前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

045-4

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 騎士団の人も魔法師団の人も、モンスター討伐などで野営に慣れているらしく、あっという間に準備を終わらせてしまった。
 焼べるようの枯れ木や枝なんかを拾って来て、焚き火を起こす。寝ずの番を順番にして、火を絶やさないようにする。
 馬は馬車から外されてはいるけど、暗い中で僕たちから離れるのが危険だと分かっているのか、近くで休んでいる。桶に水を張って近くに置いておいた。飲んでくれると良いな。

 僕はノエルさんたちが採って来てくれたキノコを選別して、食べられるもの、薬に使えそうなもの、どちらにも使えないものに選り分けていく。

「アシュリー、これは駄目なの? 本には食べられるって書いてあったけど」

 本を開いてノエルさんが聞いてきた。

「ノエルさんたちが見つけてきてくれたこれは、よく似てるんですけど、モドキかも知れないので、ちょっと分けて置いてます」

「モドキ?」

「暗くなると光ります。本物は光らないんで、もうすぐ分かります」

「……勉強になります」

 根っこのようなものがある。

「あ、それは、粉にして湯や水に溶かすととろみが出るんだそうだよ」

 魔法師団の人──マイロさんが教えてくれた。

「へぇー、とろみですか?」

 そうそう、と答えるとレンレン様の本を開いて見せてくれた。
 そこにはマイロさんの言う通り、根っこを粉にして湯に溶かすととろみが出て液体が冷えにくくなる。身体を温めるのに適したもの──と書いてあった。

 身体を温める。
 病気になってしまった人に良さそう。
 この本を見ていると、レンレン様の魔法薬学に対する思いがよく分かる。

 それにしても、とろみがついて冷めにくくなるんだったら、スープに入れると良いんじゃないかな?
 粉にするってことは、乾燥させなくちゃいけないから、今すぐには食べられなさそうだけど。粉にすれば軽いし、持ち運びにも適していそうだなぁ。

 それからつるつるとした肌触りの、道端でよく見かける葉っぱ。これ、食べられるんだ。
 粉にして咳がある時に飲んだり、目が痛い時にも飲んだりしてたけど。
 レンレン様の本にも、咳や熱冷まし、目の充血や痛み、浮腫(むく)み、と書いてあった。味は苦味がある。不味い、って書いてあってちょっと笑ってしまったけど。
 苦味があるのかぁ……。ノエルさんたちが採ってきてくれたキノコと一緒に炒めてみようかな。
 キノコはあまり日持ちしないから、すぐに食べてしまいたいし。

「どう? アシュリー、食材に使えそう?」

「はい。採ってきてもらったキノコとこの葉っぱを炒めます。それを薄く伸ばして焼いた生地で包んでみようかと」

 手伝うよ、と言われたのでキノコをさっと洗って、根の部分を切り落としたキノコを手で割いてもらう。
 その間に葉っぱをざっくりと刻んでおく。

「おーい」

 野営の準備が済んで、クリフさんともう一人の騎士が、見回りをしてくると言って出かけていたんだけど、思ったより早く帰って来た。

「これ、どうすれば良い?」

 そう言って見せるのはチネクだった。

「直ぐに血抜きをして、焼いて食べましょう」

「これは前に食べて美味かったからな、覚えていた」

 得意げにクリフさんが言う。

「血抜きの仕方を教えてくれ。アシュリーだけでなく、オレ達も出来るようになっていた方が、この先良いだろう」

 これからもダンジョンを閉じる旅は何度も行くことになるんだし、クリフさんに覚えてもらえたら色々と良さそう。
 それに討伐なんかでもこうして調理する方法を覚えたら、美味しいものが食べられるだろうし。

「まず、穴を掘ります。チネクはそんなに大きくないので、そんなに大きくなくても大丈夫ですけど、もっと大きい獲物の場合は、大きな穴が必要です。
それと、血の臭いを嗅ぎつけて狼なんかがやってくることもあるので、穴の場所は気をつけたほうが良いと思います」

 説明しながらチネクの血抜きをし、解体をしていく。
 野生の獣は病気を持ってる可能性もあるから、ちゃんと洗って、肉はあんまり厚めにはしないこと、食べる時は必ず火を通す必要がある。

 葉っぱとキノコを炒めて薄い生地で包んだものと、チネクのステーキをたっぷり食べられて、とっても満足な夕飯だった。
 さすがに七人で食べたから肉は余らなかったけど。フルールも肉が食べられて満足そう。
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