前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第二章 マレビト

033-1

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 予想通り二日酔いになって、食堂のテーブルに突っ伏しているラズロさん。
 タマネギスープは食べられたみたいだけど、それでもまだ辛そう。そんなラズロさんの頭を、マグロの二又のしっぽがパシパシと叩いてる。
 どうも、連れて行かなかった事を怒ってるみたい。
 パフィもお酒、大好きだからね。

 僕はひたすら茹でたジャガイモを潰している。クロケットを作る為に。
 帰りにレシピを書いたメモをザックさんからもらったんだけど、そこに、刻んで炒めておいたタマネギを、茹でたジャガイモに混ぜると旨い、肉も入ると更に旨い、と書いてあった。
 肉はひき肉にして、タマネギのみじん切りと炒めてボウルに入れて冷ましているところ。
 一人での作業だからちょっと時間がかかるけど、お昼の少し前からクロケットを揚げれば良いから、間に合うと思う。
 ザックさんの言う変わり種のマヨネーズは、ジャガイモのクロケットには合わなさそうだけど、僕も別の料理で使ってみたいな。今日のクロケット用には、ザックさんにお土産だともらったケチャップ。
 トマトの酸味と甘味がする美味しいケチャップだったから、クロケットはちょっと濃いめの味付けにするんだ。

『まったく……』

 ラズロさんの頭をしっぽで叩くのに飽きたのか、パフィがやって来た。

『クロケットか?』

「うん。タマネギとひき肉も入るから、パフィ好みのクロケットになると思うから、楽しみにしててね」

『たっぷりだぞ?』

「分かってるよ」



 茹で上がって粗く潰し終えたジャガイモに、炒めたひき肉とタマネギを加えた。
 塩と胡椒を加えて、よくかき混ぜる。かき混ざったらそれを僕の片手で掴んだぐらいに分けて並べていく。

「あーーーー……悪ぃ、本当にスマン」

 げっそりした顔のラズロさんが厨房にやって来た。
 まだ顔色おかしいけど。大丈夫なのかな。
 勢いよく両手で頰をバチンバチン、と叩くと、せっけんで念入りに手を洗って僕の横に立つ。頰が真っ赤で痛そうだけど、それには触れちゃいけないんだろうな。

「クロケットか? タマネギとひき肉が入ってんのか。旨そうだな。……食えそうにないけど」

 最後のひと言に思わず笑ってしまった。まだ、辛そう。

「イースタンから、他の国で食ったクロケットの話を聞いたんだけどな、ジャガイモの周りに、粉を付けてから卵を付けるより、良いやり方があるらしいぞ」

「良いやり方ですか?」

 そうだ、とラズロさんが頷く。

「粉と水と卵を最初から混ぜておくんだと。そこにパン粉を付けたほうがキレイにつくんだってよ」

「へぇーっ! やってみたいです」

「おぅよ。ちょっと粉取ってくるわ」

 いつもは形を整えたジャガイモ種を粉でまぶしてから溶き卵にくぐらせて、パン粉をまぶす。粉と卵を混ぜておくのだと、手順も減って作りやすくなるなぁ。

 ラズロさんに教えてもらった通り、とき卵に粉と水を加えてよくかき混ぜてから、ジャガイモ種につけた。その後にパン粉を付ける。

「いつもよりパン粉がキレイにくっついてる気がします!」

 これなら、僕が液体に付けて、ラズロさんがパン粉を付ける、ってやれそう!

「おぅ。いつもよりまんべんなくパン粉が付いてる感じするわ」

 作業工程が一つ減ったから、キャベツの千切りも焦らずに作れた。

「タマネギの酢漬けも添えるか?」

「はい。タマネギも余ってますからね」

 フルールにあげたりもしてるけど、さすがに荷台いっぱいに乗ったタマネギはすぐには減らない。
 そう言った野菜はどんどんザックさんからもらった白ワインビネガーに漬けておく。そうしておけば日持ちもするし、品数も増えるから、みんなにも好評だったりする。

「香辛料がもう少し安くなんねぇかなぁ」

 はぁ、とラズロさんがため息を吐く。

「あ、そうだ。ナインさんが香辛料をダンジョンで育てたらどうかって言ってました」

「育てられんのか!?」

 興奮するラズロさん。

「出来るんじゃないか、ってナインさんは言ってたけど、分からないです」

『いけるだろう』

 すっかり寛いでるパフィがしっぽを揺らしながら言った。

『あの記憶持ち、なかなかに良い提案をするではないか。
香辛料だけでなく薬草ハーブも育てれば料理の幅も広がるな』

 にやり、と笑うパフィ。
 みんなの為じゃなく、自分の為だろうなぁ、きっと。
 でも、香辛料や薬草ハーブがあれば、確かに色んな味の料理が作れそうだよね。
 王都の周りは平地が多いから、山でしか採れないような薬草があったら、色々と良いとは思う。

『これで飲み放題だな』

 ……やっぱり。
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