前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

006-3

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 大通りを抜け、王都を囲む城壁までやって来た。
 守衛の兵士さんに挨拶をして王都の外に出る。

「スライムはダンジョンや洞窟にいるんだよ。この辺だと森の中にある洞窟が良さそうだね」

 森の中に入ると、木々が不意に濃くなる場所に辿り着いた。

「あったあった。さ、入ろう」

 王都からそんなに遠くない場所にあるだけあって、危険は少ない洞窟なんだろうか? それともこの二人が規格外?
 前者であることを祈りつつ、クリフさんの後ろに続く。

 先頭はクリフさん。次は僕。後ろにノエルさん。

「クリフ、前方十一時の方角に気配がする」

「分かった」

 ノエルさんの言う気配と言うのは、索敵スキルと言う奴かな? 猟師は索敵スキルがあるのとないのとで大分違うって父さんが言ってた。
 歩く速さを落として進むと、天井から何かがズルリと落ちて来た。
 僕の頭ぐらいの大きさをそのまま潰したような、半透明でぬるぬるとしたゲル状のものだった。
 これがスライム?

「オレ達の頭に被さって呼吸困難にさせて殺してから、時間をかけて分解吸収するんだ」

 ぅわあ……。
 結構的確な攻撃をしてくるんだね……。

 ノエルさんはクリフさんの直ぐ横に立つと、魔法を唱えた。
 僕たちを諦めていないようで、手? 触手? みたいなものを伸ばしてくる。

「パラーリジ」

 スライムの触手が、そのままの状態で止まる。

「アシュリー、良いよ。テイムしてみて」

 差し出された"核"を受け取る。
 そろっとスライムに近付く。目とか耳とか、そう言った器官がないから、スライムが何処を向いてるのかが分からない。

「ターメ!」

 魔力がスライムに引っ張られていくのが分かる。
 魔物はみんな魔力を持っていて、その魔力の上をいかないとテイムは出来ない。
 だからどんなに優れたテイマーであっても、上位の魔物と契約は不可能だ。人の魔力には上限がある──そう教えられた。
 僕はそもそもの魔力が少ないから、魔力の少ない動物ぐらいが精々だった。

 引っ張られる感覚が突然止まって、目の前のスライムはふるりと揺れた。ノエルさんが呪文を解いたみたいだ。

「スライムに"核"を触れさせてみて」

 ノエルさんに言われた通り、"核"をスライムにくっつけてみる。スライムはふるふると揺れて、"核"を自発的に取り込んだ……ように見える。
 半透明な為、"核"がスライムの何処にあるのかが見える。少しずつ身体の真ん中に向かっていき、あるべき所に収まると、もう"核"は動かなかった。

「名前を付けてあげたら?」

 名前?
 名前……ふるふるしてるから、フルールにしよう。

「じゃあ、フルールにします」

「まんまだな」

 苦笑するクリスさん。

「僕、ネーミングセンス皆無なんです。家族にも言われました」

 くすくす笑いながら、ノエルさんが「アシュリーらしくて良いと思うよ」と言ってくれたけど、全然フォローになってないと思うんだよね。
 いいんだけど。

「フルール、これからよろしくね」

 スライムこと、フルールはフルフルと揺れた。
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