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第二章 マレビト
021-1
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夢見鳥が、マレビトがおまえの元に訪れると告げた。
占った結果は吉凶判断不能と出た。
気を付けるように。
ノエルさんに紹介された、僕よりちょっと年上に見える少年を見た時、魔女からの手紙に書かれた言葉が頭に浮かんだ。
「彼の名前はナインだよ、アシュリー」
真っ黒い髪に赤い目。どちらもはっきりした色で、自己主張があるのに、俯きがちで、表情は暗い。
「はじめまして、アシュリーです」
お辞儀をしたら、お辞儀を返してくれた。
「はっきりとは分からないけど、アシュリーと年齢は変わらないんじゃないかな。見て分かる通り男の子だよ」
ノエルさんの言葉に頷く。
「さっそくで申し訳ないんだけど、ナインに何か食べさせてあげてくれないかな? 年齢の割に成長が遅れているようだから」
それは、奴隷として生きてきたからだろうと思う。
僕も成長が遅いなんて言われてるけど、ナインさんのはそうじゃない。僕の力でも強く握ったら折れてしまいそうなぐらい、細い腕をしていた。
「分かりました。ノエルさんも食べますか?」
「うん、お願いします」
ナインさんの事はおまけだったんじゃないかな、って言いたくなるぐらいの笑顔で、ノエルさんは頷いた。
とは言っても、お昼が終わった後で、大したものは残ってないんだけど。そういえばノエルさん、お昼に大盛りで食べてなかったかな……?
タマネギを二個薄切りにして、熱してオイルを垂らしておいたフライパンに入れる。タマネギの水分が早く出ていくように、塩を振りかけておく。
ジュワジュワ、と良い音をさせるタマネギ。
「既に良い匂いと音に五感が刺激されるんだけど、アシュリー、何を作ってるの?」
「タマネギスープです」
今すぐに作れそうなのは、タマネギを炒めて作るタマネギスープぐらいだった。パンをスープに入れて上からチーズをとろけさせたら出来るし、パンもふやけるし、おなかにも優しいし。
「ラズロは?」
「食材を買いに行ってます」
僕はお留守番。
「アシュリーは一緒に行かないの?」
「僕はこれから夕食の仕込みがあるんです」
「こんな早い時間から仕込むって事は、手の込んだものを作るの?」
ノエルさんが目をキラキラさせながら聞いてくる。
「今日はラズロさんがお店の人の押しに負けて沢山買ったキャベツで、最後の端肉を包んでスープに浸して食べる奴です」
「なにそれ、美味しそう」
生でも食べられるキャベツだけど、ラズロさんが買ったキャベツは、春に採れたとは思えない程に皮が厚い。つまり固い。そのまま食べるより、煮た方が食べやすそうだし、皮が厚くて丈夫だから、具材を包んで煮込んでも破れなさそうだな、と思って。
余りの野菜やらなんやらを端肉とまぜて、キャベツで包んで、塩コショウのスープで煮込む。
「良かったら食べに来て下さいね」
「絶対食べに来る」
茶色くなったタマネギに、水とコショウを足し入れて沸騰させる。煮立ったスープを器に注いで、上にパンをのせて、細かく切ったチーズをのせる。火の魔法でチーズの表面をとろけさせて、出来上がり。
タマネギスープとスプーンを、ノエルさんとナインさんに渡す。
「んー! 良い匂いー!」
とろけるチーズとパンをすくったスプーンを口に入れるノエルさん。ナインさんはノエルさんの真似をして、スープを口に入れた。目を見開いて、まじまじとスープを見つめる。
「アシュリーの作る食事はとっても美味しいから、毎日の楽しみにすると良いよ」
ノエルさんがそう言うと、ナインさんは顔を上げて、まばたきを二回して、僕を見た。
「食べに来て下さいね」
スプーンを口に当てたまま、ナインさんは小さく頷いた。僕とノエルさんは目を合わせて、笑顔になった。
