前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第四章 魔女の国

056-3

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 図書室の管理をしている司書の人はいつも僕を助けてくれる。読めるようにはなってきたけど、まだまだ知らないことばかりだし、どんな本があるのかも分からないから。僕にちょうどよい本をいつも教えてくれる親切な人だ。
 色んなことを知りたいけど、料理の本が一番読んでみたかった。分からない言葉は司書の人やラズロさん、ノエルさんたち皆で教えてくれた。
 司書さんにお礼がしたくて、好きな料理はなんですかと聞いたら、このエビの料理が食べてみたいんだよ、と少し恥ずかしそうに話してくれた。

 料理の本を汚してしまわないように紙に写して、ラズロさんにお願いしてギルドでエビを買ってきてもらった。
 エビの殻を剥く。ずっと剥いてるんだけど終わりが見えない。でも司書さんを喜ばせたいから、皮を剥く。
 はじめはおしゃべりをしていたラズロさんも、あまりにエビが減らないから無言になってしまった。

 「これは絶対美味くなる奴、これは絶対美味くなる奴」

 ラズロさんがブツブツ呟きながら殻を剥いてる……! どうしよう、僕が作ってみたいなんて言ったから……。これで美味しくなかったら謝ろう……。

「あの、ラズロさん、僕がやるので……」

 僕のわがままで作ろうとしてるんだから、ラズロさんに最後まで助けてもらうわけには……。

「作業?」

 ナインさんが厨房を覗きこんで言った。

「下拵えだ」

 僕がダンジョンを閉じるのに城から出ていた時、ラズロさんとナインさんで料理をしてくれていた。

「そこの線を越えたらおまえ、分かってるな?」

 わけの分からない質問をしだしたラズロさん。そこまでエビの皮剥きがつらかったんだ……。
 ラズロさんの注意? を無視してナインさんは厨房に入ってきた。

「エビ、たくさん。皮剥き?」

「厨房に入ったからにはおまえは臨時の調理人だ。いますぐ手を洗って配置につけ!」

「ラズロさん!?」

「やる!」

 やるの?!

 ナインさんは手を洗うと僕たちがやっているのを見よう見まねでエビの皮を剥いていく。

「これ、楽しい」

「そりゃ良かった。数分後にも同じことが言えるといいな」

 うんざりした顔でラズロさんが言う。

「ごめんね、ナインさん。あとでラズロさんにプディング作ってもらおうね」

「え、オレが作るの?」

「強引にナインさんに手伝わせてるんだから、ラズロさんが作らないと」

 勿論僕も作るのを手伝います。
 笑顔で皮剥きしてるから、強引ではないかもしれないけど。

 剥かれた皮はフルールがせっせと食べてる。食べても食べても皮をもらえるから嬉しいみたいで、耳がぴょこぴょこ揺れてる。



 ひたすら皮を剥いて、全部剥き終えたあとにはしっぽを切り落として、背わたをとる。
 しっぽを切るのは僕。背わたって氷水に入れるのはラズロさん。ナインさんはもう少しやりたいと言って、背わたを取ったエビに粉をまぶしてる。

「魔術師止めて、調理人なりたい」

「魔術師団の面子が泣くから諦めろ」

 ティール様の代わりにナインさんが色んなことをしているんだって。頭がいいとノエルさんが言っていたけど、本当にナインさんは頭がいい。
 そんな状態だから、ナインさんがいなくなったからといってティール様がお勤めを果たしてくれるわけでもないらしくって。ティール様は魔術師としてはすごい人なんだけどね……。

「早くティール、追い越したい」

「おーおー、それはいいこった」

 幼馴染みに容赦のないラズロさんだけど、誰よりも心配してるんだよね、ティール様のこと。
 人の上に立つより、研究のほうが向いてるティール様。でもそんなことできないから、こうして魔術師の長をしてる。
 きっとノエルさんもそう。本当は人の上に立ちたいって思いはないんじゃないかな。でもノエルさんは優しいから、誰かのために魔法師団の副長をしてるんだと思う。

「ティールの世話、やだ」

 身もふたもないナインさんの言葉に、さすがのラズロさんも苦笑した。
 子供に世話をされるティール様。うん、これは言われてもしかたないかも。

「ティールとても優秀。魔力量はクロウリーがずっと上。でも、魔術師の能力、ティールが上」

「そうか」

 ラズロさんはナインさんのその言葉に、とても優しく笑った。自分が褒められたんじゃないのに嬉しそうで、ティール様のこと、本当に大切に思ってるんだって分かる。

「でも追い越す。追い越して、キリキリ働かせる」

「……ほどほどにな」
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