68 / 271
第一章 新しい生活の始まり
018-2
しおりを挟む
チリン、と鈴の音がした。
久々に聴いた。
「ん? 鈴の音か?」
ラズロさんはキョロキョロ辺りを見回して、音の主を探す。
「ラズロさん、上です」
上? と聞き返しながら、ラズロさんは天井を見上げた。
黒い猫が逆さまの状態でお座りしてた。
「のわっ?!」
あり得ない光景に、ラズロさんは身体をのけ反らせて驚いてる。
うん、そうだよね。僕には見慣れた光景だけど、普通はあり得ないもんね。
「マグロ、久しぶり」
手を洗ってキレイにしてから、天井に向けて両手を伸ばすと、黒猫は腕の中に飛び降りて来た。
「あっ、アシュリーさん?! こちらどちら様?!」
ラズロさんの声が裏返ってる。
「魔女の使い魔のマグロです」
黒猫は二股に分かれた尻尾をゆらゆらと揺らし、にぅ、と返事をした。
メルのミルクをマグロに出したら、ネロがやって来て自分にもと催促してきた。
マグロにはそのまま出せるけど、ネロにはちょっと濃いから薄めて出してあげる。
二匹の黒猫の尻尾が、嬉しそうに揺れてる。可愛い。
「魔女の使い魔、なのか?」
ラズロさんはマグロの二股の尻尾を見てる。
村にいた時、いつもミルクをあげていたんだよね。
「そうです。猫又と言う魔物です。元はネロと同じ普通の猫なんですけど」
猫が通常の寿命よりも長く生きれた場合、たまに猫又になるらしい。魔女の猫は猫又なんだって。
「それで、その魔女の使い魔サマがどうしてここに?」
それなんだよね。
「とりあえず、お昼の仕込みに戻りましょう。マグロはミルクを飲み終えてからが長いんです」
「長い?」
「すぐ分かると思います」
厨房に戻って昼の仕込みを始める。
ラズロさんはマグロが気になるらしくて、チラチラ見てる。マグロはミルクを飲み終えたので、口の周りのお掃除を念入りにしてる。たぶんあのままヒゲのお手入れに突入して、それが終わったら全身の手入れになって、床に背中を擦り付けて遊んだ後、こっちに来ると思う。
集中出来ないラズロさんの事はそっとしておいて、僕は酢漬けの野菜を取り出した。
今日のお昼は腸詰と酢漬け野菜の煮込みにする予定。
城の人達も粒マスタードに慣れたみたいで、むしろもっと付けて欲しいと言う人もいるぐらい。
端肉とネギのスープも作っておこうかな。塩、コショウだけの味付けなんだけど、後を引くんだよね。
ラズロさんが待っている間も、マグロは毛繕いをしているし、終わったら遊び始めたので、さすがにラズロさんも諦めたというか、分かってくれたみたいだった。
「アシュリーの言う通り、長いな。アイツ、本当に何しに来たんだ?」
首を傾げるラズロさんに僕は苦笑する。
「魔女やその使い魔は僕たちと感覚が違いますから、気にしちゃ駄目ですよ」
「そういうもんなのか」
「そういうものなんです」
色々と満足したらしいマグロが、僕の足元に来て身体を擦り付ける。
「マグロ、落ち着いた?」
にゃうー、と返事をして、その場にお座りする。
屈むとマグロの首輪に手紙が巻き付けられているのが見えた。手紙を首輪から外して、折り畳まれているのを開いていく。
『アシュリーへ
元気にしているか?
今年は冬の王が現れた所為で寒さが厳しいな。おまえが冬になるとよく作ってくれたスープが食べたくなる。
こんな状況じゃなければ食べに行くんだが。
夢見鳥が、マレビトがおまえの元に訪れると告げた。
占った結果は吉凶判断不能と出た。
気を付けるように。
パシュパフィッツェ』
「マレビト……?」
「そうみたいです」
魔女がわざわざ教えてくれるという事は、厄介な人が来るのかな。
しかも吉凶判断不能っていうのも信じられない。
魔女の占いが阻害されなければ、どちらかの結果が出る筈なのに。
にゃにゃと鳴いて、マグロが前足で僕の頭を撫でた。
「ありがとう、マグロ」
にゃん、と鳴いてマグロは立ち上がり、扉に向かって走り出した。
「あっ! 扉、閉まってるぞ!」
慌ててラズロさんが追いかける。目の前でマグロは扉に吸い込まれるようにして消える。僕にはいつもの事でも、ラズロさんは初めて見たから信じられないみたいで、目をこすってる。
「アシュリーさん? ワタクシ、昨日そんなに飲んでないと思うんです」
ラズロさんの言い方に笑ってしまう。
「魔法です。ノエルさんたち魔法使いと魔女の魔法は違うんです」
「魔女って、何者なんだ……」
「何者なんでしょうね」
「アシュリー、俺は真剣にだな」
「ラズロさん、一番大きい鍋取ってもらってもいいですか?」
はっ、とした顔になったラズロさんは、慌てて鍋を取ってくれた。
「スマン、ほとんどアシュリーにやらせちまった」
「いえ、マグロが気になるの分かりますから、大丈夫ですよ。あと、魔女に、魔女の事を聞いた事がありますけど、女の神秘はまだおまえには早い、って言われちゃいました」
「魔女、すげーな?」
何に凄いと思ったのか不明だけど、魔女が凄いのは間違いないから頷く。
久々に聴いた。
「ん? 鈴の音か?」
ラズロさんはキョロキョロ辺りを見回して、音の主を探す。
「ラズロさん、上です」
上? と聞き返しながら、ラズロさんは天井を見上げた。
黒い猫が逆さまの状態でお座りしてた。
「のわっ?!」
あり得ない光景に、ラズロさんは身体をのけ反らせて驚いてる。
うん、そうだよね。僕には見慣れた光景だけど、普通はあり得ないもんね。
「マグロ、久しぶり」
手を洗ってキレイにしてから、天井に向けて両手を伸ばすと、黒猫は腕の中に飛び降りて来た。
「あっ、アシュリーさん?! こちらどちら様?!」
ラズロさんの声が裏返ってる。
「魔女の使い魔のマグロです」
黒猫は二股に分かれた尻尾をゆらゆらと揺らし、にぅ、と返事をした。
メルのミルクをマグロに出したら、ネロがやって来て自分にもと催促してきた。
マグロにはそのまま出せるけど、ネロにはちょっと濃いから薄めて出してあげる。
二匹の黒猫の尻尾が、嬉しそうに揺れてる。可愛い。
「魔女の使い魔、なのか?」
ラズロさんはマグロの二股の尻尾を見てる。
村にいた時、いつもミルクをあげていたんだよね。
「そうです。猫又と言う魔物です。元はネロと同じ普通の猫なんですけど」
猫が通常の寿命よりも長く生きれた場合、たまに猫又になるらしい。魔女の猫は猫又なんだって。
「それで、その魔女の使い魔サマがどうしてここに?」
それなんだよね。
「とりあえず、お昼の仕込みに戻りましょう。マグロはミルクを飲み終えてからが長いんです」
「長い?」
「すぐ分かると思います」
