前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

008-1

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 新しい週に入った。
 ノエルさんが手配してくれた木工ギルドの人たちが裏庭に来て、小屋を建て始めた。
 工事は一ヶ月程かかると言う事だった。冬の前には間に合いそうでほっとする。
 お風呂が出来たらせっけん必要だよね。今から作っておこうかな。料理で出た油でよく作っていたんだよね。
 お昼の仕込みをしながら油について相談する。

「余った油? 好きに使っていいぜ。今度は何やんだ?」

 ラズロさんの知る王都の生活と、僕がいた村の生活はかなりかけ離れているみたいだ。僕の場合はそこに魔法も使ったりするから余計に。

「せっけんを作ろうと思って」

「作れんのか、あれ」

「作ってました、村では」

 各家庭で作るのは大変だからと、使い終わった油を集めて、みんなでワイワイ言いながらせっけんにして、出来あったのを村の備蓄庫に保管してた。必要な時になったら取りに行く、って感じだったんだよね。

「半端ない衛生環境だな、アシュリーの村は」

「そう言うものだと思っていましたけど、珍しい村なんですね」

 村の魔女は何でも知ってて、魔力も凄いあって、みんなに頼られていた。百年は生きてるって言われてたけど、あれは本当なのかも。

「せっけんは何処で使うんだ? 風呂か?」

「料理で使った油は臭いがあるので、お風呂では使わないです。食器を洗うのに使います」

 ちょっと独特の香りがあるから、洗濯やお風呂で身体を洗うのには向かないんだよね。

「無駄がねぇな」

 感心したようにラズロさんは言った。

「そう言えばコーヒーを淹れた後のカスがあるんだけどな、何とか出来ねぇかな?」

 いつも飲んでるもんね、コーヒー。

「今はどうしてるんですか?」

「……実は庭に放り投げてる。茶色いから分かんねぇかなって思って」

 えー……。

 ラズロさんはガリガリと頭を掻く。

「悪ぃ」

 水分を含んだカスをばら撒いたりして、庭は大丈夫なのかな。乾いてればいいけど、カビたりしてたら嫌だなぁ。
 後でちょっと確認して、アレだったらフルールに協力してもらおう。
 フルールは今、剥いたじゃがいもの皮を足元で一心不乱に食べてる。可愛いです。
 ゴミが出ないのはとても助かる。残飯はやっぱりにおうし、カビたりする。

 スライムは基本的にずっと食べていられるらしい。眠ったりもしないんだって。
 ごはん食べた後に眠くなったりしないなんて、凄い。食べ過ぎた後は眠くて仕方ないのに。

 仕込みを終えた僕たちは、ラズロさんがコーヒーのカスを捨ててると言う場所に連れて行ってもらった。
 適当に捨ててたんだなーと言うのがよく分かる感じで、何も言えない僕の横でラズロさんは頰をポリポリ掻いてる。

 カスが重なり過ぎてカビてしまってるかなー、という部分を、フルールを呼んで食べてもらう。

「フルール、おいで」

 ぴょこぴょこと跳ねるように僕の横に来たフルールは、鼻をひくひくさせている。コーヒーの匂いがするからだと思う。

「あのね、この辺のコーヒーのカスを食べて欲しいんだけど、食べれそう?」

 フルールはコーヒーのカスに鼻を近付けて、食べ始めた。
 大丈夫そうだ。

「食べ終わったら戻って来てね」

 長い耳がぴょこ、と動いた。分かったって事かな。
 とりあえず、これでコーヒーのカスがカビて大変な事になるのは防げそう。

 それにしても。
 問題なく乾いてるコーヒーのカスを手に取ってみると、サラサラしてる。
 コーヒーって、なんなんだろう。豆みたいに見えるけど。
 ノエルさんが来たら聞いてみようかな。
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