96 / 129
第15話 社長秘書
1.秘書のお仕事
しおりを挟む
「失礼します」
社長室に入ると、すでに尚恭は客と談笑をしていた。
会釈してその前にコーヒーを置いていく。
「失礼いたしました」
部屋を出てぱたんとドアを閉めると同時に、……はぁーっ、ため息が落ちる。
お盆を給湯室に置き、秘書室に戻ると秘書の寺本と目があった。
「ありがとう」
「いえ。
あとはなにをすれば?」
「そうねぇ……。
これでも読んでてくれる?」
「……はい」
尚恭は朋香に秘書の仕事をしてもらうと云っていたが、お茶出し以外はこうやって、日がな一日雑誌を読んでいるだけ。
高度な仕事を頼まれても困るのだが、これはこれでなんとなく、居心地が悪い。
電話すら置かれていない、一番端の席で渡された雑誌を開く。
表紙に書かれているのは、最先端医療機器の特集。
毎回渡されるのは医療ジャーナルや介護雑誌、薬剤関係など一般ではほとんど目にすることのない、専門的なものばかり。
内容はほとんど理解できないがきっと、これがオシベグループの事業内容なのだろう。
どの雑誌にも必ずといっていいほど、オシベのグループ会社の広告が入っているくらいだから。
「あ。
尚一郎さん」
近頃出た医療機器のミニ特集で取材を受けた尚一郎が、ページの中で笑っている。
「写真写り、いいな……」
さわれないことはわかっていながら紙の上からつい、尚一郎にふれてしまう。
「元気なのかな……」
尚恭の屋敷に移ってからは一日二回、電話では話している。
朋香が眠る時間、朋香が起きて尚一郎が眠る時間。
けれど、声だけでは尚一郎が元気かどうかなんてわからない。
「いつになったら会えるのかな……」
淋しくないといえば嘘になる。
朋香の安否がわからなくて無理に滞在期間を伸ばしていた侑岐も、つい先日アメリカに帰ってしまった。
……それにしても。
「この尚一郎さん、格好いいな……」
「朋香さん」
「は、はい!」
写真相手ににやついていたところを秘書室次席の加賀から声をかけられ、つい慌てしまう。
「ああ、尚一郎社長は写真写りがいいですよね」
「……はい」
朋香が開いていたページに気付き、くすりと笑う加賀に、頬に熱が上がっていく。
「尚恭社長が昼食にしようとお待ちです」
「わかりました」
頷くと、加賀も頷き返して部屋を出ていった。
読んでいた雑誌を閉じて机の上を軽く整理し、寺本に声をかける。
「お昼、行ってきます」
「いってらっしゃい」
寺本の声に送られて廊下に出ると、すでに尚恭と加賀が待っていた。
「すみません、お待たせして」
「いえ。
今日はなにを食べましょうか?
朋香さんはなにがいいですか」
うきうきと楽しそうに笑いながら尚恭は、エレベーターに向かって歩き出した。
社長室に入ると、すでに尚恭は客と談笑をしていた。
会釈してその前にコーヒーを置いていく。
「失礼いたしました」
部屋を出てぱたんとドアを閉めると同時に、……はぁーっ、ため息が落ちる。
お盆を給湯室に置き、秘書室に戻ると秘書の寺本と目があった。
「ありがとう」
「いえ。
あとはなにをすれば?」
「そうねぇ……。
これでも読んでてくれる?」
「……はい」
尚恭は朋香に秘書の仕事をしてもらうと云っていたが、お茶出し以外はこうやって、日がな一日雑誌を読んでいるだけ。
高度な仕事を頼まれても困るのだが、これはこれでなんとなく、居心地が悪い。
電話すら置かれていない、一番端の席で渡された雑誌を開く。
表紙に書かれているのは、最先端医療機器の特集。
毎回渡されるのは医療ジャーナルや介護雑誌、薬剤関係など一般ではほとんど目にすることのない、専門的なものばかり。
内容はほとんど理解できないがきっと、これがオシベグループの事業内容なのだろう。
どの雑誌にも必ずといっていいほど、オシベのグループ会社の広告が入っているくらいだから。
「あ。
尚一郎さん」
近頃出た医療機器のミニ特集で取材を受けた尚一郎が、ページの中で笑っている。
「写真写り、いいな……」
さわれないことはわかっていながら紙の上からつい、尚一郎にふれてしまう。
「元気なのかな……」
尚恭の屋敷に移ってからは一日二回、電話では話している。
朋香が眠る時間、朋香が起きて尚一郎が眠る時間。
けれど、声だけでは尚一郎が元気かどうかなんてわからない。
「いつになったら会えるのかな……」
淋しくないといえば嘘になる。
朋香の安否がわからなくて無理に滞在期間を伸ばしていた侑岐も、つい先日アメリカに帰ってしまった。
……それにしても。
「この尚一郎さん、格好いいな……」
「朋香さん」
「は、はい!」
写真相手ににやついていたところを秘書室次席の加賀から声をかけられ、つい慌てしまう。
「ああ、尚一郎社長は写真写りがいいですよね」
「……はい」
朋香が開いていたページに気付き、くすりと笑う加賀に、頬に熱が上がっていく。
「尚恭社長が昼食にしようとお待ちです」
「わかりました」
頷くと、加賀も頷き返して部屋を出ていった。
読んでいた雑誌を閉じて机の上を軽く整理し、寺本に声をかける。
「お昼、行ってきます」
「いってらっしゃい」
寺本の声に送られて廊下に出ると、すでに尚恭と加賀が待っていた。
「すみません、お待たせして」
「いえ。
今日はなにを食べましょうか?
朋香さんはなにがいいですか」
うきうきと楽しそうに笑いながら尚恭は、エレベーターに向かって歩き出した。
1
あなたにおすすめの小説
ホストと女医は診察室で
星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。
ねーさん
恋愛
「氷の彫刻」と呼ばれる美貌の兄を持つ公爵令嬢のクラリッサは不審な視線に悩まされていた。
卒業を二日後に控えた朝、教室のクラリッサの机に置かれた一通の偏執狂者からの手紙。
親友イブを通じてイブの婚約者、近衛騎士団第四分団員のジョーンズに相談すると、第四分団長ネイトがクラリッサのパートナーとして卒業パーティーに出席してくれる事になって───
〈注〉
このお話は「婚約者が記憶喪失になりました。」と「元騎士の歳上公爵様がまさかの××でした!?」の続編になります。
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。
財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
雨の日にやさぐれお姉さんを拾ったと思ったら胃袋も心も掴んでくるスーパーお姉さんだった
九戸政景
恋愛
新人小説家の由利美音は、ある日の夜に一人の女性を拾う。太刀川凛莉と名乗る女性との共同生活が始まる中、様々な出会いを果たしながら美音は自身の過去とも向き合っていく。
夜の帝王の一途な愛
ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。
ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。
翻弄される結城あゆみ。
そんな凌には誰にも言えない秘密があった。
あゆみの運命は……
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる