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第一章 新しい生活の始まり
020-4
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イモ肉巻きを食べ終えて、イモのミルク煮を食べていたら、ノエルさんが話し始めた。
「あっちの魔術師の中でも飛び抜けて術式の制御が上手な奴隷がいてね。その子をどうしても連れて帰りたいと魔術師達が言い出して。あっちとしてもその子の事を疎ましく思っていたみたいだから、特に問題なく譲り受ける事が出来たんだよ。年はアシュリーと同じぐらいかな」
沢山いる魔術師の奴隷を、全員譲ってもらう、って言うのは難しいんだろうな。
奴隷かぁ……。話には聞いた事あったけど、本当にいるんだ。
生まれた国が違うだけで、同じスキルを持っていても境遇が変わってしまうんだもんね……。
「魔術師長の養子に入る事になったから、機会があったら会う事もあると思うよ」
奴隷の暮らしがどんなものか分からないけど……その子はこっちに来るのに抵抗はなかったのかな?
家族も、いるのかな……? 本人の気持ちとか……。
炒めたり、煮こんだりしながら、冬の王の討伐での話を聞いた。僕達もこんな事があったよ、と、毎日の事を話していた。
「やっぱりここだったか」
よく通る声がして、振り向くとザックさんがいた。脇に小さな樽を、反対側には大きなカゴを持ってる。
「宵鍋は?」とクリフさんが聞く。
「オレだって花見がしたいんだよ」
そう言ってカゴから料理を取り出す。
「よく今日が花見だって知ってたね?」
不思議そうにノエルさんが尋ねる。
「オレが教えたに決まってるだろ」と言ってラズロさんが笑って、ノエルさんも笑った。
ラズロさんがザックさんに皿とフォークを渡す。
「そりゃ、そうだよね」
ザックさんが持ってきてくれた宵鍋の料理が追加されて、途端に豪華になる。
「参加させてくれ」
トキア様までやって来た! 手にはワインが入ってると思われる瓶を持ってる。
「参加料はこれでいいか?」
みんなが嬉しそうにしている所からして、良い酒、と言う奴なんだろうな。僕も大人になったら、この酒は美味いな、とか言うのかな。
「アシュリーにもある」
そう言ってトキア様は、僕に紙に包まれた揚げた菓子をくれた。平に伸ばした生地をねじった生地を、油で揚げて、砂糖をまぶした菓子。
高いからあんまり買わないんだけど、渡された袋の中には菓子が五本も入ってる。嬉しい! 嬉しいけど、全部僕がもらう訳にはいかないよね。
「全部、アシュリーにだ」
トキア様の目が優しく細められる。表情はあまり変わらないトキア様だけど、嬉しい時とかに、こうして目を細める。その顔が優しくて僕は好き。
「ありがとうございます!」
六人になったので、改めて乾杯をした。
ザックさんが持って来てくれた料理は、この前宵鍋で食べた祝い鶏だった。またこれが食べられるなんて思わなかったから、嬉しい。
ノエルさんも好きみたいで、祝い鶏だ、と嬉しそうな声をあげる。クリフさんもトキア様も嬉しそう。
「なかなか宵鍋に顔を見せないからな、こうして持ってきてやった」
ザックさんはそう言って、祝い鶏に切れ目を入れていって、みんなの皿にふるまっていく。
食べたり喋ったりしていたら、ザックさんが歌い出した。太くてしっかりした声、って言うのか、響く歌声で、気持ちが落ち着いてくる。
それに合わせてみんなが歌う。僕は歌詞を知らないけど、音に合わせて揺れてみたりした。
歌って、飲んで、食べて。
足りなくなってたらラズロさんが材料を取り出してきたもので、僕、ラズロさん、ザックさんの三人で料理する。
「いい夜だ」
料理で火の側にいたからなのか、日が暮れようとしてるのに気がつくのが遅かった。
風が吹くと、スオウの樹の枝が揺れて、葉と葉、花と花が触れてるからなのか、ザザァ、と音がする。その風に、花の香りが混ざって、いいにおい。
ぽっかりと空に浮かぶ月は、半分ほど欠けているけど、地上にいる僕たちを照らしてくれるから、明るい。
みんな何も言わないで、月を見る。
濃い黄色い月は、光ってキレイだった。
「また来年も、こうして花見に来ようぜ」
ラズロさんの言葉にみんな頷く。
「あっちの魔術師の中でも飛び抜けて術式の制御が上手な奴隷がいてね。その子をどうしても連れて帰りたいと魔術師達が言い出して。あっちとしてもその子の事を疎ましく思っていたみたいだから、特に問題なく譲り受ける事が出来たんだよ。年はアシュリーと同じぐらいかな」
沢山いる魔術師の奴隷を、全員譲ってもらう、って言うのは難しいんだろうな。
奴隷かぁ……。話には聞いた事あったけど、本当にいるんだ。
生まれた国が違うだけで、同じスキルを持っていても境遇が変わってしまうんだもんね……。
「魔術師長の養子に入る事になったから、機会があったら会う事もあると思うよ」
奴隷の暮らしがどんなものか分からないけど……その子はこっちに来るのに抵抗はなかったのかな?
