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第5話 これって軟禁?
5.名刺
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庭に出ると試乗用の車が停めてあった。
朋香の希望したUP!と、尚一郎が比較に選んだ、Golf。
「乗ってみますか」
「ええ。
じゃあ、まずは朋香が運転して」
「はい」
まずはUP!に乗る。
ハンドルは右ハンドルになっていた。
エンジンをかけ、尚一郎の指示のまま、屋敷の庭を一周。
庭だけで自動車教習所以上の広さがあるから、屋敷の敷地を出ずに試乗ができる。
実際に運転してみると、大きさに慣れてしまえばGolfの方がいい気がした。
「じゃあ今度は、僕が運転してみるね」
朋香の車を買うのに、どうして尚一郎の試乗が必要なのか理解できないが、黙って助手席に座る。
試乗とはいえ、初めての尚一郎自身が運転する車。
その運転は同じ車とは思えないほど、自分が運転したときも滑らかな走りだった。
「それで。
どっちがいいかな」
リビングに行くと野々村がお茶を用意してくれていた。
尚一郎は紅茶よりコーヒーを好むから、コーヒーとケーキ。
料理長の大村が焼くドイツのケーキは絶品で、朋香の密かな楽しみだったりする。
そのせいか、この頃少し太ってきた気がして、ロッテとの散歩が欠かせない。
「その、……尚一郎さんが選んだ方がいいと思います」
「うん、僕もそう思うよ」
得意げに頷く尚一郎にむっとしたが、事実だから仕方ない。
見た目は、UP!の方がいいと思う。
絶対可愛いし。
けれど、運転してみたらそれが些細なことになるほど、Golfの方が断然よかったのだ。
「色は?
グレードはどうしよう。
安全装置は全部付けた方がいいな」
尚一郎の方がうきうきと商談を始め、苦笑いでそれを見ていた朋香だが。
……ちらちらと雪也からの視線を感じでいた。
商談が終わり、雪也を玄関まで見送る。
尚一郎は急な電話が入ったとかで、書斎に行ってしまった。
「結婚したんだ」
「うん」
なんとなく、気まずい。
付き合っていたのはもう、五年も前なのに。
「あのさ、……なんでもない」
朋香の後ろに控える野々村に気づいたのか、雪也は途切れさせ、苦笑いを浮かべた。
朋香もそれに、同じく苦笑いで返す。
「本日はありがとうございました。
なにかありましたらご連絡ください。
あ、」
営業マンの顔に戻った雪也だったが、慌てて持っていた紙袋を朋香に差し出した。
「ノベルティ渡すの忘れてた。
まあ、こんなの押部の奥様は使わないだろうけど」
皮肉って笑う雪也に、朋香も笑うことしかできない。
渡された紙袋を受け取ると、雪也が再び姿勢を正す。
「納車の日が決まったら、押部社長に連絡する。
元気そうでよかった。
車のことならこれからなんでも相談して」
「ありがとう」
「じゃあ、これで」
帰って行く雪也を笑顔で見送る。
もらった紙袋の中にはノベルティの箱と一緒に、――連絡して欲しい、と名刺が入っていた。
朋香の希望したUP!と、尚一郎が比較に選んだ、Golf。
「乗ってみますか」
「ええ。
じゃあ、まずは朋香が運転して」
「はい」
まずはUP!に乗る。
ハンドルは右ハンドルになっていた。
エンジンをかけ、尚一郎の指示のまま、屋敷の庭を一周。
庭だけで自動車教習所以上の広さがあるから、屋敷の敷地を出ずに試乗ができる。
実際に運転してみると、大きさに慣れてしまえばGolfの方がいい気がした。
「じゃあ今度は、僕が運転してみるね」
朋香の車を買うのに、どうして尚一郎の試乗が必要なのか理解できないが、黙って助手席に座る。
試乗とはいえ、初めての尚一郎自身が運転する車。
その運転は同じ車とは思えないほど、自分が運転したときも滑らかな走りだった。
「それで。
どっちがいいかな」
リビングに行くと野々村がお茶を用意してくれていた。
尚一郎は紅茶よりコーヒーを好むから、コーヒーとケーキ。
料理長の大村が焼くドイツのケーキは絶品で、朋香の密かな楽しみだったりする。
そのせいか、この頃少し太ってきた気がして、ロッテとの散歩が欠かせない。
「その、……尚一郎さんが選んだ方がいいと思います」
「うん、僕もそう思うよ」
得意げに頷く尚一郎にむっとしたが、事実だから仕方ない。
見た目は、UP!の方がいいと思う。
絶対可愛いし。
けれど、運転してみたらそれが些細なことになるほど、Golfの方が断然よかったのだ。
「色は?
グレードはどうしよう。
安全装置は全部付けた方がいいな」
尚一郎の方がうきうきと商談を始め、苦笑いでそれを見ていた朋香だが。
……ちらちらと雪也からの視線を感じでいた。
商談が終わり、雪也を玄関まで見送る。
尚一郎は急な電話が入ったとかで、書斎に行ってしまった。
「結婚したんだ」
「うん」
なんとなく、気まずい。
付き合っていたのはもう、五年も前なのに。
「あのさ、……なんでもない」
朋香の後ろに控える野々村に気づいたのか、雪也は途切れさせ、苦笑いを浮かべた。
朋香もそれに、同じく苦笑いで返す。
「本日はありがとうございました。
なにかありましたらご連絡ください。
あ、」
営業マンの顔に戻った雪也だったが、慌てて持っていた紙袋を朋香に差し出した。
「ノベルティ渡すの忘れてた。
まあ、こんなの押部の奥様は使わないだろうけど」
皮肉って笑う雪也に、朋香も笑うことしかできない。
渡された紙袋を受け取ると、雪也が再び姿勢を正す。
「納車の日が決まったら、押部社長に連絡する。
元気そうでよかった。
車のことならこれからなんでも相談して」
「ありがとう」
「じゃあ、これで」
帰って行く雪也を笑顔で見送る。
もらった紙袋の中にはノベルティの箱と一緒に、――連絡して欲しい、と名刺が入っていた。
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