厨房に戻って昼の仕込みを始める。
ラズロさんはマグロが気になるらしくて、チラチラ見てる。マグロはミルクを飲み終えたので、口の周りのお掃除を念入りにしてる。たぶんあのままヒゲのお手入れに突入して、それが終わったら全身の手入れになって、床に背中を擦り付けて遊んだ後、こっちに来ると思う。
集中出来ないラズロさんの事はそっとしておいて、僕は酢漬けの野菜を取り出した。
今日のお昼は腸詰と酢漬け野菜の煮込みにする予定。
城の人達も粒マスタードに慣れたみたいで、むしろもっと付けて欲しいと言う人もいるぐらい。
端肉とネギのスープも作っておこうかな。塩、コショウだけの味付けなんだけど、後を引くんだよね。
ラズロさんが待っている間も、マグロは毛繕いをしているし、終わったら遊び始めたので、さすがにラズロさんも諦めたというか、分かってくれたみたいだった。
「アシュリーの言う通り、長いな。アイツ、本当に何しに来たんだ?」
首を傾げるラズロさんに僕は苦笑する。
「魔女やその使い魔は僕たちと感覚が違いますから、気にしちゃ駄目ですよ」
「そういうもんなのか」
「そういうものなんです」
色々と満足したらしいマグロが、僕の足元に来て身体を擦り付ける。
「マグロ、落ち着いた?」
にゃうー、と返事をして、その場にお座りする。
屈むとマグロの首輪に手紙が巻き付けられているのが見えた。手紙を首輪から外して、折り畳まれているのを開いていく。
『アシュリーへ
元気にしているか?
今年は冬の王が現れた所為で寒さが厳しいな。おまえが冬になるとよく作ってくれたスープが食べたくなる。
こんな状況じゃなければ食べに行くんだが。
夢見鳥が、マレビトがおまえの元に訪れると告げた。
占った結果は吉凶判断不能と出た。
気を付けるように。
パシュパフィッツェ』
「マレビト……?」
「そうみたいです」
魔女がわざわざ教えてくれるという事は、厄介な人が来るのかな。
しかも吉凶判断不能っていうのも信じられない。
魔女の占いが阻害されなければ、どちらかの結果が出る筈なのに。
にゃにゃと鳴いて、マグロが前足で僕の頭を撫でた。
「ありがとう、マグロ」
にゃん、と鳴いてマグロは立ち上がり、扉に向かって走り出した。
「あっ! 扉、閉まってるぞ!」
慌ててラズロさんが追いかける。目の前でマグロは扉に吸い込まれるようにして消える。僕にはいつもの事でも、ラズロさんは初めて見たから信じられないみたいで、目をこすってる。
「アシュリーさん? ワタクシ、昨日そんなに飲んでないと思うんです」
ラズロさんの言い方に笑ってしまう。
「魔法です。ノエルさんたち魔法使いと魔女の魔法は違うんです」
「魔女って、何者なんだ……」
「何者なんでしょうね」
「アシュリー、俺は真剣にだな」
「ラズロさん、一番大きい鍋取ってもらってもいいですか?」
はっ、とした顔になったラズロさんは、慌てて鍋を取ってくれた。
「スマン、ほとんどアシュリーにやらせちまった」
「いえ、マグロが気になるの分かりますから、大丈夫ですよ。あと、魔女に、魔女の事を聞いた事がありますけど、女の神秘はまだおまえには早い、って言われちゃいました」
「魔女、すげーな?」
何に凄いと思ったのか不明だけど、魔女が凄いのは間違いないから頷く。
17
あなたにおすすめの小説
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。
石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません
俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。
本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。
幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。
そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。
彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。
それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』
今度もまた年上ヒロインです。
セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。
カクヨムにも投稿中です
天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~
けろ
ファンタジー
【完結済み】
仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!?
過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。
救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。
しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。
記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。
偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。
彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。
「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」
強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。
「菌?感染症?何の話だ?」
滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級!
しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。
規格外の弟子と、人外の師匠。
二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。
これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる