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第15話 社長秘書
5.ずっとずっと会いたかった
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尚恭たちが去ったあと、ひとりで待っているという朋香に尚一郎が反対した。
「朋香分が不足しているって云っただろう?
まだ補充できてない」
「……なんですか、朋香分って」
尚一郎は離す気がないのか、膝の上に朋香を抱えたまま、犬飼やほかの社員に指示を出している。
みんなくすくす笑っているものだから、前が見れなくて必然、尚一郎に抱きついて背中に顔を隠すことになった。
おかげで、ますますくすくすと笑われて、恥ずかしくてしかない。
「さて。
一段落したから今日は帰ろう」
「え?
もう帰るんですか?」
時計はまだ午後四時。
いくらなんでも早い気がする。
「Mein Schatzはそろそろおねむの時間だろう?」
「まだ眠くないです!」
ちゅっ、あやすように口付けしてくる尚一郎に腹が立つ。
日本時間ではすでに真夜中だし、長旅の疲れもあってさっきからうとうととはしていた。
気遣ってくれたのは嬉しいが、子供扱いされるのはムカつく。
「無理しなくていいよ。
それに、ここのところみんなにはほぼ不眠不休で働いてもらっていたからね。
たまには休んでもらわないと」
「……はい」
さらにいい子いい子とあたまを撫でられるとやはりむっとはしたが、疲れている様子の尚一郎に早く休んで欲しいのもある。
いまは、おとなしくしておくことにした。
こちらでもやはり、運転手付きの車での移動だった。
まだレストランは開いてない時間だということで、適当な店で食事をして帰る。
「ここに滞在してるんだよ」
そう云って連れてこられたのは、ホテル。
しかも、いかにも高級な。
さらには長期の仕事なのにスイート滞在と朋香の理解を完全に越えていたが、そんなものなのだと納得しておくことにした。
「先に風呂に入っておいで」
「はい」
尚恭の用意した荷物がすでに運び込まれていた。
その中から着替えを出してバスルームに向かう。
広い浴槽で手足を伸ばして旅の疲れを落としてあがると、尚一郎の姿を探す。
「尚一郎さん……?」
リビングに行くとタブレットを手に握ったまま、ソファーに座った尚一郎は眠っていた。
「やっぱり、お疲れなんだ……」
ソファーの前にしゃがんみ膝の上に両手で頬杖を突いて見上げると、うつらうつらとしている尚一郎が見えた。
ずり落ちた眼鏡。
乱れた髪。
なんだかそれだけで、どきどきしてくる。
気持ちよさそうに眠っている尚一郎に、起こすべきか悩んだ。
それに、このままずっと、見ていたい気さえする。
「ん……」
「危ない!」
身動ぎした尚一郎の身体がソファーの背からずれ、落ちそうになって慌てて支える。
……起きちゃったかな。
視線を尚一郎の顔に向けると、ゆっくりと瞼が開いた。
「あれ?
もしかして僕は、寝てたのかい?」
ソファーに座り直した尚一郎が、ぱちくりと一回、瞬きをした。
「もしかして、あまり寝てないんですか?
そういえば、不眠不休だったって」
「ん?
ああ。
早く朋香に会いたくて、睡眠時間削って仕事してたからね。
それに」
尚一郎の手が朋香を抱き寄せ、あっという間に膝の上に載せられた。
いつもながらの早業に、いまだに自分がどうされているのかわからない。
「朋香が隣にいないから、ぐっすり眠れなかった」
「尚一郎さん……」
困ったように笑う尚一郎にぎゅーっと抱きつくと、ちゅっと口付けを落とされた。
眼鏡の奥の目が眩しそうに細くなり、再び唇が重なる。
「ずっと朋香に会いたかった。
もう僕は、朋香なしには生きられないみたいだ」
じっと見つめる、碧い瞳をレンズ越しに見つめ返すと、今度は朋香の方から唇を重ねた。
「私もずっと、尚一郎さんに会いたかったです。
会いたくて会いたくて、仕方なかった……」
尚一郎がいないあいだ、一度も口にしなかった弱音を吐くと、涙がぽろりと落ちた。
言葉にすると崩れてしまいそうな自分が怖くて、一度も云えなかった。
「ずっとずっと、会いたかった……」
涙はぽろぽろと落ちていく。
いくら抱きしめても抱きしめ返してくれない枕は淋しかった。
毎日電話で話していても、切ったあとに押し寄せる淋しさが余計につらかった。
夜、よく眠れなかったのは朋香も同じだ。
「ごめんね、朋香。
やっぱり無理矢理にでも、連れてくればよかった」
ふるふると首を振ると、尚一郎の唇が朋香の涙を拭った。
それがくすぐったくて、嬉しい。
「もう絶対に、ひとりにしないから。
約束する」
「はい」
ちゅっ、ちゅっ、つむじに、額に、瞼に、落ち続ける口付けが心地いい。
そのまま朋香はとうとう、眠ってしまった。
「朋香分が不足しているって云っただろう?
