前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

048-2

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 日が暮れる前にラズロさんは大量の荷物を持って帰って来た。片付けを手伝おうと近付くと、ラズロさんが手に持てる量以上のものがある。

「何度も買い出しに行ったんですか?」

 それなら言ってくれれば一緒について行ったのにと思いながら言えば、いやいや、と首を横に振られた。

「ギルドに寄って冬支度の注文をしてから市場に寄ったらな、皆にアシュリーは元気なのかって聞かれたんだよ。忙しくはしてるけど、元気だし、たまに外に出てるぞと伝えたらな、あれも持ってけ、これも持ってけ、ってな。
あまりに渡されるから、城に届けてくれって言ったんだよ。そうすれば渡すのを諦めるかと思ってな」

 わざわざみんな、届けてくれたんだ。

「まぁ、アシュリーの事は噂になってんだろうし。気になってたんだろうよ」

 ラズロさんの言葉に頷きながら、荷物を手にして厨房に運ぶ。

「端肉は明日には城に届くからな。それと、熟れてないリンゴもな」

 そう言ってにやりと笑う。
 去年、失敗して熟れてないリンゴを沢山収穫したんじゃなかったかな。今年も失敗したのかな?

「欲を出し過ぎて実を間引かなかったらしくてな、甘くならなかったらしいぞ」

 甘さを出す為に、成った実を間引いて、間引かなかった実に甘さが行き渡るようにするらしいんだけど、その人はそれをやらなかったみたい。

「だから今年も甘くないリンゴが大量にあるぞ」

 木の実ひとつ育てるのも、大変なんだなって思う。
 時間もかかるし、木につく虫だっているだろうし、天気もあるし。

「安値とは言え、廃棄せずに済んだんだから、アシュリーに感謝すべきだな」

「さすがにそれはちょっと可哀想です」

 はは、とラズロさんは笑うと、手際よく荷物を棚や氷室に片付けていく。
 僕とラズロさんだと手に持てる量が全然違うから、僕ではどうしてもお手伝い程度になっちゃう。

 メルもリンゴは好きだったから、喜ぶだろうな。

「レンネットはギルドが持って来てくれるってよ」

「ほんとですか? 手に入ったんですね」

「ご機嫌取りだろうよ」

 ご機嫌取り?
 よく分かってない僕を見て、ラズロさんは苦笑いする。

「アシュリーにだぞ?」

「僕ですか?」

「当然だろ」

 ギルドの人は僕が人と違うスキルを持ってる事を知ってるし、ダンジョン蜂の蜜の事もあるから、そういうことなんだろうな。

「チーズって買ったことしかねぇけど、出来上がるのにどのぐらいかかんの?」

「うーん……水分の抜け方とかによっても違うんですけど、ひと月はしないぐらいで食べられます。
ものによってはもっともっと時間をかけて、半年とか寝かせるものもあるんです」

「気安く食ってたけど、チーズってなぁ、手間がかかってんだな」

 反省してじっくり味わうわ、としみじみと言うものだから笑ってしまう。

「ミルクとビネガーだけで作れるチーズもあるんですよ」

「おっ、ちょっと今日、ザックから分けてもらおうぜー。
絶対、出来上がりを要求されるけど」

「でも、渡したもので美味しいものを作ってくれますよ?」

 それなんだよ、と言ってラズロさんは頷くと、最後の荷物を片付けた。

 レンネットが手に入ったし、ミルクからヨウルトを作らないといけないな。
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