前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第四章 魔女の国

055-3

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 朝食の時間帯が過ぎて、僕は誰もいない風呂にやってきた。蒸気がこもらないように中から外に空気が抜けるようになってるんだって。
 最近になって初めて知ったんだけど、魔術師の人に頼んでそういう術符を最初から貼ってもらってたんだって。
 そんなこと、僕は全然思い付かなくって、黒くなったりしないなーって思ってた。

「アシュリー、持って来たぞー」

 ラズロさんが洗濯物が入ったカゴを持って来てくれた。
 冬はどうしても洗濯物が乾きにくい。前と違って厨房にいることが多いから洗濯物に風を送ることもできなくなってしまったし。
 そのことを相談したら、ノエルさんに風呂で乾かせばいいのにと言われた。それで術符のことを知った。

 金ダライに洗濯物を入れて、削っておいた石けんを入れる。水を注いでからフタをして隙間から風を送り込み、回転させる。
 厨房での仕事は色んなものが飛び跳ねるから、あちこちが汚れる。油もはねるし。
 洗い終えた洗濯物を絞るのはラズロさん。これならやれるって言って。
 僕だと何回も絞らないといけないから時間がかかったし、手が痛くなったんだけど、ラズロさんがやってくれるおかげで早い。
 部屋の端から端に紐をかけて洗濯物を吊るす。

「寮の食事を止めた分、洗濯にお金をあげることはできないんでしょうか」

 城で働く人たちは、あの大騒動の後も増えていない。人が減って、給料は少し上がったって聞いたけど。

「それはいいかも知れないな。オレたちの洗濯もやってもらえばいいんだよ。朝昼晩作ってて洗濯の時間作るの大変なんだし」

 よし! と言ってラズロさんは手を叩く。

「昼にアイツらが来たら相談しようぜ」



「いいよ」

 ラズロさんの提案に、ノエルさんは軽く頷いた。

「皆喜ぶだろうし、働き口が増えるし」

「ティール、洗濯物出す」

 気がついたらナインさんがティール様を呼び捨てしするようになってたんだけど、誰も止めない。
 ラズロさんに言ったら、アレは仕方がないって言ってた。ティール様は魔術師としての仕事以外はだらしがなくって、ナインさんが毎日お世話をしてるらしくって……。逆では……。

「まだキレイだと思うんですけどねぇ」

「汚い、駄目」

 ナインさんが母さんみたいになってる。

「それにしてもアシュリーの作ったチーズは美味しいですね」

 チーズのかかったジャガイモを美味しそうに頬張るティール様。前と違って顔色良くなったのはきっと、ノエルさんやラズロさん、ナインさんのお陰だね……。

「以前はポーション頼みだったんですが、近頃は規則正しい生活のおかげで身体も頭も軽くなった気がします」

「それが当たり前なんだよ……」

 皆が呆れた顔をして見ると、ティール様はいやぁ……と照れたように頭をかいた。

「褒めてないからね」

「ティール、自堕落すぎる」

 ティール様の凄いところは、こんなに皆に言われても平気なところだと思う。

「このチーズに蜂蜜をかけて食べたら美味しそうですねぇ。夜食に食べたいです」

「おまえ、人の話を聞いてたか?」

 ラズロさんがティール様を注意すると、ノエルさんが真剣な顔で待って、と言った。

「それ……間違いなく美味しいんじゃない?」

 驚いたことにノエルさんが賛成した。

「どうしても夜遅くまで仕事をしなくちゃならない時に、チーズとハチミツがかかったパンとかあったら、僕は朝まで頑張れそう」

「諦めて帰れ」

 その案はあっさりと許可された。
 パンは僕とラズロさんが焼いて、チーズと蜂蜜を魔法師団と魔術師団の人たちに渡すことになった。
 パンにチーズをのせ、魔法でチーズをとかす、というのが魔法の微調整の訓練にいい、とトキア様が言ったらしく。
 ノエルさんはこれまでにない集中力で、チーズだけをとかしているみたい。失敗もしたみたいだけど。
 魔術師の人たちは新しい術符を作った。パンの上にチーズをのせたものに、上から熱を加えるというもの。
 ラズロさんが「どんな訓練よりも皆の集中力が上がってるらしいぞ、失敗すると食いっぱぐれるから」と呆れた顔で言ってた。

 ジャッロたちの蜂蜜は、売れば確かに高値がつくんだけど、こうして皆で食べるほうが僕としては嬉しいから、こういうのもいいんじゃないかなって思う。
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