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第三章 ノブレス・オブリージュ
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「じゃあ、しっかり戸締まりしてね」
彪夏さんに言われたからではないが、今日はことさら戸締まりを注意する。
「わかった。
彪夏にぃ、今日はありがとう。
俺、こんなにうまい肉、初めて食った。
本当にありがとう」
「彪夏にぃ!
ありがとう!」
「彪夏兄さん、ありがとうございます」
「ひゅうがおにぃちゃん、ありがとう」
弟たちが口々にお礼を言うのが微笑ましい。
彪夏さんも同じだったらしく、照れくさそうに笑っていた。
「これからはもっといろいろうまいもの食わせてやるから、期待しててくれ」
「ほんとに!?」
弟たちの目がキラキラと輝きだす。
「やったー!」
無邪気に喜ぶ弟たちは大変可愛らしい。
でも同時にそれだけ、今まで我慢させてきたのだと痛感した。
あの子たちは口にしないだけで、つらい思いをしている。
そんな思いをさせないためにはやはり、彪夏さんを本気にさせて結婚するしかない。
「じゃあ、おやすみー」
「おやすみー」
満足顔の弟たちに別れを告げ、実家を出る。
彪夏さんに頼んで自分の部屋に寄り、着替えを取ってきた。
「今日はいろいろすみません」
御曹司をお肉だけはよかったがあんな安っぽい焼き肉に誘ってしまい、申し訳ない。
「いや、いい。
清子の実家は居心地がいいしな」
「え、あんなにうるさくて狭いのに?」
あれのどこが居心地がいいのかまったくの謎だ。
うるさすぎて巧はよく、私の部屋を勉強部屋代わりに使っているくらいなのに。
「俺の家は家族が揃うのが稀なんだ」
「そう、なんですか」
「子供の頃から父は忙しく働いて滅多に家にいなかったし、母は身体の弱い妹に付きっきりだった。
しん、と静まりかえった家で、ひとりで遊ぶのは淋しかったな」
あの家にひとりでいる彪夏さんを想像したらいたたまれなくなってくる。
もし目の前にいたら、抱き締めてあげたいくらいだ。
「だから、賑やかな清子の家が羨ましい」
ふっ、と淋しそうに彪夏さんが笑う。
私の知っている彪夏さんはどこからどう見ても完璧な社長で、怖いものなんてないようだった。
そんな彼がこんな孤独を抱えているなんて思わない。
私は彼と一緒で、彼の見えている一面しか知らなかったのだ。
「我が家でよかったらいつでも来てください。
弟たちも大歓迎ですよ」
ものに釣られている部分が大きい気はするが、それでも弟たちは彪夏さんに心を許しているようだった。
たぶん、彼の人柄だろう。
「ありがとう。
またおみやげいっぱい持ってお邪魔しようかな」
「はい。
絶対喜びます」
嬉しそうに彪夏さんが笑う。
私の知らない、彼の一面。
それを知ってなにも思わなかったかといえば、少しだけ愛おしくなった。
彪夏さんに言われたからではないが、今日はことさら戸締まりを注意する。
「わかった。
彪夏にぃ、今日はありがとう。
俺、こんなにうまい肉、初めて食った。
本当にありがとう」
「彪夏にぃ!
ありがとう!」
「彪夏兄さん、ありがとうございます」
「ひゅうがおにぃちゃん、ありがとう」
弟たちが口々にお礼を言うのが微笑ましい。
彪夏さんも同じだったらしく、照れくさそうに笑っていた。
「これからはもっといろいろうまいもの食わせてやるから、期待しててくれ」
「ほんとに!?」
弟たちの目がキラキラと輝きだす。
「やったー!」
無邪気に喜ぶ弟たちは大変可愛らしい。
でも同時にそれだけ、今まで我慢させてきたのだと痛感した。
あの子たちは口にしないだけで、つらい思いをしている。
そんな思いをさせないためにはやはり、彪夏さんを本気にさせて結婚するしかない。
「じゃあ、おやすみー」
「おやすみー」
満足顔の弟たちに別れを告げ、実家を出る。
彪夏さんに頼んで自分の部屋に寄り、着替えを取ってきた。
「今日はいろいろすみません」
御曹司をお肉だけはよかったがあんな安っぽい焼き肉に誘ってしまい、申し訳ない。
「いや、いい。
清子の実家は居心地がいいしな」
「え、あんなにうるさくて狭いのに?」
あれのどこが居心地がいいのかまったくの謎だ。
うるさすぎて巧はよく、私の部屋を勉強部屋代わりに使っているくらいなのに。
「俺の家は家族が揃うのが稀なんだ」
「そう、なんですか」
「子供の頃から父は忙しく働いて滅多に家にいなかったし、母は身体の弱い妹に付きっきりだった。
しん、と静まりかえった家で、ひとりで遊ぶのは淋しかったな」
あの家にひとりでいる彪夏さんを想像したらいたたまれなくなってくる。
もし目の前にいたら、抱き締めてあげたいくらいだ。
「だから、賑やかな清子の家が羨ましい」
ふっ、と淋しそうに彪夏さんが笑う。
私の知っている彪夏さんはどこからどう見ても完璧な社長で、怖いものなんてないようだった。
そんな彼がこんな孤独を抱えているなんて思わない。
私は彼と一緒で、彼の見えている一面しか知らなかったのだ。
「我が家でよかったらいつでも来てください。
弟たちも大歓迎ですよ」
ものに釣られている部分が大きい気はするが、それでも弟たちは彪夏さんに心を許しているようだった。
たぶん、彼の人柄だろう。
「ありがとう。
またおみやげいっぱい持ってお邪魔しようかな」
「はい。
絶対喜びます」
嬉しそうに彪夏さんが笑う。
私の知らない、彼の一面。
それを知ってなにも思わなかったかといえば、少しだけ愛おしくなった。
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