前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

006-2

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 ノエルさんとクリフさんが迎えに来てくれて、一週間ぶりに城を出る。
 食堂には色んな人が来るから、少しずつ顔見知りの人が増えてきた。あまりに人がいすぎて、僕の方はまだ覚えられてないんだけど。

 そして今日もまた、僕はクリフさんに抱き上げられている。僕の足の速さに合わせると時間が足りないって事だよね、きっと。

「先にスライムをテイムしに行こうか。大分寒くなってきたから、暖かい内に済ませようね」

 ノエルさんの言葉に僕は頷く。
 今はりんごの収穫の最盛期だ。それが終わる頃には冬に入る。
 お城での冬は初めてだし、どれだけ物を用意すれば良いのか分からない。

「アシュリーはスライムの事をどれぐらい知ってる?」

「えっと、以前村にテイムしたスライムを連れてる人がいたから存在を知ってるぐらいで、何でも食べてしまう事しか知らないです」

 ノエルさんの説明によると、スライムとはゲル状の不定形の流動体なのだそうだ。
 えーと? じゃあ、村で見たあの生物は一体?
 なんか丸くて可愛かったし、不要なものを食べてくれるのもあって僕もテイムしたいと思ったのに。

「スライムは本来、近くを通った生き物を捕獲して溶解吸収するだけの生物なんだ。でもこれだとテイマーには使役し辛いからね、スライムみたいな思考回路の無い生物には"核"と呼ばれるものを埋め込んで、テイマーの意思を伝達出来るようにするんだよ。そうすると、テイマーの望む形状にもなれるんだ」

 へーっ! そうなんだ!
 だから村で見たスライムは丸かったんだ。

「ノエルさんは物知りですね!本当にスゴイです!」

「そんな事ないよー」

「ノエル、眉尻が下がり過ぎだ」

 呆れ顔のクリフさん。
 どうやら、ノエルさんは褒められたいみたい。
 頑張ってるのに、天才だから当たり前と思われて褒めてもらえないのは悲しいんだろうな。
 僕的にはむしろ親近感が湧いてしまうけど。

「いいの」

「いくつか"核"を持って来たから、後で渡すね」

「はい、ありがとうございます。"核"はどうやって手に入れるんですか?」

 ノエルさんの動きが止まる。クリフさんと目を合わせると、何事もなかったように歩き出す。

「お昼は屋台の料理を買い食いしようねー」

 誤魔化されたような?
 えっと、もしかしなくても、"核"って高額なんじゃ……?

 ノエルさんが吹き出す。

「大丈夫だよ、アシュリー。"核"はピンキリなんだよ」

 それで、僕に渡そうとしている"核"はピンなのでしょうか、"キリ"なのでしょうか?

「王城内にスライムを入れる事になるからね、正直に言えば、かなり良い"核"だよ」

 やっぱり!

「お金、お支払いしますっ」

「これはトキア様からアシュリーへの贈り物だよ」

 トキア様から?
 どうして僕に?

「トキア様は機密文書の廃棄方法に苦慮されていてね。王城内のアシュリーの元にスライムがいれば、食べさせられるでしょ? それ目当てみたい。
アシュリーの為と言うよりトキア様ご自身の為だから、気にしないで良いと思うよ」

 うんうん、とクリフさんも頷く。

 そう言うものなのかな……。
 でも確かに、魔法師団の団長さんともなれば、表に出来ない書類なんかもあるのかも知れない。

「それなら良いんですけど……」

「人の好意は素直に受け取っておくと良い」

 ぐりぐりとクリフさんに頭を撫でられた。
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