9 / 76
第一章
第九話 才能の有無は経験しないと分からない
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
スマホで時間を確認したところ、開演から一時間が経っていた。
自警団リーダーと自警団モブが二人。
大型店舗リーダーと大型店舗モブが四人。
この八人にまで数が減ってからは戦力が拮抗したらしく、八人になってから既に十五分ぐらいは経過しているはずだ。
持ってきた乾物も全部食べ終えたし、いい加減飽きてきたな……。
「疲弊具合も良い感じだし、そろそろ終わらせよう」
観戦中に近付いてきていたオオカミ系モンスターを処理した際に、近くの家の玄関で拾ったヒーロー物のお面を装着する。
安物なのも理由だろうが、子供用なので単純にサイズがキツい。
大型店舗内にいる者達から正体を隠せればいいので、外れさえしなければ問題はない。
大型店舗内で不安気に戦いを見守る者達も倒せば身バレを気にすることはないが、超人化も進んでない者を積極的に倒すような悪人ではないのだ。
「やあやあ、ご機嫌は如何かな? ここからは私も参加させてもらうよ」
右手に剣鉈、左手に近くに落ちていた車の扉を装備して舞台へと上がる。
登場の仕方は悩んだが、ヒーロー物のお面を付けているので正々堂々の声を掛けてから登場することにした。
登場早々に大型店舗リーダーから「イカれ野郎は去れ!」と言われたので、まずは彼から退治するとしよう。
「まずはキミに決めた!」
扉の盾を前に大型店舗リーダーへと向かって突進する。
すかさず大型店舗リーダーが手から電撃を放ってきたので、こちらも即座に扉の盾から手を離して前方へと思いっきり蹴り飛ばした。
吹き飛んでいく扉の盾が電撃を受け止めている間に、一気に速度を上げて駆け抜ける。
道中、油断している自警団リーダーに向かって、フリーになった左手で胸ポケットから引き抜いたゴブリンナイフを四本投擲した。
完全に油断していた自警団リーダーの顔面付近に全弾命中したのを横目に見ながら、電撃と扉の盾を左に迂回し、道中にいる大型店舗モブ達の首を剣鉈で斬り裂いていく。
「油断は禁物というやつです」
四人目のモブの首を裂いたタイミングで、此方の接近に気付いた大型店舗リーダーが再度電撃を放ってきた。
「ナントカの一つ覚えですね」
発動兆候が見えた瞬間に、斬り裂いたばかりの四人目のモブを前に蹴り出して避雷針にする。
眩く発光するモブの陰から剣鉈をリーダーに向かって投擲すると、剣鉈の後を追いかけるように前方にジャンプし、渾身の蹴りをかました。
剣鉈が肩に突き刺さって反射的に痛みに呻くリーダーの頭部に跳び蹴りが炸裂する。
ヒーロー物のお面を被っているおかげもあり、跳び蹴りを受け止めた大型店舗リーダーの頭部が風船のように破裂した。
「いやー、汚い花火ですねー。そう思いませんか?」
残る自警団モブ二人にそう話しかけると、二人は悲鳴を上げながら逃げていく。
足元の剣鉈を引き抜き、落ちていた扉の盾を拾い上げると逃げる二人に向かって投擲した。
勢いよく縦回転する扉の盾が一人を左右に両断し、剣鉈がもう一人の頭部に突き刺さった。
「おや、まだ生きていたのですね」
逃走者の始末を終えて舞台を見渡すと、一人だけピクピクと動いている者がいた。
自警団リーダーに近づくと、擦れた声で久しぶりに聞く俺の名前を告げてきた。
「おや? 私を知っているのですか?」
聞くところによると会社の同僚らしい。
言われてみれば同僚にこんな感じの人がいた気がする。
元々人の名前と顔を覚えるのが凄く苦手なのに、こんな世界になって激動の体験の連続だったせいで忘れてしまっていた。
「そうでしたか。色々聞きたいことはありますが、私は生き延びるためにアナタの力が欲しいのです。申し訳ありませんが私の平穏な生活の糧になってくださいね」
これ以上の問答は必要ないので、指先を刃に変えて元同僚らしき男の首を切断した。
大型店舗内の者達からは死角になっているので、以前会った俺だと分かることはないだろう。
初めて同族を相手に戦闘を行なったが、これまでも数々のモンスターを殺してきたからか、今更そこに超人が増えたところで特に思うことはなかった。
その後は武器の類いや使えそうな物資を死体から回収していく。
回収作業の間も大型店舗から人が出てくることはなかった。
せっかくなので店舗内を少し物色し、買い物カゴに商品を入れてからテイクアウトした。
店内にいた者達は怯えて勝手に離れてくれるのでスムーズに物資を調達できた。
自警団が使っていた荷車に武器や物資を満載したカゴを複数個載せると、片手で荷車を引いて舞台を後にした。
46
あなたにおすすめの小説
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す
名無し
ファンタジー
ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。
しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります>
「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。
死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。
レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。
絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、
「え?、何だ⋯⋯これ?」
これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる