前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

文字の大きさ
223 / 271
第四章 魔女の国

054-2

しおりを挟む
 裏庭ダンジョンにある海に、僕とラズロさん、フルールとパフィでやってきた。
 フルールはごはんを食べに行ってしまった。作ってからフルールのごはん部屋には入ったことないけど、すごいことになってるんだろうなぁ…。広げるときも部屋の外からやったし。

 騎士団長やトキア様が使ってる椅子に僕たちも座る。立ったままの釣り、大変だもんね。
 釣竿の先に釣り針を付け、餌になるものを針に引っ掛けて海に向かって糸を垂らす。垂らすって言っても、針が海の深いとこに落ちるように投げるっていうか。

 ラズロさんは魚が釣れなくて悔しがることはあっても、機嫌が悪くなったりしない。

「釣りのどこらへんが好きなんですか?」

「んー? お子様なアシュリーくんには分からんだろうなぁ。大人にはな、こういう己と向き合う時間が必要なんだよ」

「己と向き合う?」

 トキア様や騎士団長が忙しいのに釣りをするのも同じ理由なんだろうか?

「大人になったら分かるから、それまで待ってろ」

「はーい」

 大人になったら分かるのかー。

「パフィも分かる?」

 膝の上で丸まっているパフィに話しかけると、片目だけ開けて、『いらん』と言われてしまった。
 
「魔女様には不要だろうよ」と言ってラズロさんは笑った。

 分かったような、分からないような気持ちになるけど、いつか分かるって言われたから、その時を待つことにする。
 おまえには一生分からないって言われたらちょっと傷付くけど、そうじゃないし。

 釣り竿を通して糸が引っ張られているような気がして、ちょっと竿を前後に動かしてみる。
 少し重さを感じる。もしかしてかかったのかな?
 引っ張ってみると、突然重さが消えて、釣り針にあった餌がなくなってた。

「食われたなー」

 ラズロさんが楽しそうに笑う。

「残念です。夕飯にしたかったのに」

「午後はまだ長いんだから焦るな焦るな」

「はーい」

 針にまた餌を付け、糸を垂らす。
 トキア様や騎士団長のようには釣れないだろうけど、釣れるといいなぁ。

 なんだかんだと、いつもやることがいっぱいで、こんな風にのんびりするの、久しぶりな気がする。
 ラズロさんを見ると、にやりと笑ってた。
 そっか。今日の釣りは僕の為でもあったんだ。
 パフィが薄目で僕を見て、ふん、と鼻で笑った。

「一座、早く観たいです」

「明後日、空いてるといいな」

「はい」

「そうそう、店では大抵、一人ずつ演じるだろ?」

「そうですね」

 元々が二人組じゃなければ、一人ずつ演奏したりする。エスナさんも一人だった。

「一人ずつ舞台でやるには舞台がでかいからな、何人かでやるんだそうだ」

「へーっ。同じ曲を演奏するんですよね、勿論」

「当然。で、演奏する奴、歌う奴、踊る奴に分かれて一つの曲を演じるんだそうだ。これは店では見れないからな、楽しみだ」

 ますます観たくなってくる。
 明後日、どうか観に行けますように!
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。

石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません 俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。 本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。 幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。 そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。 彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。 それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』 今度もまた年上ヒロインです。 セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。 カクヨムにも投稿中です

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...