前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

015-2

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 続けて木箱を開ける。
 一つずつ取り出す。壊れないように布に包まれてる。

 薬研が出てきた。魔女の家にあった奴だった。いつも見ていた傷がある。

「これは、薬研?」

「そうです。大した物は作れませんけど」

「レンレンが聞いたら歓喜しそう」

 レンレン?

「前に魔法薬学を専門にしてる知り合いがいるって言ったの、覚えてる?」

 頷く。

「その知り合いの名前、レンレンって言うんだけど、魔法薬学が好き過ぎて、誰でも彼でも魔法薬学の道に引きずり込もうとするんだ」

 ノエルさんも、引きずり込まれそうになってるのかな?

「ノエルさん、魔法薬学って、何ですか?」

「魔法薬学って言うのはね、その名の通り、魔法の力を薬に閉じ込めるものだよ。トキア様がネロを助けたような、癒しの力を薬にしたり、一時的に魔力を増幅させるとか」

 ……この前のネズミは何に使われたんだろう……。

 僕の考えてる事が分かったみたいで、ノエルさんが笑った。

「この前のネズミはね、触媒に使われたと思う」

 ショクバイ?

「魔法は形の無いものでしょ? それを形あるものに閉じ込めるのに、命あるもの、命があったものを使うと、早く形に出来るんだよ。普段は植物なんかを使うんだけどね。あ、基本的に動物や人を触媒にしたりはしないよ?」

 なんだか、難しそうだけど……あ、前に魔女が生きたトカゲを捕まえて何かしてた事があったけど、それと同じなのかな?

「何か無い限りはレンレンと会う事もないと思うから安心して。滅多に塔から出て来ないから」

「はい」

 会えないのを安心すると言う事は、ちょっと個性が強い人なんだろうな、うん。

 箱に入っている他のものを取り出す。
 ……あ、へちまスポンジだ! しかも何個も入ってる!

「ノエルさん、これがスポンジです」

 ノエルさんにへちまスポンジを差し出すと、握った感触に驚いていた。

「なんだか、不思議な感触だね。これで色んなものを洗うんだよね?」

「そうです」

 身体を洗ったり、食器を洗ったり、浴室を洗ったりする。とっても便利。

 ドアをノックする音がして、「おーい」と、ラズロさんの声がした。

「はーい」

 ドアが開いてラズロさんが入って来た。

「布団か?」

「そうです。送ってきてくれたんです」

「そうかそうか、良かったな。今年は寒くなるのが早いからまた布団を買いに行こうと思ってた」

 ラズロさんもノエルさんも、優しいなぁ。

「アシュリーが書いた手紙を送ったら、驚くんじゃないか?」

「そうですね、きっとびっくりしますね」

「ラズロ、何か用があったんじゃないの?」

 ノエルさんの質問に、ラズロさんが頷いた。

「チャイを作ったって言いに来た」

「チャイ?」

「あー、チャイ、いいね」

 初めて聞く言葉。
 ノエルさんは知ってるみたい。

 僕達は食堂に向かった。
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