まだ補充できてない」
「……なんですか、朋香分って」
尚一郎は離す気がないのか、膝の上に朋香を抱えたまま、犬飼やほかの社員に指示を出している。
みんなくすくす笑っているものだから、前が見れなくて必然、尚一郎に抱きついて背中に顔を隠すことになった。
おかげで、ますますくすくすと笑われて、恥ずかしくてしかない。
「さて。
一段落したから今日は帰ろう」
「え?
もう帰るんですか?」
時計はまだ午後四時。
いくらなんでも早い気がする。
「Mein Schatzはそろそろおねむの時間だろう?」
「まだ眠くないです!」
ちゅっ、あやすように口付けしてくる尚一郎に腹が立つ。
日本時間ではすでに真夜中だし、長旅の疲れもあってさっきからうとうととはしていた。
気遣ってくれたのは嬉しいが、子供扱いされるのはムカつく。
「無理しなくていいよ。
それに、ここのところみんなにはほぼ不眠不休で働いてもらっていたからね。
たまには休んでもらわないと」
「……はい」
さらにいい子いい子とあたまを撫でられるとやはりむっとはしたが、疲れている様子の尚一郎に早く休んで欲しいのもある。
いまは、おとなしくしておくことにした。
こちらでもやはり、運転手付きの車での移動だった。
まだレストランは開いてない時間だということで、適当な店で食事をして帰る。
「ここに滞在してるんだよ」
そう云って連れてこられたのは、ホテル。
しかも、いかにも高級な。
さらには長期の仕事なのにスイート滞在と朋香の理解を完全に越えていたが、そんなものなのだと納得しておくことにした。
「先に風呂に入っておいで」
「はい」
尚恭の用意した荷物がすでに運び込まれていた。
その中から着替えを出してバスルームに向かう。
広い浴槽で手足を伸ばして旅の疲れを落としてあがると、尚一郎の姿を探す。
「尚一郎さん……?」
リビングに行くとタブレットを手に握ったまま、ソファーに座った尚一郎は眠っていた。
「やっぱり、お疲れなんだ……」
ソファーの前にしゃがんみ膝の上に両手で頬杖を突いて見上げると、うつらうつらとしている尚一郎が見えた。
ずり落ちた眼鏡。
乱れた髪。
なんだかそれだけで、どきどきしてくる。
気持ちよさそうに眠っている尚一郎に、起こすべきか悩んだ。
それに、このままずっと、見ていたい気さえする。
「ん……」
「危ない!」
身動ぎした尚一郎の身体がソファーの背からずれ、落ちそうになって慌てて支える。
……起きちゃったかな。
視線を尚一郎の顔に向けると、ゆっくりと瞼が開いた。
「あれ?
もしかして僕は、寝てたのかい?」
ソファーに座り直した尚一郎が、ぱちくりと一回、瞬きをした。
「もしかして、あまり寝てないんですか?
そういえば、不眠不休だったって」
「ん?
ああ。
早く朋香に会いたくて、睡眠時間削って仕事してたからね。
それに」
尚一郎の手が朋香を抱き寄せ、あっという間に膝の上に載せられた。
いつもながらの早業に、いまだに自分がどうされているのかわからない。
「朋香が隣にいないから、ぐっすり眠れなかった」
「尚一郎さん……」
困ったように笑う尚一郎にぎゅーっと抱きつくと、ちゅっと口付けを落とされた。
眼鏡の奥の目が眩しそうに細くなり、再び唇が重なる。
「ずっと朋香に会いたかった。
もう僕は、朋香なしには生きられないみたいだ」
じっと見つめる、碧い瞳をレンズ越しに見つめ返すと、今度は朋香の方から唇を重ねた。
「私もずっと、尚一郎さんに会いたかったです。
会いたくて会いたくて、仕方なかった……」
尚一郎がいないあいだ、一度も口にしなかった弱音を吐くと、涙がぽろりと落ちた。
言葉にすると崩れてしまいそうな自分が怖くて、一度も云えなかった。
「ずっとずっと、会いたかった……」
涙はぽろぽろと落ちていく。
いくら抱きしめても抱きしめ返してくれない枕は淋しかった。
毎日電話で話していても、切ったあとに押し寄せる淋しさが余計につらかった。
夜、よく眠れなかったのは朋香も同じだ。
「ごめんね、朋香。
やっぱり無理矢理にでも、連れてくればよかった」
ふるふると首を振ると、尚一郎の唇が朋香の涙を拭った。
それがくすぐったくて、嬉しい。
「もう絶対に、ひとりにしないから。
約束する」
「はい」
ちゅっ、ちゅっ、つむじに、額に、瞼に、落ち続ける口付けが心地いい。
そのまま朋香はとうとう、眠ってしまった。
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