前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

文字の大きさ
193 / 271
第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

046-5

しおりを挟む
 アダの根を洗って、千切りにしたものを干しておく。
 乾いたらすり潰して粉にする。結構な量があるから、手でやるには多いし、風魔法で粗方細かくして、後は手ですり潰す感じかな。

「よぉし、出かけるぞー」

 ぐるぐると腕を回しているラズロさん。随分と機嫌が良いみたいだ。

「アシュリーが帰って来たからなー、心置きなく宵鍋に行けるぜー!」

 あぁ、そう言う事。

「風呂はな、魔女様が入れてくれたから問題なかったし、料理もナインが手伝ってくれていたんだがなぁ、夜食用意したりと色々やってるとなぁ、行き時を失っちまうんだよ」

「そうだったんですね、ごめんなさい」

 いやいや、と首を横に振って僕の頭をラズロさんが軽く撫でる。

「違う、感謝してんだよ。
もうすっかりアシュリーは城の一員だって皆で話してたんだぜ? それからあまりにアシュリーに頼りすぎだから、自分たちで出来る事はしないとな、って話になった」

 僕がしている事は食事と風呂ぐらいだけど、必要だと思ってもらえるのはやっぱり嬉しい。

「俺なんかアシュリーに洗濯もしてもらってるからな、本当困った。あぁ、俺も魔法使えるようになんねぇかなぁ。遅咲きのスキルとか言ってさ」

 戯けたようにラズロさんが言う。
 こんな風に言っても、器用なラズロさんは問題なくやれていただろうと思う。
 ラズロさんの優しさが、嬉しい。

「腹がいっぱいになっても美味いもんは美味いけどな、空腹の時に食ったら何倍も美味いだろ!」

 僕たちは目当ての屋台までやって来た。
 この屋台の串焼きの肉は、何度も食べたくなってしまう。独特のタレが肉によく染み込んでいて、脂身と肉が程よくて、口に入れるとじゅわりと肉汁が溢れる。

「よっ、お二人さん。今日は新メニューがあるぜー」

 屋台のおじさんに話かけられた。

「新メニュー? この白い奴か?」

 そうだ、さすがお目が高いねぇ、とおじさんが笑う。

「貝の身をいくつも串に刺して塩を振って焼いたもんだ。美味いから食ってってくれよ」

「美味そうだ! 二つくれ」

「あいよっ」

 貝の串焼きを受け取って、さっそく口に入れる。
 肉のように噛んでも肉汁のようなものは出ないけど、コリコリしてる。噛めば噛む程甘みと、塩味がして、美味しい。

「どうだい、美味いだろ」

 おじさんに声をかけられて、口に貝が入ってたので、頷いた。

「これは美味いな。飲みたくなっちまう」

「日が暮れたら行って来いよ」

 そうするわ、と答えて他の屋台に向かう。

「貝の串焼き、美味しかったですね」

「あれは美味いな。貝のまま焼くのもいいが、あれもまた美味い。ギルドに海が出来たからな、前より鮮魚が手に入りやすくなったとは聞いていたが、貝も良いもんだな」

「また食べたいです」

「おうよ。
さぁて、次は何を食」
「アシュリー! ただいまああああああ!!」

 突然横から突撃された。
 倒れそうになったのを慌ててラズロさんが支えてくれて助かった……。

「れ、レンレンさん……」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...