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第二章 マレビト
027-1
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もやもやしている時に麺を作ると、少し落ち着く。
ただ、それだとトキア様にお昼を食べてもらえない事に気付いて、パンをこねる事にした。
「アシュリーも人の子なんだなぁ」
パンをこねていたら、ラズロさんに言われた。
なんかちょっと、ひっかかる言い方だよね。
「人の子ですよ?」
「ホラ、おまえって年齢詐称疑惑な訳だろ?」
してません。
「オレも規格外な存在が側にいて、比較的肝が座ってる方だと思ってたけどな、アシュリーのはその上をいくよなぁ」
パフィ達の事かな。
聞き流しながらパンをこねていく。
少しずつ生地の色が同じ色になっていく。こねると美味しくなるけど、生地の乾燥には注意しないとね。
「しかもそんな存在に揉まれても平然としてるんだから、コイツ、やっぱり年齢詐称してんじゃねぇのかな、と二度目の疑いを抱いていた訳よ」
疑われても、僕の年齢は変わらないけどな。
しかも二度めなの?
「でもこうして、心を落ち着ける為に一心不乱にパンを捏ねてる姿に、あぁ、アシュリーも人の子だったんだな、と思った訳だ」
「それ、逆じゃないの?」
ノエルさんが入ってきてラズロさんの言葉を即否定した。
ラズロさんの横に座るノエルさん。
「むしろアシュリーの年齢で、心の安定をはかる為に麺やらパンを捏ねている、の方がよっぽど年齢詐称感が出てると思うけど」
ラズロさんが、今気付いた、と言わんばかりの顔になってる。
「僕のやっている事のほとんどは、パフィの教えそのままですから、子供らしくないのは自覚あります」
"おまえはその中途半端なスキルと今後も付き合わねばならん。その事実がおまえの心を苛むだろう。
己ではどうしようもないものに立ち向かわねばならぬ事ほど、人の心を折る。
忘れるな。スキルだけが人の価値を決める訳ではない"
パフィから繰り返し教えてもらった言葉を二人に話すと、しんみりされた。
「適当に生きててすみません」とラズロさん。
「魔法のスキルに優れてるのに、それについて面倒くさいとか思ってすみませんでした……」とノエルさん。
二人があんまりしょげるから笑ってしまった。
「今の僕はスキルの事で辛いと思ってないので、大丈夫です。もし思ってそうな人がいたら、助けてあげて下さい」
僕が、パフィの言葉に救われたように。
同じ事でうじうじと悩んでいた僕に、何度も同じ言葉で励ましてくれたパフィ。
父さんに母さん。兄さんもそうだった。
離れたからこそ、そのありがたさに気付けた。もっと早くに気付けたなら、もっとありがとうって言えたのに。
「ノエルさん、休憩ですか?」
何か飲み物を出そうかな、と思って聞くと、首を横に振られた。
「アシュリーにダンジョンメーカーのスキルを使ってもらう事が正式に決まるって事を言いに来たんだ」
どきりとする。
「この前教えてもらったアマーリアーナ様との話の内容は、僕達からすると恐ろしい内容でもあるんだけどね」
そう言ってノエルさんが困ったように笑った。
「アシュリーの力はパシュパフィッツェ様以外の魔女全てから狙われている可能性が高い」
簡単に人の国を滅ぼせる魔女が、欲しがるなにか。
「大人の、汚い話をしてしまうけど、アシュリーの存在は毒にも薬にもなる存在なんだよ。
今、僕達の国はパシュパフィッツェ様の知識と技術を必要としてて、アシュリーはその魔女の庇護下にある。
そんなアシュリーを利用したいと、思ってる人間が──僕を含めてだけど、いてね」
ラズロさんの眉間に皺がよる。
「アシュリーの意思を確認しないまま話が進んでいて、凄く不愉快だろうと思う。
僕とクリフがアシュリーを連れ出さなければ、アシュリーは穏やかに過ごせていたと思うのに」
ノエルさんが頭を下げる。
「それでも僕は、アシュリーに助けて欲しい。勝手を言ってごめん。代わりに、なんでもするから」
「勝手な大人は頭を下げないと思います」
顔を上げたノエルさんが困った顔のまま、「これも演技かも知れないでしょ?」と言う。
「パフィに守られている僕に嘘をついて、ですか?」
ノエルさんの笑顔が固まる。
「パフィは僕たちの嘘なんて簡単に見抜いてしまいます。そんなパフィが、ノエルさんとクリフさんなら信用出来ると言ってましたし、長いつきあいじゃなくても、僕もお二人のことを信じてます」
「アシュリー」
ノエルさんは氷の魔法師って言われているんだって。得意魔法の話ではなくって、カッコいいけど冷たい、表情が変わらないことから、そう呼ばれているらしいのに、今のノエルさんはカッコいいからは程遠くて。
「パフィのことを信じ過ぎると言われるかも知れませんけど、スキルを知っていても僕にスキルを使わせようとしなかった。それだけでパフィが僕のことを考えてくれていることが分かります。
パフィが大丈夫だと言ったノエルさんたちを僕は信じます。僕に、力の正しい使い方を教えて下さい」
ノエルさんが突然立ち上がると、厨房の中にいる僕の方まで回って来て、僕を抱きしめた。
「約束します。
僕も、クリフも、ティールも、トキア様も、ブランシェ公も、アシュリーのスキルを悪いことに使わないって約束するよ」
「ま、そんなことしたら国が滅ぶしなぁ」
ラズロさん、今、多分、とっても良い雰囲気です。壊しちゃ駄目ですよ……。
ただ、それだとトキア様にお昼を食べてもらえない事に気付いて、パンをこねる事にした。
「アシュリーも人の子なんだなぁ」
パンをこねていたら、ラズロさんに言われた。
なんかちょっと、ひっかかる言い方だよね。
「人の子ですよ?」
「ホラ、おまえって年齢詐称疑惑な訳だろ?」
してません。
「オレも規格外な存在が側にいて、比較的肝が座ってる方だと思ってたけどな、アシュリーのはその上をいくよなぁ」
パフィ達の事かな。
聞き流しながらパンをこねていく。
少しずつ生地の色が同じ色になっていく。こねると美味しくなるけど、生地の乾燥には注意しないとね。
「しかもそんな存在に揉まれても平然としてるんだから、コイツ、やっぱり年齢詐称してんじゃねぇのかな、と二度目の疑いを抱いていた訳よ」
疑われても、僕の年齢は変わらないけどな。
しかも二度めなの?
