150 / 271
第三章 ダンジョンメーカーのお仕事
037-2
しおりを挟む
夕食を食べ終えて、お風呂にも入って、自分の部屋のベッドの上で海の絵を見ていた。
青い海と青い空。
明日、海とダンジョンが繋がる。なんだかちょっと、想像がつかない。
『おまえは海を見た事が無かったな』
思い出したようにパフィが言った。
「うん」
『どれ、ちょっと見せてやろう』
見せる?
マグロのしっぽがぐるぐると回り、僕の目の前で何かがポン、と音をたてて弾けた。
びっくりして目を閉じてしまった。目を開けると、目の前にはさっきとは違う景色が広がっていた。
「パフィ、これ……?」
『おまえの目と、海鳥の目を同調させた。少しの間しか出来ないからな、よく見ておけ』
うみどり。
「どうして明るいの?」
『この国と違ってまだ昼間の場所を選んだからに決まっているだろう』
まだ昼間の場所……?
うみどり──海の側で生活する鳥のことかな──の目になっている僕の前には、右を見ても左を見ても変わらない景色が広がっている。
村にあった公衆浴場よりも大きな水がある。こんなに沢山の水、溜めるのも大変そう。パフィみたいな魔女が注いだんだろうか?
ラズロさんが言ってように、海は大きくて、何処までも続いてて、終わりが見えなかった。
絵と同じで青いのに、透けていて、でも底が見えない。
同調してる海鳥が飛び上がったのか、どんどん海が離れていく。飛んだんだろうな。
海が見えなくなってしまうかと思ったのに、海鳥の目にはまだ、海が見える。
何処までも広がる海は遠くに見える線まで続いてた。
ポン、と音がして、僕の視界は突然狭くなった。
『時間切れだ』
パフィのかけてくれたまじないが切れたみたいで、僕は自分の部屋にいた。ずっと身体はここにあったんだけど、目にしたものは違うものだったから、変な感じ。
ほんの少しの時間だったけど、海が見れた。
ラズロさんが言った通り、海は想像よりも大きくて、空は天井が見えないぐらい高くて、広かった。
自分がちっぽけに見えるという気持ちが、ちょっとだけ分かった。
僕は目でしか感じられなかったけど、その場に行ったらもっと、色んなものを感じたんだろうな。
「ありがとう、パフィ」
『礼は要らん。これは私の為でもある』
パフィの為?
僕を見てにやり、とパフィが笑った。
『裏庭のダンジョンに海の層を作ると言ったろう。その為にもより本物に近い海をおまえに見せる必要があったのだ』
「……パフィって、魚介類、好きだったんだね」
『海のものも山のものも里のものも、どれも好きだがな、最近海産物を口にしていない事を思い出した』
パフィの言う最近は百年単位だから、確かに長い間食べてない。
「あの独特のにおいが、僕はちょっと苦手なんだよね」
『鮮度だ』
「鮮度?」
『野菜も採れたての方が美味いだろう。魚介も同じだ。
あぁ、楽しみだ!』
そう言ってパフィはベッドでごろん、と横になる。
これが混沌の魔女と同調してる使い魔、って言ってもみんな信じないだろうなぁ……。
『浅瀬で獲れるものと言ったら、まず、貝だな! 塩焼き、酒蒸し、バター焼き! アヒージョも捨てがたい!』
実は凄い好きなんじゃないかな、魚介類。
青い海と青い空。
明日、海とダンジョンが繋がる。なんだかちょっと、想像がつかない。
『おまえは海を見た事が無かったな』
思い出したようにパフィが言った。
「うん」
『どれ、ちょっと見せてやろう』
見せる?
マグロのしっぽがぐるぐると回り、僕の目の前で何かがポン、と音をたてて弾けた。
びっくりして目を閉じてしまった。目を開けると、目の前にはさっきとは違う景色が広がっていた。
「パフィ、これ……?」
『おまえの目と、海鳥の目を同調させた。少しの間しか出来ないからな、よく見ておけ』
うみどり。
「どうして明るいの?」
『この国と違ってまだ昼間の場所を選んだからに決まっているだろう』
まだ昼間の場所……?
うみどり──海の側で生活する鳥のことかな──の目になっている僕の前には、右を見ても左を見ても変わらない景色が広がっている。
村にあった公衆浴場よりも大きな水がある。こんなに沢山の水、溜めるのも大変そう。パフィみたいな魔女が注いだんだろうか?
ラズロさんが言ってように、海は大きくて、何処までも続いてて、終わりが見えなかった。
絵と同じで青いのに、透けていて、でも底が見えない。
同調してる海鳥が飛び上がったのか、どんどん海が離れていく。飛んだんだろうな。
海が見えなくなってしまうかと思ったのに、海鳥の目にはまだ、海が見える。
何処までも広がる海は遠くに見える線まで続いてた。
ポン、と音がして、僕の視界は突然狭くなった。
『時間切れだ』
パフィのかけてくれたまじないが切れたみたいで、僕は自分の部屋にいた。ずっと身体はここにあったんだけど、目にしたものは違うものだったから、変な感じ。
ほんの少しの時間だったけど、海が見れた。
ラズロさんが言った通り、海は想像よりも大きくて、空は天井が見えないぐらい高くて、広かった。
自分がちっぽけに見えるという気持ちが、ちょっとだけ分かった。
僕は目でしか感じられなかったけど、その場に行ったらもっと、色んなものを感じたんだろうな。
「ありがとう、パフィ」
『礼は要らん。これは私の為でもある』
パフィの為?
僕を見てにやり、とパフィが笑った。
『裏庭のダンジョンに海の層を作ると言ったろう。その為にもより本物に近い海をおまえに見せる必要があったのだ』
「……パフィって、魚介類、好きだったんだね」
『海のものも山のものも里のものも、どれも好きだがな、最近海産物を口にしていない事を思い出した』
パフィの言う最近は百年単位だから、確かに長い間食べてない。
「あの独特のにおいが、僕はちょっと苦手なんだよね」
『鮮度だ』
「鮮度?」
『野菜も採れたての方が美味いだろう。魚介も同じだ。
あぁ、楽しみだ!』
そう言ってパフィはベッドでごろん、と横になる。
これが混沌の魔女と同調してる使い魔、って言ってもみんな信じないだろうなぁ……。
『浅瀬で獲れるものと言ったら、まず、貝だな! 塩焼き、酒蒸し、バター焼き! アヒージョも捨てがたい!』
実は凄い好きなんじゃないかな、魚介類。
18
あなたにおすすめの小説
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる