン、不意にノックの音が聞こえた気がして、嗚咽が途切れる。
「朋香?
……入ってもいいかい?」
すぐに、おずおずと窺うように尚一郎の声が聞こえてきた。
思いっきり尚一郎に抱きしめてもらいたい。
けれどそんなことをすればますます引き返せなくなれそうで、返事ができない。
「朋香?
入るよ」
迷っているとドアが開いて尚一郎が入ってきた。
顔も上げることができなくて枕にうずめたままじっとしていると、マットがたわんで尚一郎が傍に座った。
「Es tut mir Leid(ごめん)」
そっと髪を撫でられると、ますます涙が出てきそうになる。
顔を見たい。
その胸の飛び込んで泣きたい。
でも、いまは躊躇われる。
「どうして、私と結婚したんですか」
びくり、髪を撫でていた手が震えて止まった。
「朋香はきっと、後悔しているだろうね」
「私は理由を知りたいんです」
枕から顔を上げ起きあがると、レンズ越しに尚一郎の瞳をじっと見つめる。
尚一郎も視線を逸らさずにじっと朋香を見つめていたが、しばらくしてはぁっと小さくため息をついた。
「……僕の、わがままだったんだ」
「わがまま、ですか?」
「そう、わがまま」
困ったように笑うと、尚一郎はどうして朋香と結婚したかったのか、話し出した。
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