僕やラズロさんが作る料理を、ナインさんが気に入ってくれたら良いな。
占った結果は吉凶判断不能と出た。
気を付けるように。
ノエルさんに紹介された、僕よりちょっと年上に見える少年を見た時、魔女からの手紙に書かれた言葉が頭に浮かんだ。
「彼の名前はナインだよ、アシュリー」
真っ黒い髪に赤い目。どちらもはっきりした色で、自己主張があるのに、俯きがちで、表情は暗い。
「はじめまして、アシュリーです」
お辞儀をしたら、お辞儀を返してくれた。
「はっきりとは分からないけど、アシュリーと年齢は変わらないんじゃないかな。見て分かる通り男の子だよ」
ノエルさんの言葉に頷く。
「さっそくで申し訳ないんだけど、ナインに何か食べさせてあげてくれないかな? 年齢の割に成長が遅れているようだから」
それは、奴隷として生きてきたからだろうと思う。
僕も成長が遅いなんて言われてるけど、ナインさんのはそうじゃない。僕の力でも強く握ったら折れてしまいそうなぐらい、細い腕をしていた。
「分かりました。ノエルさんも食べますか?」
「うん、お願いします」
ナインさんの事はおまけだったんじゃないかな、って言いたくなるぐらいの笑顔で、ノエルさんは頷いた。
とは言っても、お昼が終わった後で、大したものは残ってないんだけど。そういえばノエルさん、お昼に大盛りで食べてなかったかな……?
タマネギを二個薄切りにして、熱してオイルを垂らしておいたフライパンに入れる。タマネギの水分が早く出ていくように、塩を振りかけておく。
ジュワジュワ、と良い音をさせるタマネギ。
「既に良い匂いと音に五感が刺激されるんだけど、アシュリー、何を作ってるの?」
「タマネギスープです」
今すぐに作れそうなのは、タマネギを炒めて作るタマネギスープぐらいだった。パンをスープに入れて上からチーズをとろけさせたら出来るし、パンもふやけるし、おなかにも優しいし。
「ラズロは?」
「食材を買いに行ってます」
僕はお留守番。
「アシュリーは一緒に行かないの?」
「僕はこれから夕食の仕込みがあるんです」
「こんな早い時間から仕込むって事は、手の込んだものを作るの?」
ノエルさんが目をキラキラさせながら聞いてくる。
「今日はラズロさんがお店の人の押しに負けて沢山買ったキャベツで、最後の端肉を包んでスープに浸して食べる奴です」
「なにそれ、美味しそう」
生でも食べられるキャベツだけど、ラズロさんが買ったキャベツは、春に採れたとは思えない程に皮が厚い。つまり固い。そのまま食べるより、煮た方が食べやすそうだし、皮が厚くて丈夫だから、具材を包んで煮込んでも破れなさそうだな、と思って。
余りの野菜やらなんやらを端肉とまぜて、キャベツで包んで、塩コショウのスープで煮込む。
「良かったら食べに来て下さいね」
「絶対食べに来る」
茶色くなったタマネギに、水とコショウを足し入れて沸騰させる。煮立ったスープを器に注いで、上にパンをのせて、細かく切ったチーズをのせる。火の魔法でチーズの表面をとろけさせて、出来上がり。
タマネギスープとスプーンを、ノエルさんとナインさんに渡す。
「んー! 良い匂いー!」
とろけるチーズとパンをすくったスプーンを口に入れるノエルさん。ナインさんはノエルさんの真似をして、スープを口に入れた。目を見開いて、まじまじとスープを見つめる。
「アシュリーの作る食事はとっても美味しいから、毎日の楽しみにすると良いよ」
ノエルさんがそう言うと、ナインさんは顔を上げて、まばたきを二回して、僕を見た。
「食べに来て下さいね」
スプーンを口に当てたまま、ナインさんは小さく頷いた。僕とノエルさんは目を合わせて、笑顔になった。
僕やラズロさんが作る料理を、ナインさんが気に入ってくれたら良いな。
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