前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

016-3

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 パニーノとスープをワゴンに乗せてラズロさんと配りに行く。断られる事もあるだろうと思うけど。
 まずは魔法師団の人達の部屋に行く。
 忙しそうにバタバタと走る人達。
 この部屋には毎日トキア様用の食事を持って行ってるから、すっかり顔見知りで、そのまま一番奥のトキア様の部屋に通される。

 トキア様の部屋に入ると、ノエルさんもいた。

「いらっしゃい、アシュリー」

 疲れているのに笑顔を見せてくれるノエルさん。でも、顔から疲れが滲み出てる。

「あの、トキア様」

「どうかしたか?」

「ご迷惑でなければ、魔法師団の皆さんにも、パニーノを食べていただきたいんですけど、駄目でしょうか?」

「それは願ってもない事だが、食堂で通常の仕事もしながらだろう? 大変ではないのか?」

「食堂は忙しくないんです。食べに来る人が減ったので」

「とは言え、食堂への人員募集は取りやめになった。負担は変わらぬぞ?」

 そう言ってトキア様はノエルさんを見た。ノエルさんがそっと視線を逸らす。ラズロさんの言ってた、採用に反対した人、ノエルさんなのか……。

「出来る範囲で頑張ります。それに食材がいっぱいなんです」

 どう言う事だ? と言いたげな顔でラズロさんを見るトキア様。ラズロさんが僕に話してくれたのと同じ内容を話すと、トキア様は頷いた。

「我等としては大変助かるが、無理のない範囲で構わない。団員達にも、食堂からの好意によるものであると伝えておく」

「ありがとうございます」

「アシュリー、この差し入れは、他の省にもいくらか回せるか?」

「はい、出来ます」

 トキア様は頷いて、ラズロさんの方を向いた。

「明日からは持って来なくて良い。こちらから取りに行かせるし、食べに行ける者は食べに行かせる。作りすぎは気にしなくて良い。とにかく出来る限り作ってくれ。
他の省には私から連絡しておく」

「分かりました」とラズロさんが頷いた。

「ありがとう、アシュリー。凄い嬉しいよ」

 ノエルさんに抱きしめられた。最近全然食べられてないって言ってたもんね。
 簡易な食事だけど、食べられないよりはいくらか良いと思う。
 それに、本当に食材が減らなくて、それなのに冬用の食材が運び込まれてて、どうしようって思ってたのは本当なんだよね。

 魔法師団の執務室を出てから、クリフさんの騎士団の詰所に向かった。
 ラズロさんがいたから、すぐに中に通してもらえた。僕はまだ、騎士団の人達とはあんまり面識がない。騎士団の人達は食堂に来ないから。

 団長室に通された。
 緊張する。騎士団長は、とってもとっても偉い人だって聞いてたから。本当だったら、僕なんか一生会えない人だって。
 大きな机に、立派な髭の鋭い眼光をした人が座っていた。あれが噂の騎士団長……?

「ラズロ? どうした? それにアシュリーも」

 クリフさんが寄ってきて、僕の頭を撫でた。大きい手に撫でられると、父さんを思い出す。

「今年の冬は過酷になる事を想定して各所が対応に当たってると聞いています。まともに皆さんが食事も取る余裕がないとも。それで、出来る範囲ではありますが、簡易的な食事を提供出来ないかとお持ちしました」

「魔法師団長がいつも召し上がっていると言う奴か?」

 クリフさんの問いにラズロさんが頷く。
 さっきのラズロさん、いつものラズロさんっぽくなかった。大人って凄い。

「そなた、名は?」

 突然団長に話しかけられてびっくりしたけど、慌ててお辞儀をする。

「アシュリーといいます」

「アシュリー、騎士団はそなたも知っての通り身体を資本とする。差し入れ、有り難く頂戴する。出来るなら多めで頼む。儂も食べたいからな」

「閣下が召し上がるのですか?」

 驚いた顔でクリフさんが団長を見てる。ラズロさんも。

「何かおかしいか?」

「閣下の御身は……」

 鼻で笑うと、団長は立ち上がって、あっという間に僕の前にやって来た。大きな身体! クリフさんより大きい?

「!」

 脇の下に手を入れられ、抱き上げられた。

「そなた、小さいな。ちゃんと食べておるか?」

「は、はい、食べております」

「レイモンドに似ておる」

 レイモンド?
 クリフさんが俯く。

「儂の息子の名だ。そなたと同じ瞳の色、髪の色をしておった。そなたより身体は大きかったがな」

 もしかして……そのレイモンド様は……。

 団長はため息を吐いた。
 悪い予感というのか、悲しい過去の話が続きそうで、身構えていると、予想外の事を団長が言った。

「儂の後など継がぬ、と言って、あろう事か女の姿で出奔しおって!」

 …………えっ?
 どうすれば良いのか分からなくてクリフさんを見る。困った顔をしてため息を吐いてる。
 色々、あるんだな、って思った。
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