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第8話 焼き肉デート
2.可愛くわがまま
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屋敷に戻るとロッテと別れて自分の部屋の浴室で軽く汗を流す。
そのあと、気が向いて読書なんかしてみる。
しかも、野々村から渡された、押部家の歴史、なんて本。
元は公家の出だとか、しかも大昔は大臣を務めたこともあり、天皇家とは外戚関係だったこともあるとか。
そんな黴の生えたような古い自慢話を延々と読んでいると、眠くなってくる。
きっと、あの祖父母はいまだにこういうことにこだわっているのだろう。
だから、尚一郎は酷く疎まれている。
……もう二十一世紀だってゆーの。
やはり、あの祖父母は好きになれそうにない。
「ただいま、Mein Schatz」
「……おかえりなさい」
結局、本を読みながら寝てしまっていた。
出迎えもできず、帰ってきた尚一郎に起こされるなどと恥ずかしすぎる。
「こんなものを読んでたのかい?
物好きだね」
「……一応」
ぱらぱらと尚一郎の手がページをめくる。
涎の跡でもついてないか心配になってきた。
「僕も一応読んだけどね。
こんなつまらないものは朋香は読まなくていいよ」
ぽいっ、そこらに本を投げ捨てたかと思ったら、がしっと思いっきり本を踏みつけた尚一郎の、眼鏡の奥の目は全く笑ってない。
「夕飯にしよう。
もうおなかペコペコだよ」
おなかを押さえて笑った尚一郎はいつも通りに戻っていて、ほっとした。
夕飯が終わって、いつものように膝の上に載せられて過ごしながら、朋香はぐるぐる悩んでいた。
自分は、少しくらい我が儘になっていいんだと思う。
いや、バーキンが欲しいとか、そういうことではなく。
そもそもバーキンが欲しいなんて思わないし、もっともすでに、衣装部屋の中に二つほど転がっている。
さらにいえば、尚一郎がそういうものをプレゼントしてくるのがムカつく。
いままでバーキンだとかヴィトンだとかねだっていたであろう女たちと一緒にされているようで。
……とりあえずそれは置いておいて。
朋香のいう我が儘はコンビニスイーツが食べたいとか、カラオケに行きたいとか。
そういう、いままでやってきたささやかな楽しみを我慢するからストレスが溜まって雪也のような男と遊び歩いたりするのだ。
「しょ、尚一郎、さん」
そっと袖を引き、上目がちになるべく瞳を潤わせ、おそるおそるといった感じで見上げる。
こうやるとだいたい、尚一郎がお願いを聞いてくれることは学習済みだ。
「……なんだい?」
すぅーっと尚一郎の視線が逸れて目を伏せる。
かかった!
心の中でガッツポーズ。
「その、……焼き肉、食べたいです」
「焼き肉かい?
わかった、大村に最高級の肉を用意させて……」
「そうじゃなくて!」
なんとなく、焼き肉じゃなくステーキが想像できた。
違う、違うのだ。
「お店で、食べたいです」
「じゃあ、犬飼に最高級のお店を……」
「違うんです!」
尚一郎の思う焼き肉と、自分の思う焼き肉に違いがありすぎて軽く頭痛がしてくる。
確かに、高級店で食べる上品な焼き肉もいい。
でも、朋香が食べたいのはそうじゃないのだ。
「お店は私が決めていいですか」
「朋香お勧めのお店かい?」
ふふふっ、楽しそうに笑った尚一郎の顔が近づいてくる。
耳の傍に寄ったかと思ったら。
「それは楽しみだ」
囁かれたのと同時に耳の後ろに落ちた口付けに、顔が熱くなる思いがした。
そのあと、気が向いて読書なんかしてみる。
しかも、野々村から渡された、押部家の歴史、なんて本。
元は公家の出だとか、しかも大昔は大臣を務めたこともあり、天皇家とは外戚関係だったこともあるとか。
そんな黴の生えたような古い自慢話を延々と読んでいると、眠くなってくる。
きっと、あの祖父母はいまだにこういうことにこだわっているのだろう。
だから、尚一郎は酷く疎まれている。
……もう二十一世紀だってゆーの。
やはり、あの祖父母は好きになれそうにない。
「ただいま、Mein Schatz」
「……おかえりなさい」
結局、本を読みながら寝てしまっていた。
出迎えもできず、帰ってきた尚一郎に起こされるなどと恥ずかしすぎる。
「こんなものを読んでたのかい?
物好きだね」
「……一応」
ぱらぱらと尚一郎の手がページをめくる。
涎の跡でもついてないか心配になってきた。
「僕も一応読んだけどね。
こんなつまらないものは朋香は読まなくていいよ」
ぽいっ、そこらに本を投げ捨てたかと思ったら、がしっと思いっきり本を踏みつけた尚一郎の、眼鏡の奥の目は全く笑ってない。
「夕飯にしよう。
もうおなかペコペコだよ」
おなかを押さえて笑った尚一郎はいつも通りに戻っていて、ほっとした。
夕飯が終わって、いつものように膝の上に載せられて過ごしながら、朋香はぐるぐる悩んでいた。
自分は、少しくらい我が儘になっていいんだと思う。
いや、バーキンが欲しいとか、そういうことではなく。
そもそもバーキンが欲しいなんて思わないし、もっともすでに、衣装部屋の中に二つほど転がっている。
さらにいえば、尚一郎がそういうものをプレゼントしてくるのがムカつく。
いままでバーキンだとかヴィトンだとかねだっていたであろう女たちと一緒にされているようで。
……とりあえずそれは置いておいて。
朋香のいう我が儘はコンビニスイーツが食べたいとか、カラオケに行きたいとか。
そういう、いままでやってきたささやかな楽しみを我慢するからストレスが溜まって雪也のような男と遊び歩いたりするのだ。
「しょ、尚一郎、さん」
そっと袖を引き、上目がちになるべく瞳を潤わせ、おそるおそるといった感じで見上げる。
こうやるとだいたい、尚一郎がお願いを聞いてくれることは学習済みだ。
「……なんだい?」
すぅーっと尚一郎の視線が逸れて目を伏せる。
かかった!
心の中でガッツポーズ。
「その、……焼き肉、食べたいです」
「焼き肉かい?
わかった、大村に最高級の肉を用意させて……」
「そうじゃなくて!」
なんとなく、焼き肉じゃなくステーキが想像できた。
違う、違うのだ。
「お店で、食べたいです」
「じゃあ、犬飼に最高級のお店を……」
「違うんです!」
尚一郎の思う焼き肉と、自分の思う焼き肉に違いがありすぎて軽く頭痛がしてくる。
確かに、高級店で食べる上品な焼き肉もいい。
でも、朋香が食べたいのはそうじゃないのだ。
「お店は私が決めていいですか」
「朋香お勧めのお店かい?」
ふふふっ、楽しそうに笑った尚一郎の顔が近づいてくる。
耳の傍に寄ったかと思ったら。
「それは楽しみだ」
囁かれたのと同時に耳の後ろに落ちた口付けに、顔が熱くなる思いがした。
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