前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第四章 魔女の国

054-2

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 裏庭ダンジョンにある海に、僕とラズロさん、フルールとパフィでやってきた。
 フルールはごはんを食べに行ってしまった。作ってからフルールのごはん部屋には入ったことないけど、すごいことになってるんだろうなぁ…。広げるときも部屋の外からやったし。

 騎士団長やトキア様が使ってる椅子に僕たちも座る。立ったままの釣り、大変だもんね。
 釣竿の先に釣り針を付け、餌になるものを針に引っ掛けて海に向かって糸を垂らす。垂らすって言っても、針が海の深いとこに落ちるように投げるっていうか。

 ラズロさんは魚が釣れなくて悔しがることはあっても、機嫌が悪くなったりしない。

「釣りのどこらへんが好きなんですか?」

「んー? お子様なアシュリーくんには分からんだろうなぁ。大人にはな、こういう己と向き合う時間が必要なんだよ」

「己と向き合う?」

 トキア様や騎士団長が忙しいのに釣りをするのも同じ理由なんだろうか?

「大人になったら分かるから、それまで待ってろ」

「はーい」

 大人になったら分かるのかー。

「パフィも分かる?」

 膝の上で丸まっているパフィに話しかけると、片目だけ開けて、『いらん』と言われてしまった。
 
「魔女様には不要だろうよ」と言ってラズロさんは笑った。

 分かったような、分からないような気持ちになるけど、いつか分かるって言われたから、その時を待つことにする。
 おまえには一生分からないって言われたらちょっと傷付くけど、そうじゃないし。

 釣り竿を通して糸が引っ張られているような気がして、ちょっと竿を前後に動かしてみる。
 少し重さを感じる。もしかしてかかったのかな?
 引っ張ってみると、突然重さが消えて、釣り針にあった餌がなくなってた。

「食われたなー」

 ラズロさんが楽しそうに笑う。

「残念です。夕飯にしたかったのに」

「午後はまだ長いんだから焦るな焦るな」

「はーい」

 針にまた餌を付け、糸を垂らす。
 トキア様や騎士団長のようには釣れないだろうけど、釣れるといいなぁ。

 なんだかんだと、いつもやることがいっぱいで、こんな風にのんびりするの、久しぶりな気がする。
 ラズロさんを見ると、にやりと笑ってた。
 そっか。今日の釣りは僕の為でもあったんだ。
 パフィが薄目で僕を見て、ふん、と鼻で笑った。

「一座、早く観たいです」

「明後日、空いてるといいな」

「はい」

「そうそう、店では大抵、一人ずつ演じるだろ?」

「そうですね」

 元々が二人組じゃなければ、一人ずつ演奏したりする。エスナさんも一人だった。

「一人ずつ舞台でやるには舞台がでかいからな、何人かでやるんだそうだ」

「へーっ。同じ曲を演奏するんですよね、勿論」

「当然。で、演奏する奴、歌う奴、踊る奴に分かれて一つの曲を演じるんだそうだ。これは店では見れないからな、楽しみだ」

 ますます観たくなってくる。
 明後日、どうか観に行けますように!
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