前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

文字の大きさ
98 / 271
第二章 マレビト

025-1

しおりを挟む
 ナインさんの記憶に関する検査は、今の所問題ないと言うことになったみたい。
 絶対と言い切れないのが何とも言えない気持ちになるけど、当の本人のナインさんが気にしていないんだから、良いのかな、って。

「思い出してから、何年も経つ。だから、平気」

 ナインさんは全然気にしてないみたい。

「アシュリー、ダンジョンメーカーのスキル、使うの禁止されてる?」

「禁止してはいないよ」と、ノエルさんが否定した。僕も頷く。

「使い方が分からないんです。でも、このままでも良いかな、って思ってます」

 どう使ったら良いのかも分からないけど、どんな使い方があるのか、思い付かないし。
 使えなくても他のスキルで十分快適な生活を送れているから、必要も感じないんだけどね。

 ナインさんがノエルさんを見る。

「教えたら、ノエルさん、怒る?」

 困った顔をするノエルさんと、ノエルさんをまっすぐに見返すナインさん。

「うーん……使い方が決まらない事には、許可しづらいのが正直な所なんだよね」

「アシュリー、魔力少ない。作れても、四つの層が限界と思う」

「四つも層を作れるんですか?」

 自分で思っていたよりも多くてびっくりした。

「ナインはアシュリーにスキルを使わせたいの?」

 ノエルさんの質問にナインさんが頷いた。
 どうして使わせたいんだろう?

「ダンジョン、作った人間の好きなように出来る。もっと動物をテイムして、そこで育てたり出来る」

 ノエルさんは難しい顔をする。

「スキルで作ったダンジョンの特性とか、つまり何が可能なのかが知りたい。知らない事には危険度も分からない」

 オイオイ、とラズロさんが止めに入る。

「アシュリーにそのスキルを使わせない為に保護したんじゃねぇのか?」

 ノエルさんは頷いた。

「それは勿論だよ。でも、このスキルに関しては情報が少な過ぎるんだ。ナインの前世であるクロウリーの使用方法が極端な方向だった為に危険視されているけれど、別の利用方法があるのではないかとはずっと言われてきた」

 チッ、とラズロさんが舌打ちする。

「これだから研究馬鹿は嫌いなんだよ。そう言ってこれまでだって散々痛い目にあってきたのは、オレたちのような普通の人間だ。これで何かあった時、アシュリーに責任押し付けて、何かしようとしたら絶対に許さねえぞ?」

 いつものラズロさんからは想像もつかない低い声、強い口調にびっくりして、何も言えないでいると、ノエルさんも強い口調で言い返した。

「そんなのは分かってる。ただ、今のままじゃ、アシュリーはずっとここに閉じ込められたままになるんだよ?
アシュリーは何も悪くないし、悪い事に使う筈がないって分かってるのに!」

「ノエル、おまえ……」

「ナインの事だってそうだ。皆、危険視ばかりする。この二人が何をしたの? 何もしてない。何かしてからじゃ遅いと言って閉じ込めて、その方が二人の心を傷付けて、むしろ危険な方向に向かわせる可能性だってある。
僕の魔法の力だってそうだ。どんな力も使う者の心次第なんだよ。正しく導くのが、大人のすべき事だ」

 ラズロさんは息を吐くと、「悪かった」と言った。

「……ノエルさん」

 ナインさんがノエルさんのローブを掴んで引っ張る。

「平気。ノエルさん達、ちゃんと考えてくれてる、知ってる」

 ナインさんの頭を、ノエルさんが撫でる。

 ノエルさんは、僕を村から王都に連れて来た事、そんな風に思ってくれていたんだな。

「ありがとうございます、ノエルさん」

「アシュリー」

 ノエルさんの赤い目が、いつもと違って不安そうというか、泣きそうと言うか。
 上手く言えないんだけど、なんだか嬉しいのに、涙が出てきそうだった。

「村を出る事になって、家族と離れ離れになった事は寂しいですけど、良い事もありました。だから、大丈夫です」

 僕の名前を呼んだノエルさんに、抱き締められた。

「守るから、アシュリーが好きな場所に暮らせるように、好きな場所に行けるように、絶対に方法を見つけ出すからね」

「ナイン、手伝う。クロウリーの記憶、アシュリーの役に立つ」

「ありがとうございます」

 村に帰りたいからじゃなくて、僕の事をそこまで考えてくれている人が存在する事が嬉しくて、泣いてしまった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。

石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません 俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。 本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。 幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。 そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。 彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。 それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』 今度もまた年上ヒロインです。 セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。 カクヨムにも投稿中です

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...