「でもこうして、心を落ち着ける為に一心不乱にパンを捏ねてる姿に、あぁ、アシュリーも人の子だったんだな、と思った訳だ」
「それ、逆じゃないの?」
ノエルさんが入ってきてラズロさんの言葉を即否定した。
ラズロさんの横に座るノエルさん。
「むしろアシュリーの年齢で、心の安定をはかる為に麺やらパンを捏ねている、の方がよっぽど年齢詐称感が出てると思うけど」
ラズロさんが、今気付いた、と言わんばかりの顔になってる。
「僕のやっている事のほとんどは、パフィの教えそのままですから、子供らしくないのは自覚あります」
"おまえはその中途半端なスキルと今後も付き合わねばならん。その事実がおまえの心を苛むだろう。
己ではどうしようもないものに立ち向かわねばならぬ事ほど、人の心を折る。
忘れるな。スキルだけが人の価値を決める訳ではない"
パフィから繰り返し教えてもらった言葉を二人に話すと、しんみりされた。
「適当に生きててすみません」とラズロさん。
「魔法のスキルに優れてるのに、それについて面倒くさいとか思ってすみませんでした……」とノエルさん。
二人があんまりしょげるから笑ってしまった。
「今の僕はスキルの事で辛いと思ってないので、大丈夫です。もし思ってそうな人がいたら、助けてあげて下さい」
僕が、パフィの言葉に救われたように。
同じ事でうじうじと悩んでいた僕に、何度も同じ言葉で励ましてくれたパフィ。
父さんに母さん。兄さんもそうだった。
離れたからこそ、そのありがたさに気付けた。もっと早くに気付けたなら、もっとありがとうって言えたのに。
「ノエルさん、休憩ですか?」
何か飲み物を出そうかな、と思って聞くと、首を横に振られた。
「アシュリーにダンジョンメーカーのスキルを使ってもらう事が正式に決まるって事を言いに来たんだ」
どきりとする。
「この前教えてもらったアマーリアーナ様との話の内容は、僕達からすると恐ろしい内容でもあるんだけどね」
そう言ってノエルさんが困ったように笑った。
「アシュリーの力はパシュパフィッツェ様以外の魔女全てから狙われている可能性が高い」
簡単に人の国を滅ぼせる魔女が、欲しがるなにか。
「大人の、汚い話をしてしまうけど、アシュリーの存在は毒にも薬にもなる存在なんだよ。
今、僕達の国はパシュパフィッツェ様の知識と技術を必要としてて、アシュリーはその魔女の庇護下にある。
そんなアシュリーを利用したいと、思ってる人間が──僕を含めてだけど、いてね」
ラズロさんの眉間に皺がよる。
「アシュリーの意思を確認しないまま話が進んでいて、凄く不愉快だろうと思う。
僕とクリフがアシュリーを連れ出さなければ、アシュリーは穏やかに過ごせていたと思うのに」
ノエルさんが頭を下げる。
「それでも僕は、アシュリーに助けて欲しい。勝手を言ってごめん。代わりに、なんでもするから」
「勝手な大人は頭を下げないと思います」
顔を上げたノエルさんが困った顔のまま、「これも演技かも知れないでしょ?」と言う。
「パフィに守られている僕に嘘をついて、ですか?」
ノエルさんの笑顔が固まる。
「パフィは僕たちの嘘なんて簡単に見抜いてしまいます。そんなパフィが、ノエルさんとクリフさんなら信用出来ると言ってましたし、長いつきあいじゃなくても、僕もお二人のことを信じてます」
「アシュリー」
ノエルさんは氷の魔法師って言われているんだって。得意魔法の話ではなくって、カッコいいけど冷たい、表情が変わらないことから、そう呼ばれているらしいのに、今のノエルさんはカッコいいからは程遠くて。
「パフィのことを信じ過ぎると言われるかも知れませんけど、スキルを知っていても僕にスキルを使わせようとしなかった。それだけでパフィが僕のことを考えてくれていることが分かります。
パフィが大丈夫だと言ったノエルさんたちを僕は信じます。僕に、力の正しい使い方を教えて下さい」
ノエルさんが突然立ち上がると、厨房の中にいる僕の方まで回って来て、僕を抱きしめた。
「約束します。
僕も、クリフも、ティールも、トキア様も、ブランシェ公も、アシュリーのスキルを悪いことに使わないって約束するよ」
「ま、そんなことしたら国が滅ぶしなぁ」
ラズロさん、今、多分、とっても良い雰囲気です。壊しちゃ駄目ですよ……。
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