前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

037-2

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 夕食を食べ終えて、お風呂にも入って、自分の部屋のベッドの上で海の絵を見ていた。
 青い海と青い空。
 明日、海とダンジョンが繋がる。なんだかちょっと、想像がつかない。

『おまえは海を見た事が無かったな』

 思い出したようにパフィが言った。

「うん」

『どれ、ちょっと見せてやろう』

 見せる?

 マグロのしっぽがぐるぐると回り、僕の目の前で何かがポン、と音をたてて弾けた。
 びっくりして目を閉じてしまった。目を開けると、目の前にはさっきとは違う景色が広がっていた。

「パフィ、これ……?」

『おまえの目と、海鳥の目を同調させた。少しの間しか出来ないからな、よく見ておけ』

 うみどり。

「どうして明るいの?」

『この国と違ってまだ昼間の場所を選んだからに決まっているだろう』

 まだ昼間の場所……?

 うみどり──海の側で生活する鳥のことかな──の目になっている僕の前には、右を見ても左を見ても変わらない景色が広がっている。
 村にあった公衆浴場よりも大きな水がある。こんなに沢山の水、溜めるのも大変そう。パフィみたいな魔女が注いだんだろうか?

 ラズロさんが言ってように、海は大きくて、何処までも続いてて、終わりが見えなかった。
 絵と同じで青いのに、透けていて、でも底が見えない。

 同調してる海鳥が飛び上がったのか、どんどん海が離れていく。飛んだんだろうな。
 海が見えなくなってしまうかと思ったのに、海鳥の目にはまだ、海が見える。
 何処までも広がる海は遠くに見える線まで続いてた。

 ポン、と音がして、僕の視界は突然狭くなった。

『時間切れだ』

 パフィのかけてくれたまじないが切れたみたいで、僕は自分の部屋にいた。ずっと身体はここにあったんだけど、目にしたものは違うものだったから、変な感じ。
 ほんの少しの時間だったけど、海が見れた。
 ラズロさんが言った通り、海は想像よりも大きくて、空は天井が見えないぐらい高くて、広かった。
 自分がちっぽけに見えるという気持ちが、ちょっとだけ分かった。
 僕は目でしか感じられなかったけど、その場に行ったらもっと、色んなものを感じたんだろうな。

「ありがとう、パフィ」

『礼は要らん。これは私の為でもある』

 パフィの為?

 僕を見てにやり、とパフィが笑った。

『裏庭のダンジョンに海の層を作ると言ったろう。その為にもより本物に近い海をおまえに見せる必要があったのだ』

「……パフィって、魚介類、好きだったんだね」

『海のものも山のものも里のものも、どれも好きだがな、最近海産物を口にしていない事を思い出した』

 パフィの言う最近は百年単位だから、確かに長い間食べてない。

「あの独特のにおいが、僕はちょっと苦手なんだよね」

『鮮度だ』

「鮮度?」

『野菜も採れたての方が美味いだろう。魚介も同じだ。
あぁ、楽しみだ!』

 そう言ってパフィはベッドでごろん、と横になる。
 これが混沌の魔女と同調してる使い魔、って言ってもみんな信じないだろうなぁ……。

『浅瀬で獲れるものと言ったら、まず、貝だな! 塩焼き、酒蒸し、バター焼き! アヒージョも捨てがたい!』

 実は凄い好きなんじゃないかな、魚介類。
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