家族も、いるのかな……? 本人の気持ちとか……。
炒めたり、煮こんだりしながら、冬の王の討伐での話を聞いた。僕達もこんな事があったよ、と、毎日の事を話していた。
「やっぱりここだったか」
よく通る声がして、振り向くとザックさんがいた。脇に小さな樽を、反対側には大きなカゴを持ってる。
「宵鍋は?」とクリフさんが聞く。
「オレだって花見がしたいんだよ」
そう言ってカゴから料理を取り出す。
「よく今日が花見だって知ってたね?」
不思議そうにノエルさんが尋ねる。
「オレが教えたに決まってるだろ」と言ってラズロさんが笑って、ノエルさんも笑った。
ラズロさんがザックさんに皿とフォークを渡す。
「そりゃ、そうだよね」
ザックさんが持ってきてくれた宵鍋の料理が追加されて、途端に豪華になる。
「参加させてくれ」
トキア様までやって来た! 手にはワインが入ってると思われる瓶を持ってる。
「参加料はこれでいいか?」
みんなが嬉しそうにしている所からして、良い酒、と言う奴なんだろうな。僕も大人になったら、この酒は美味いな、とか言うのかな。
「アシュリーにもある」
そう言ってトキア様は、僕に紙に包まれた揚げた菓子をくれた。平に伸ばした生地をねじった生地を、油で揚げて、砂糖をまぶした菓子。
高いからあんまり買わないんだけど、渡された袋の中には菓子が五本も入ってる。嬉しい! 嬉しいけど、全部僕がもらう訳にはいかないよね。
「全部、アシュリーにだ」
トキア様の目が優しく細められる。表情はあまり変わらないトキア様だけど、嬉しい時とかに、こうして目を細める。その顔が優しくて僕は好き。
「ありがとうございます!」
六人になったので、改めて乾杯をした。
ザックさんが持って来てくれた料理は、この前宵鍋で食べた祝い鶏だった。またこれが食べられるなんて思わなかったから、嬉しい。
ノエルさんも好きみたいで、祝い鶏だ、と嬉しそうな声をあげる。クリフさんもトキア様も嬉しそう。
「なかなか宵鍋に顔を見せないからな、こうして持ってきてやった」
ザックさんはそう言って、祝い鶏に切れ目を入れていって、みんなの皿にふるまっていく。
食べたり喋ったりしていたら、ザックさんが歌い出した。太くてしっかりした声、って言うのか、響く歌声で、気持ちが落ち着いてくる。
それに合わせてみんなが歌う。僕は歌詞を知らないけど、音に合わせて揺れてみたりした。
歌って、飲んで、食べて。
足りなくなってたらラズロさんが材料を取り出してきたもので、僕、ラズロさん、ザックさんの三人で料理する。
「いい夜だ」
料理で火の側にいたからなのか、日が暮れようとしてるのに気がつくのが遅かった。
風が吹くと、スオウの樹の枝が揺れて、葉と葉、花と花が触れてるからなのか、ザザァ、と音がする。その風に、花の香りが混ざって、いいにおい。
ぽっかりと空に浮かぶ月は、半分ほど欠けているけど、地上にいる僕たちを照らしてくれるから、明るい。
みんな何も言わないで、月を見る。
濃い黄色い月は、光ってキレイだった。
「また来年も、こうして花見に来ようぜ」
ラズロさんの言葉にみんな頷く。
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